2022年度倫理学I(ビジネス倫理学)
授業では、まず身近な事例を通して、ビジネス倫理学とは何かについて学びます。次に、企業が倫理的問題(にどのように取り組んでいるかを見てゆきます。そのうえで、ビジネス倫理学の理論(功利主義、義務論、徳倫理学)を学びます。最後に、学んだ理論を応用して、ビジネス倫理学の問題を考えてゆきます。
秋学期の授業(倫理学II「ビジネス倫理学」)を履修すると理解が深まると思います。
全体の到達目標
倫理・道徳を通して、価値観の異なる他者と協働することができる能力を身につける。
現代ビジネスが直面する倫理的課題を探求し、自らができる事業や社会貢献への可能性を考える。
ビジネス倫理学の歴史を通して、ビジネスパーソンとしての良識を学ぶ。
1.イントロダクション:ビジネス倫理学とは何か
到達目標
倫理学とは何かをある程度説明できる。
ビジネス倫理学の歴史を説明できる。
宿題:日本の企業と海外の企業それぞれ10社挙げなさい。
2.身近な事例1:お客様は神様か
到達目標
保護から自立支援へ消費者の権利の捉え方が変化してきたことを説明できる。
悪質なクレームに関して何が論点かを説明できる。
宿題:消費者庁が近年普及、啓発活動を行っている「エシカル消費」とは何か?
3.身近な事例2:ブラックバイトで働いていないか
到達目標
自身や友人が取り巻く現状を距離を取って見つめ直すことができる。
ブラックバイト問題を通してブラック企業の問題について説明することができる。
宿題
4.身近な事例3:広告の炎上
到達目標
様々な広告を挙げ、その役割について考えることができる。
広告の倫理的問題を挙げることができる。
ネット炎上を過度に恐れず、冷静に考えることができる。
参考:お詫びCM
参考:Yahoo! JAPANサイト上のネット広告(リンク)
参考:テレビCM(アイスクリーム、チョコレート、ビール、タバコ)
参考:炎上したCM
宿題:自分の身の回りで広告を探してみよう。そこに倫理的問題は潜んでいないだろうか。4つの視点から考えてみよう。
5.企業の取り組み1:CSR(企業の社会的責任)
到達目標
CSRとは何かを具体例と日本の特徴を挙げることができる。
フリードマンのCSR批判に応答することができる。
中小企業や宇宙ビジネスのCSR事例を説明することができる。
参考:企業のCSR動画
参考:宇宙ビジネスのCSRインタビュー(『宇宙倫理学』杉本担当分)
宿題:自分の気になる企業のCSR活動を調べなさい。
6.企業の取り組み2:ハラスメント対策
到達目標
セクハラをめぐる議論の論点を挙げることができる。
マタハラとは何かを説明できる。
パワハラについて自分事として考えることができる。
参考:「就活学生、セクハラから守れ 売り手市場でも絶えぬ被害 」、『朝日新聞』、2018年3月19日朝刊、26頁。
参考:ANN「「妊娠してすみません・・・」マタハラの実態(15/03/22)」(リンク)
参考:事例で学ぶパワー・ハラスメント】部下への仕事の割り振り
宿題
動画で学ぶハラスメントから、自分の関心がある動画を1つ視聴しなさい。
7.企業の取り組み3:環境問題への取り組み
到達目標
環境問題の例を挙げることができる。
環境問題に対する企業の取り組みを挙げることができる。
環境問題に関するビジネス倫理学での議論を説明できる。
参考:地球温暖化懐疑論批判
宿題
授業で取り上げた企業以外の企業が環境問題に対してどのように取り組んでいるかを調べなさい。
8.フィードバックとレポート課題
到達目標
これまで学んだ内容を確認し、関連したテーマについて具体例や重要なポイントを挙げながら説明できる。
それについてレポートを作成することができる。
なぜ剽窃がいけないのかを説明でき、剽窃のないレポートを作成することができる。
参考:「剽窃について」アカデミック・スキルズ ©慶應義塾大学教養研究センター (リンク)
レポート課題
消費者運動とは何か。
ダイバーシティとは何か。
排出量取引とは何か。
上記の三つの問いの中から一つだけ取り上げて、以下の点すべてを説明したうえで答えなさい。
具体的事例を挙げながら説明しなさい。
重要なポイントを2点挙げて説明しなさい。その際に、なぜその2つが重要であるかについて説明しなさい。
どのような文献を調べたのかなど、レポート執筆のプロセスも説明しなさい。
仮提出したものを相互に読んでコメントし合い(ピアレビュー)、それを受けてブラッシュアップしたものを本提出してもらいます。
9.理論1:人の命は経済的価値で測れないのか(功利主義)
到達目標
功利主義とは何かを説明できる。
ビジネスの倫理的問題について功利主義的観点から考察することができる。
功利主義の課題を挙げることができる。
参考:マイケル・サンデルのハーバード白熱教室、第2回命に値段をつけられるのか
参考:杉本俊介「フォード・ピント事例と功利主義」、中谷常二(編)『ビジネス倫理学読本』、晃洋書房、2012年4月30日、第六章、124-142頁。
宿題:ビジネスで道徳的に不正だと思う(そう評価された)企業活動を挙げなさい。功利計算をして、功利主義的な観点から、実際にそう評価されるか確認しなさい。たとえば、談合、食品偽装、不法投棄。
10.理論2:周りの人間を手段としてのみ使ってはいけないのか(義務論)
到達目標
カントの倫理学の中心となる定言命法という考え方を説明できる。
ビジネスの倫理的問題について義務論的観点から考察することができる。
義務論が功利主義とはどう違うかを説明できる。
参考:100分de名著 カント“永遠平和のために” 第1回
参考:ちはやふる
参考:ノーマン・ボウイ『利益につながるビジネス倫理』の抜粋
参考:Kant on Business Ethics - Norman E. Bowie(リンク)
参考:「伊那食品工業の年輪経営」ダイジェスト版
宿題:人間性を尊重する会社を探しなさい。
11.理論3:徳のある経営者とはどういう経営者か(徳倫理学)
到達目標
徳倫理学を、それが登場した背景を含めて、説明できる。
徳倫理学から何が言えるかについて考えることができる。
徳倫理学が功利主義や義務論とはどう違うかを説明できる。
配布資料:Robert Solomon, Ethics & Excellence, Oxford University Press, 1993の一部。
配布資料:杉本俊介「組織の徳倫理学──組織不祥事を評価する枠組みの提案」、日本経営倫理学会『日本経営倫理学会誌』第29号、2022年、253-265頁(ただし初校)
参考:規範倫理学入門
宿題:植松努「思うは招く」TEDxSapporoを視聴して、どういう徳が示されているかを考えなさい。(リンク)
12.応用1:内部告発について考えてみる
到達目標
内部告発とは何かを説明することができる。
内部告発をめぐる議論の論点を挙げることができる。
倫理学理論(功利主義、義務論、徳倫理学)から内部告発について考察することができる。
宿題:最近あった内部告発の事例を挙げなさい。
13.応用2:組織不祥事について考えてみる
到達目標
組織不祥事の事例を挙げることができる。
企業の道徳的行為者性とは何かを説明することができる。
倫理学理論から組織不祥事について考察することができる。
宿題:最近あった企業不祥事の事例を挙げ、組織それ自体の責任が問われるものかを考えなさい。
14.フィードバックと授業内試験
到達目標
これまで掲げた到達目標を振り返り、達成できていない目標を達成することができる。
各回で学んできたことを関連づけ、講義内容を包括的に理解することができる。
授業内試験
その他 まとめ