2014年度後期立命館大学(倫理学特殊講義 (LB) 倫理学特殊講義Ⅱ (L) )
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この授業では、倫理学のなかの代表的な問題のひとつ、'Why Be Moral?'(なぜ道徳的であるべきか)問題を学びます。私たちの多くは道徳的であるべきだと思って日々過ごしているでしょう(もちろん、そうでない人もいると思います)。しかし、本当に私たちは道徳的であるべきなのでしょうか。倫理・道徳の大前提をあえて疑ってみます。
この授業では、'Why Be Moral?'問題をトマス・ホッブズとイマヌエル・カントという二人の哲学者の思想を中心に理解します。彼らのように、何でも根拠を問い、筋を通して議論するスキルを身につけることを目標にします。
授業計画
1.イントロダクション 配布資料
文献:伊勢田哲治『動物からの倫理学入門』第四章「倫理なんてしょせん作りごとなのか」
キーワード:「である」と「べき」の区別、利己主義と利他主義
2.プラトンと「ギュゲスの指輪」伝説(透明人間になれたら道徳なんて気にしない?) 配布資料
文献:プラトン『国家』
キーワード:正義、魂の三区分説
3.ホッブズの道徳哲学、その1(神様のいない世界に道徳なんて存在するのか?)配布資料
文献:トマス・ホッブズ『リヴァイアサン』
キーワード:自然法、主知主義と主意主義
4.ホッブズの道徳哲学、その2(万人の万人に対する戦争から道徳は生じる!?) 配布資料
文献:トマス・ホッブズ『リヴァイアサン』
キーワード:万人の万人に対する戦争、愚か者
5.ホッブズに対する反響(人間は生まれつき利己的?それとも利他的?) 配布資料
文献:バーナード・デ・マンデヴィル『蜂の寓話』、フランシス・ハチスン『美と徳の観念の起源』
キーワード:私悪すなわち公益、仁愛
6.カントの道徳哲学、その1(カントの道徳哲学) 配布資料
文献:カント『道徳形而上学の基礎づけ』・『実践理性批判』
キーワード:善意志、理性的存在者、定言命法、意志の自律
7.カントの道徳哲学、その2(カントにとっての'Why Be Moral?'問題) 配布資料
文献:カント『道徳形而上学の基礎づけ』・『実践理性批判』
キーワード:理性の事実、超越論的演繹
8.カントに対する反響(道徳は定言的?それとも仮言的?) 配布資料
テキスト:フィリッパ・フット「仮言命法の体系としての道徳」
キーワード:正義、エチケットと道徳のちがい、トロリー問題
9.ここまでの論点に関するディスカッション 配布資料 ←レポート課題
10.ホッブズ主義、その1(ゲーム理論という経済学の道具を使う!?) 配布資料
文献:デイヴィッド・ゴティエ『合意による道徳』
キーワード:囚人のジレンマ、制約された最大化
11.ホッブズ主義、その2(コンピュータ・シミュレーションを使う!?) 配布資料(授業で見た"Divide The Cake"(NetLogo))
文献:ピーター・ダニエルソン『人工的な道徳』、ブライアン・スカームズ『スタグハントと社会構造の進化』
キーワード:互恵的協力、「スタグハント」(鹿狩り)ゲーム
12.カント主義、その1(自分で自分の法を立てる) 配布資料
文献:クリスティーン・コースガード『義務とアイデンティティの倫理学:規範性の源泉』
キーワード:実践的アイデンティティ
13.カント主義、その2(「責められるに値するのに責められる理由がない」という主張はヘン?) 配布資料
文献:スティーヴン・ダーウォル『二人称的観点』
キーワード:ムーアのパラドクス、二人称的理由
14.第三の道(ホッブズ主義もカント主義も根本的にまちがっている!?) 配布資料
文献:シンガー『実践の倫理』、ウィリアムズ『生き方について哲学は何が言えるか』
キーワード:人生の意味
15.ここまでの論点に関するディスカッションと総論 配布資料
定期試験(筆記)End of Semester Examination (Written) 60 %
受講生の到達目標(1)(2)に対応して、基本概念や語句の理解を前提に、倫理学的に考える力を試す問題を出します。
上記以外の試験・レポート、平常点評価(日常的な授業における取組状況の評価)Exams and/or Reports other than those stated above, and Continuous Assessment (Evaluation of Everyday Performance in Class) 40 %
受講生の到達目標(3)に対応して、授業中にレポート課題を出します。自分で何でも根拠を問い、筋を通して考えるスキルを身につけているかを評価します。