『ビジネスにおける道徳』とはなにか:ビジネス倫理学入門(京都大学,2011年度)

『ビジネスにおける道徳』とはなにか:ビジネス倫理学入門

哲学基礎文化学系ゼミナール I

ポスター(pdf)

第1回、内部告発の倫理:不正なことを不正だと言うのは本当に正しいのか?

第2回、広告の倫理:虚偽・誇大広告だけが問題なのか?

第3回、企業の道徳的行為者性:責任を引き受けることが果たして企業にできるのか?

オリエンテーションでの講義紹介(2011年4月14日)

ビジネス倫理学のなかで議論されてきた3つのトピックを取り上げ、皆さんと考えてゆきたい。まず、内部告発の倫理を問題にしたい。私たちはふだん不正なことをした人に対して「あなたは間違っている」と言って非難することがある。ここにおかしなところは見当たらない。しかし、会社のなかで同じ道理が通じるとはかぎらない。あなたは組織のなかのひとりであり、あなたが「間違っている」と言ってしまうことはその組織に対する裏切りになりかねないからである。内部告発の微妙な問題について検討する。次に、広告の倫理を考えたい。広告が道徳的に問題にされるとき、広告内容の虚偽や誇大表現が問題にされることが多い。たとえば、確かな裏付けがないまま「当社だけ」と書かれている広告がそうである。では、事実を正確に伝える広告ならば問題はないのだろうか。「怪しい水売ります!」という広告はどうか。計画性のない人に向けて「ご利用は計画的に」と勧めることはどうか。最後に、昨今問われる企業の社会的責任(corporate social responsibility, CSR)をもう少し哲学的に考えてゆきたい。企業の道徳的行為者性(corporate moral agency)と呼ばれ、主にアメリカのビジネス倫理学のなかで議論されてきたトピックを取り上げる。倫理学では責任を引き受けることができるのは人間のような道徳的な行為者だとされてきた。しかし、企業は法人と呼ばれるものの生身の人間ではない。本当に責任を引き受けられるのだろうか。そのために企業には何が求められるのか。