2022年度倫理学II(現代社会の倫理的問題)

授業では、現代社会における情報技術、ビジネス、医療など具体的な事例を通して、倫理・道徳を学びます。「倫理学」の理論を様々な事例に応用して倫理・道徳について考えてゆく学問を「応用倫理学」 と呼びます。授業では、とくに、情報倫理・ビジネス倫理・生命倫理などについて議論してゆきます。

到達目標として次の三点を挙げます。

  1. 倫理・道徳を通して、価値観の異なる他者と寄り添うことができる能力を身につける。

  2. 現代社会が直面する倫理的課題を探求し、自らができる社会貢献への可能性を考える。

  3. 倫理学の歴史を通して、市民としての良識を学ぶ。

1 イントロダクション:応用倫理学とは何か

  • 到達目標

    • 授業の概要、到達目標、評価方法、注意事項について説明することができる。

    • 倫理学とは何かをある程度説明できる。

    • 応用倫理学の二つの側面を区別できる。

  • 授業資料

  • 宿題科学研究費助成事業データベース を使って学際的研究を探してみよう。あなただったら、どんな学際的研究にどんな立場から参加してみたいか。

2 情報倫理1:プライバシー

  • 到達目標

    • プライバシー概念の変遷を説明することができる。

    • 個人情報保護法の背景を説明することができる。

    • ビッグデータ時代のプライバシー問題の例を挙げることができる。

  • 授業資料

  • 参考:「個人情報「乱用」に警鐘、リクナビ問題、37社に行政指導、保護委、異例の社名公表」、『日本経済新聞』朝刊、2019年12月5日、15頁。

  • 宿題自分の名前を検索してみなさい。また自分の使っているSNS(Twitter、LINE, Instagram, TikTokなど)でトラブルや炎上した事例を見つけなさい。

3 情報倫理2:知的財産権

  • 到達目標

    • 知的財産権の基本的枠組みを説明することができる。

    • 知的財産権に倫理的な観点から正当性を与えることができる

    • 知的財産権を守る取り組みと課題の例を挙げることができる。

  • 授業資料

  • 宿題学校法人慶應義塾が登録している意匠と商標を特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp)で調べなさい。

4 情報倫理3:インフォデミック

  • 到達目標

    • インフォデミックの事例を挙げることができる。

    • エコーチェンバーとフィルターバブルを説明することができる。

    • インフォデミックへの対抗策を挙げることができる。

  • 授業資料

  • 参考:Cognitive Bias Codex

  • 参考:EchoDemo(リンク

  • 参考:慶應塾生新聞:フェイクニュースと向き合う (リンク

  • 宿題次の話がデマかどうかを確かめなさい。

    • その昔、ヨーロッパでは3/25日を新年とし、4月1日まで春の祭りを開催していたが1564年にフランスのシャルル九世が1月1日を新年とする暦を採用した。 これに反発した人々が4月1日を「嘘の新年」とし、馬鹿騒ぎをはじめた。 しかし、シャルル九世はこの事態に対して非常に憤慨し、町で「嘘の新年」を祝っていた人々を逮捕し、片っ端から処刑してしまう。 処刑された人々の中には、まだ13歳だった少女までもが含まれていた。 フランスの人々はこの事件に非常にショックを受け、フランス王への抗議と、この事件を忘れない為に、その後も毎年4月1日になると盛大に「嘘の新年」を祝うようになっていった。これがエイプリルフールの始まりである。 そして13歳という若さで処刑された少女への哀悼の意を表して、1564年から13年ごとに「嘘の嘘の新年」を祝い、その日を一日中全く嘘をついてはいけない日とするという風習も生まれた。

5 ビジネス倫理1:CSR(企業の社会的責任)

  • 到達目標

    • CSRとは何かを具体例と日本の特徴を挙げることができる。

    • フリードマンのCSR批判に応答することができる。

    • 中小企業や宇宙ビジネスのCSR事例を説明することができる。

  • 授業資料

  • 参考:企業のCSR動画

  • 参考:ライブドアvsフジテレビ (リンク

  • 参考:企業CM

  • 参考:宇宙ビジネスのCSRインタビュー(『宇宙倫理学』杉本担当分)

  • 宿題自分の気になる企業のCSR活動を調べなさい。

6 ビジネス倫理2:営業の倫理

  • 到達目標

    • 嘘と欺瞞を区別することができる。

    • 嘘がいけない理由を規範倫理学から説明することができる。

    • カーの議論を通して、ビジネスとは何かを自分なりに考えることができる。

  • 授業資料

  • 参考:プロの挑発をものともせずブラフでサラッと制覇w| PokerStars.jp (リンク

  • 宿題企業を法人という権利や責任の主体として考えるとき、企業と人間とのアナロジーが使われている。では、企業と人間が似ていない点は何だろうか。

7 ビジネス倫理3:感染症に対する企業責任

  • 到達目標

    • パンデミック下での企業の取り組みを挙げることができる。

    • 医療従事者の危険手当や医薬品特許の問題を説明することができる。

    • 感染者名の社内公表をめぐる議論を説明することができる。

  • 授業資料

  • 参考:テレ東BIZ「シャープ製マスク 21日販売開始」(2020/04/20)(リンク

  • 参考:テレ東BIZ「ドイツ政府 ワクチン特許除外に反対(2021年5月7日)」(リンク

  • 参考:【第1回】児玉聡准教授「パンデミックの倫理学」(7月5日11:00-) 倫理学 (リンク

  • 宿題新型コロナウイルス感染症パンデミックにおいて、他にどんな問題がこの社会に生じているか。

8 フィードバックとレポート課題

  • 到達目標

    • これまで学んだ内容を確認し、関連したテーマについて具体例や重要なポイントを挙げながら説明できる。

    • それについてレポートを作成することができる。

    • なぜ剽窃がいけないのかを説明でき、剽窃のないレポートを作成することができる。

  • 授業資料

  • 参考:「剽窃について」 アカデミック・スキルズ ©慶應義塾大学教養研究センター(リンク

  • レポート課題

      • ビッグデータとは何か。

      • ISOとは何か。

      • 商標とは何か。

    •  上記の三つの問いの中から一つだけ取り上げて、以下の点すべてを説明したうえで答えなさい。

      • 具体的事例を挙げながら説明しなさい。

      • 重要なポイントを2点挙げて説明しなさい。そのさい、なぜその2つが重要であるかについて説明しなさい。

      • どのような文献を調べたのかなど、レポート執筆のプロセスも説明しなさい。

    • 仮提出したものを相互に読んでコメントし合い(ピアレビュー)、それを受けてブラッシュアップしたものを本提出してもらいます。

9 生命倫理1:クローンとiPS細胞

  • 到達目標

    • クローンとは何かを誤解なく説明できる。

    • iPS細胞が高く評価されている理由を説明できる。

    • 生命倫理学の意義を挙げることができる。

  • 授業資料

  • 参考:CinemaGene「『エリザベス 神なき遺伝子』本編映像」(リンク

  • 参考:「(いちからわかる!)サルの「クローン」、体細胞から生まれたね」、『朝日新聞』、2018年2月14日、朝刊、2頁。

  • 宿題クローンや脳オルガノイドの問題以外にどのような倫理的問題が医療現場で生じるか考えなさい。

10 生命倫理2:脳死者からの臓器移植

  • 到達目標

    • 脳死者からの臓器移植とは何か説明できる。

    • 脳死をめぐる議論の論点を挙げることができる。

    • 臓器移植法の改正のなかで懸念されていることを説明できる。

  • 授業資料

  • 参考:日本臓器移植ネットワーク「日本の移植事情 解説映像」(リンク

  • 参考:臓器移植法改正案(衆院本会議)報道

  • 参考:「人体の医療利用に警鐘 <変わる生の形・脳死の倫理>」、『京都新聞』、2018年01月18日。

  • 宿題最近行われた脳死者からの臓器移植のニュースを新聞、テレビ、インターネットのなかから探しなさい。

11 パンデミックの倫理(12と逆)

  • 到達目標

    • パンデミック対策の倫理方針を挙げることができる。

    • 医療資源分配の問題について論点を挙げることができる。

    • 日本の公衆衛生上の介入に対する評価することができる。

  • 授業資料

  • 宿題今回は、新型コロナウイルス感染症対策をめぐる倫理的な問題として、医療資源分配の問題と公衆衛生上の介入に伴う問題の2つを取り上げた。それ以外に現在議論されている倫理的な問題を挙げなさい。例.感染の恐れがあっても医療従事者には患者の治療にあたる義務があるか

12 動物倫理(11と逆)

  • 到達目標

    • 動物に関する倫理的問題を挙げることができる。

    • コンパニオンアニマルや動物福祉や3つのRを説明できる。

    • 自身の動物に対する接し方を振り返ることができる。

  • 授業資料

  • 宿題次の施設では動物に対してどのような配慮がなされているかを調べなさい。

      • ペットショップやアクアショップ

      • 動物園や水族館

      • 競馬場や厩舎

13 環境倫理

  • 到達目標

    • 倫理が自然環境にまで拡大された背景を説明できる。

    • 非人間中心主義の考え方を挙げることができる。

    • 地球温暖化について説明できる。

  • 授業資料

  • 参考:国連広報センター「子どもたちの声に耳を傾けましょう -「国連環境開発会議」(地球サミット)におけるセヴァーン・スズキさん(カナダ)によるスピーチ(1992年6月、ブラジル、リオデジャネイロ)」(リンク

  • 参考:世界気象機関(WMO):2050年の天気予報(NHK)(リンク

  • 参考:地球温暖化懐疑論批判

  • 参考:IPCC 第 6 次評価報告書 第 1 作業部会報告書

  • 宿題地球温暖化について次のことを調べてみなさい。

      • 炭素循環とは何か

      • カーボンニュートラルとは何か。

      • オゾンホールはどうなったのか。

14 フィードバックと授業内試験

  • 到達目標

    • これまで掲げた到達目標を振り返り、達成できていない目標を達成することができる。

    • 各回で学んできたことを関連づけ、講義内容を包括的に理解することができる。

  • 各回の到達目標

その他 まとめ