プレシンポジウムツアー報告(長野県生産技術交流会)
野菜茶業研究所
浦上敦子
8月29日11時から長野県JA中野市アップルシティにおいて生産技術交流会が行われました。プレツアー参加者に加え82名の生産者を含む計140名が交流会に参加しました。交流会では長野県野菜花き試験場小口伴二場長の挨拶の後、同試験場元木悟研究員が「長野県におけるアスパラガス生産」、カリフォルニア大学農業生物資源学部のボブ・ミュレン博士が「カリフォルニアにおけるアスパラガス定植法と栽培」、ニュージーランドアスパラガス協議会会長のピーター・ファールーン博士が「ニュージーランドのアスパラガス生産-研究が産業をどう変えたか」と題してスライドやビデオを交えた発表を行い、活発な討議が行われました。交流の後には昼食会が開かれ、プレツアー参加者から圃場見学の印象などを伺いました。
長野県野菜花き試験場
元木 悟
1.アスパラガス開場見学〈飯山市)
国際アスパラガスシンポジウム生産地プレツアーの一環として、8月29日、飯山市のアスパラガス生産圃場を視察し、中野市のアップルシティーなかので国際アスパラガスシンポジウム出席者とアスパラガス生産者とが意見交換する「生産技術交流会」が開かれた。
飯山市は全国生産量の10分の1を占める国内最大の産地で、そのほとんどは露地栽培で行われている。今回の視察では、平成12年度長野県アスパラガス立毛品評会で農林水産大臣賞を獲得した大日万金治郎氏の圃場を視察した。当日は快晴の下、海外からの視察者は良く管理された大日方氏のアスパラガス圃場を熱心に観察していた。今回の視察対応にあたった北信農業改良普及センターの小林安男普及員によると、プレツアーの参加者からは品種問題や年間施肥方法、防除歴等の質問が多かったという。
2.生産地プレツアー ~生産技術交流会(中野市)
生産技術交流会には世界11カ国・地域からアスパラガスの研究者32名と、国内のアスパラガス生産者や技術者、研究者など、合わせて約150名が参加した。海外から2名(アメリカカリフォルニア大学のボブ・ミューレン博士、ニュージーランドアスパラガス協議会会長のペーター・ファールーン樽士)、国内から1名(県野菜花き試験場の元木悟研究員)の計3名が当地のアスパラガス生産を紹介した。それぞれからアスパラガスの安定生産技術や低コストの生産技術などが披露され、国内の生産者は海外の成功例を学ぼうと必死に耳を傾けていた。
ミューレン樽士によると、カリフォルニアのアスパラガスの栽培面積は9,600haで、長野県の栽培面積の約5倍であり、60名の農家により栽培されている。1戸当たりの栽培面積は160ha程度である。ミューレン博士はスライドを使って、3うね同時に株を植えられる大型機械を導入した効率的な大規模経営を解説した。カリフォルニアの10a当たりの生産量は324kgで、生産額は日本円に換算して約90億円である。品種は日本で栽培されている'ウェルカム'と同様の'UC157'及び'アトラス'がほとんどである。主な病気は立枯病、疫病、さび病の3種類である。ファールーン博士によると、ニュージーランドの栽培面積は、長野県の栽培面積よりやや多い2,200ha程度で、主に北島で露地栽培により栽培されている。220名の生産者により栽培され、1戸当たりの栽培面積は10ha程度である。収穫作業の人数は1ha当たり1名で、収穫は6時から10時まで行うという効率的な収穫方法の説明に、会場からは驚きの声が上がった。ニュージーランドの10a当たりの生産量は250kgで、北半球と季節が逆転するため、生産額の最高値は1kg当たり2,400円程度になることもある(安値だと1kg当たり300円)。アスパラガス生産の60%は加工用であり、輸出は1,400tで、アスパラガス生産の約20%を占める。グリーンアスパラガスの輸出の88%が日本へ、7%が台湾へ輸出されている。また、近年、紫アスパラガスが増加傾向で、イギリスと日本に輸出されている。 ニュージーランドのアスパラガス産業界は研究開発に大きな投資をしている。ニュージーランドは他のどの国よりもアスパラガス単位面積当たりのアスパラガス研究者が多く、長野県と同程度の栽培面積にも関わらず、アスパラガス研究者は20名以上もいる。また、ファールーン博士はニュージーランドで行われている含有成分の抗酸化性成分及び薬理効果の研究についても説明した。
その後、「生産技術交流会」の参加者たちはアスパラガスを肉や野菜であえた「アスパラガス特製料理」に舌鼓を打った。今回、生産技術交流会に参加した県内のアスパラガス生産者が、ミューレン博士やファールーン博士の講演に刺激を受け、アスパラガス生産地の活性化につながれば幸いである。
[信州のそ菜10月号フラッシュニュース第10回国際アスパラガスシンポジウム報告(その1)より抜粋]
シンポジウム報告
九州大学大学院
尾崎行生
第10回国際アスパラガスシンポジウムが、2001年8月30日から9月2日、新潟大学において開催された。本シンポジウムはこれまでおもにヨーロッパ、北米、オセアニアで開かれてきたが、今回は初めてのアジア地域での開催になった。シンポジウムには19カ国から約90名の参加者があったが、今回初めての企画として、本会議第1日日にアスパラガスの栽培、作型、品種比較に関する発表課題を集め、同時通訳を導入したところ、国内の多数の生産者、栽培技術者、研究者に短期参加して頂くことができた。
まず第1日日のオープニングでは、実行委員長のHajime Araki氏、Masaru Toyota氏、Brian L. Benson氏、Mike A.Nichols氏にそれぞれ挨拶を頂いた。その後、「栽培」、「作型」、「品種比較」、「遺伝・育種」、「生理」、「生化学」、「ポストハーベスト」、「病害虫」と広範囲にわたる内容について31課題の口頭発表と29課題のポスター発表が行われた。先に述べたように、今回は栽培、作型、品種比較の内容のセッションで同時通訳を導入したため、日本語による質問も受け付けることができ、非常に活発な討議がなされた。
大会前日にはウェルカムレセプションが、大会2日目には福島県へのフィールドツアーが、さらに大会3日日にはバンケットが企画され、参加者同士の交流を深めることができた。私は、前回のアメリカの大会に引き続き2回目の参加になったが、4年ぶりにお会いした方も多く、さらに親交を深めることができた。次回の開催地はオランダに決まり、次回の大会での再会を約束して、本シンポジウムの幕を閉じた。
フィールドツアー報告
福島県農業試験場
園田高広
1.福島県におけるアスパラガス栽培
福島県では、昭和40年代後半からグリーンアスパラガスの栽培が始まった。作付け面積は900ha(1992年)まで増加したが、茎枯病の多発などの理由から現在は減少傾向にある。しかし、春から夏にかけて収穫する二季取り栽培、パイプハウスによる半促成栽培及び三季取り栽培等の作型が導入され、単位面積当たりの収量は増加している。喜多方地域は8市町村が含まれ、福島県で最も大きいアスパラガスの産地である。また、多収穫栽培である三季取り栽培を実施する先進的な地域でもある。三季取り栽培は、佐賀県の長期取り栽培を喜多方地域に導入した栽培法である。従来培では最初の収穫が2年目の秋であったのが、この栽培法の導入で定植年の夏から収穫できるようになった。また、収穫期間が長いため、単位面積当たりの収量が増加した。
国際シンポジウムのフィールドツアーを喜多方市で行えたことは、私たち福島県アスパラガス関係者にとって光栄な事でした。このことにつきまして、荒木先生を始め関係者の方々に深く感謝します。ツアーでは多少のハプニングもありましたが、みなさんの御協力で無事ツアーの目的を果たせました。ここでは、ツアーについてトッピックスを交えながらご報告したいと思います。
2.ほ場見学
8月31日の午前8時30分に新潟ホテルオークラを出発したバスは、約90名の参加者を乗せて一路福島県喜多方市に向かいました。予定よりも30分遅れたのは、前夜の国際アスパラガス品種比較試験会議のディスカッションが盛んに行われた結果でした。見学ほ場は2カ所で、どちらのほ場も露地栽培とハウス長期取り栽培を行っていました。1カ所日の五十嵐氏ほ場は、茎枯病、斑点病、株腐病及び虫害が発生していました。このことは、外国からの参加者を大いに喜ばせました。また、2カ所日の鵜川氏ほ場では、グリンタワー、ウェルカム及びナイヤガラゴールドが栽培されており、この点が興味を引いたようでした。ほ場見学で私が受けた質問は、(1)アスパラガスの栽培が何年間同じほ場で可能なのか、(2)どのくらい収量があるのか、(3)1株の大きさはどのくらいなのか、(4)ビニルの被覆及び除去時期はいつなのか、等でした。参加者の中から、若茎頭部の曲がりは、Asparagus flyによるものだとの意見が開かれました。後日、確認したところ、日本には存在しない種であることがわかりました。
3.鶴が城公園の視察
参加者に日本の伝統文化と歴史にふれていただくため、昼食を兼ね会津鶴が城公園を訪れました。昼食は、わっぱ飯とうどんというジャパニーズスタイルでした。この昼食は評判が良く、うどんのおかわりをされる方もいました。そのあと、鶴が城の見学を行いました。ここでは、神奈川農総試の佐藤さんが、戊辰戦争や白虎隊(ホワイトタイガース)について説明して下さいました。これも、非常にみなさんに喜ばれていました。また、一部の参加者には、籠に乗る体験もしていただきました。
4.新潟ふるさと村他
鶴が城を後にして、新潟のふるさと村へ向かいました。車中では、納豆、漬け物など日本伝統の味を試す機会が設けられました。ふるさと村では、スノーマシーンによる雪のデモンストレーションを予定していましたが、機械が故障?ということで残念ながら新潟の冬は体験できませんでした。最後に、信濃川の夜景を楽しみながら夕食となりました。
ポストツアー報告
香川県農業試験場
古市崇雄
実施日時:2001年9月3日 〈月〉13:00~17:00
実施場所:香川県農業試験場三木試験地、現地視察(綾歌郡飯山町)
香川県におけるアスパラガス栽培
アスパラガスは1971年に水田転作作物で露地に導入されたのが始まりで、1982年頃から収穫期の早期化と病害虫(茎がれ病)対策でハウス栽培が一般的になった。品種は導入当時'メリーワシントン'であったが、1985年頃からFl品種が導入され始め、現在、県内農家の9割以上は品質と収量の安定している'ウェルカム'である。作型は半促成長期どり栽培が主流で約8割を占めている。この作型は春芽収穫後、立茎制限し夏秋芽の収穫を行うものである。春芽と夏秋芽の収量は、それぞれ株の養成量(株の大きさ、りん芽数、糖度)と立茎法の影響が大きい。参加者は8名でしたが、半促成長期どり栽培に興味をもっていただき、活発な意見交換がなされた。