フジツボやイガイなどの海洋付着生物は、船底や漁網、発電所の冷却システムなどに付着し、大きな被害を与えている。これらが船底に付着すると、水流抵抗の増加や船舶重量の増加などにより、燃料消費が約40%増加する。燃料消費が増加すると、地球温暖化や酸性雨などに代表される様々な環境問題につながってしまう。また、付着による経済損失は年間15兆円を超える。これらの生物の付着を防ぐためにこれまで用いられてきた防汚剤は環境への悪影響が存在するという問題点がある。
一方、ウミウシや紅藻などの一部の海洋生物は、海洋付着生物の付着を阻害する化合物を生産していることが先行研究から明らかにされている。これらの化合物は生物由来なので環境への悪影響はないと予想される。私たちは「合成生物学」の技術を用いることで、大腸菌にこれらの天然有機化合物を大量生産させ、社会実装することでこれらの問題を解決し、持続可能な社会の確立を目指す。