生命言語理論(LWT)とは

  「言葉をもつ生命」としての人間存在とはどのようなものか

             ――生命言語説(life-words theory、LWT)とは―― 「人間は言語を獲得した生命である

  言語とは 言語論の革新 言語の起源new! 言語の起源と進化  生命言語理論の意義  

  ダーウィン主義批判 チョムスキー批判 フロイト批判 マルクス批判 心とは何 日本文化論 


 私たち人間は、言葉を用いてどのようにして日常の生活を営んでいるのでしょうか

 生命言語説への理解が、人間とその社会、そして人間の創造してきた文化と文明の理解を深め、 「未来への 展望」を開きます。

 人間の心のしくみを知って、自己の心の働きを自覚し、正しい言葉と知識を学べば、心を豊かで強くすることができます。生命言語説は、あなた自身の心が、あなたのものの考え方や生き方と深く関わっていることを説明することができます。あなたの生き方が、あなた自身の心と言葉なのです。

 人間は、人生を意味づけ創造しながら生きている存在です。人生を意味づけ、人生を創造するのは、言語を用いた人間の思考力・判断力・創造力です。人間の欲求感情とともに、心の中での言葉の役割を理解することが、自らの心を知ることにつながります。

 生命言語説は、人間の普遍的な生き方として「理想的現実主義(または現実的理想主義)」を掲げ、人間の夢や希望を現実的・科学的に実現していくべきことを提唱します。これはなにも目新しいことではありませんが、今日までの西洋的「合理主義」と東洋的「物心一如」の価値観の限界を越えるものとなります(「永続的幸福論」)。生命(動物)活動の「刺激認識・判断行動」のしくみ(構造)が、言語の獲得によってどのように進化発展し、今日の人類的危機を招いたのか。そして、その解決策はどのようなものがあるかを明らかにします。                       

                                                  主任研究員 大江矩夫

  生命は、言語の獲得によって環境に適応するための認識と行動の様式を変革しました。とくに、ホモサピエンスに おける言語の新たな構成様式(主語述語等を用いた思考様式、一語文から論理的構成文へ)によって、刺激反応性による「経験的 適応から創造的適応へ」 と進化しました。この進化が、約一万年前の人類の新石器農業革命をもたらしたのです。それによって 余剰生産と人口増、それらに伴う文明社会を成立させ、今日の人類の飛躍的発展と繁栄、そして成長の限界(縮小社会)を迎えることになったのです。生命にとって言語の特異性は、複雑な音声信号によって目の前に存在しない(非直示的)対象だけでなく、現実に存在しない対象をも創造し想起させる機能を獲得し、それによって人間の活動を自然から分離させ、逆に自然そのものを支配・破壊するようになったことです。

◇ 人間は、地球上の全生命の代表者であるという自覚が世界の永遠平和を創ります。

生命の本質は何か

② 地球に誕生した生命の生存と適応の力は何か

③ 生命はどのような機能によって維持存続しているか。

④ 生命は個体維持のために、環境刺激の変化と危険にどのように反応し適応するか。

⑤ 個体維持の限界と生殖(再生)・進化の意味は何か。

⑥ 高等動物の生存行動の動因となる「欲求」にはどのようなものがあるか。

⑦ 高等動物の行動を制御・推進する感情反応にはどのようなものがあるか

⑧ 動物と人間の思考と行動の特色は何か

⑨ 高等動物と人間の音声信号の相違点は何か

言語認識の成立と思考・再構成の原理は何か

西洋的思考様式の特徴と言語的合理主義の起源

⑫ 西洋的因果関係と仏教的縁起主義はどのように異なるのか

⑬ 生命と縁起的認識との関係はどのようなものか

【地球環境と生命存続】

心の構造と機能】

【人間の心と幸福

【意志的感情とは】

【感情と人格の形成】

【動物的思考と言語的人間思考】 

           プレゼン生命言語説  言語とは  言語の究明がなぜ必要か  人間存在 Q&A

◇ 人類最強、最善、最終のイデオロギーに値する条件は何か?・・・・・・科学的検証に耐えること

◇ 新しい時代の心理学 <生命言語心理学>は、人間と社会と世界をもっと良いものに変えます。

★ 初めに生命があった。生命は言葉によって人間となった。人間は言葉と共にあった。人間は言葉によって神を作り、神によって人間を尊厳なものとし、また悪魔と差別を作った。

だが、今や人間は、人間存在の真実を知り、地上のすべての生命と人間に永続的幸福をもたらすことができるようになった。人間は、まもなく「生命言語説」によって「人間の真実」に目覚めるだろう。

★ 「宇宙の起源」と同様に、「生命の起源」を確定することはできない。しかし、人間の言語は、生命が自らを適応的に維持・存続させるために獲得したものであり、「言語の起源」を確定することはできる。生命は、個体と種の維持・存続のために、外界を的確に認識し、適応的な行動をとる。言語はそのための認識・思考と伝達・制御の手段である。

 だから、起源の分からない宇宙や生命を、「神のみ業」「知的設計」の被創造物と意味づけることは可能であるが、生命が獲得した「人間の言語」を、そのように確定することはできない。むしろそのような考察は、人間(生命)存在の有限性や脆弱性を、「神」や「創造主」という人間の獲得した「言葉」によって意味づけ強化したものに過ぎない。

今日の言語学における意味論と経済学における価値論は、ともに西洋思想(特に西洋的認識論・思考様式)の限界を共有している。両者はともに人間と人間との意思疎通によって生じる「観念的信号」の捉え方の問題であるが、その観念性が主観的なのか客観的(社会的普遍性)なのか、また主観と客観の相互の関係性はどうなっているのかで結論が見いだされていない。この認識論上の難問は、生命言語説によってはじめて解明される。

 ①生命の本質は何か ⇨ 詳細

  ⇒生命は、地球という特殊な環境における持続的生化学反応のシステム(系・体制・細胞)である。その生化学反応のシステムは、外界とのエネルギー代謝によって、タンパク質と核酸(DNA RNA)の働きを中心にした内的環境の「原初的恒常性(ホメオスタシス)」を維持しながら、今日の多様な生存形態をとって存続している。 

②地球に誕生した生命の生存と適応の力は何か

  ⇒原始地球に誕生した原始生命(細胞)は、多様な環境に適応して多様な生存形態をとるようになった。その生存(適応)力は、環境の無限の変化と多様性の中で、外界から自立した細胞システムの状態(原初的恒常性)を永続させることである。

③生命はどのような機能によって維持存続しているか。

  ⇒生命にとって「代謝、適応、生殖(再生)」の三つの機能が、持続的(普遍的・不変的)生存の条件となる。代謝はエネルギー供給をすることによって適応行動を支え、生殖は個体維持の限界(老化)を超える多様な適応を行う。

④生命は個体維持のために、環境刺激の変化と危険にどのように反応し適応する詳細

⇨動物は、無限の環境からの刺激を、種固有の適応様式で知覚認識・選択判断して反応・行動する。進化した動物行動の刺激反応性は、発達した神経系の知覚・統合・反応様式によって統制されている。

⑤個体維持の限界と生殖(再生)・進化の意味は何か。

  ⇒生命の老化と個体死の限界は、生殖(増殖)と適応進化によって克服され、性(接合や受精)によって自己変容と進化(多様化)を行う。進化とは、外的環境に適合した生存様式の多様化による種族維持のための方策である。⇒ 参照


⑥高等動物の生存行動の動因となる「欲求」にはどのようなものがあるか 詳細

⇒基本的動因となる欲求は、哺乳類では個体と種族の維持に分類される。

個体維持

エネルギー代謝:呼吸,休息・睡眠,飲食・排泄(内的恒常性)

 安全保持:苦痛回避,快楽追求,好奇心,防衛(個体安全性)

 自己表出:模倣・学習,探索,承認,遊び,優越(発達享楽性)

種族維持

 異性関係:性愛(恋慕・性交),配偶関係

 母子関係:育児(母性),保護,依存,自立(成長)

 集団関係:安全・安心,援助,秩序,協同行動

人間的欲求 (人間に特有で、言語的構想・創造力にもとづく二次的・習得的・文化的欲求)

[一般的欲求] 一次的欲求の言語化、創造性と文化的欲求(求快避苦)、自己像の意味づけ

[観念的欲求] 快・不快状況の合理化、因果性の追求、目標実現(空想・探求・why⇒宗教等)

[物質的欲求] 自己強化(医術・武術等)、自然加工(道具・火等)、社会経済的発展

[社会的欲求]自己主張・表現、社会的行動の意味づけ・制度化(祭礼・儀式、宗教・経済・政治)

 

⑦高等動物の行動を制御・推進する感情反応にはどのようなものがあるか 詳細

  ⇒感情反応は、内的反応であると共に行動の原動力になる。感情は、肯定的感情、否定的感情、意志的感情に分類できる。

  肯定的感情  

   [一般的感情] 快,満足,自由,安心,喜び,楽しみ,おかしさ等、

   [社会的感情] 連帯,愛情,保護,優しさ,安全,解放等(利他的)

   [優越的感情] 優越,自信,自尊,勝利,所有,支配等(利己的)

  否定的感情

   [一般的感情] 不快,空虚,不安,悲哀,恐怖,当惑,失望、疲労等、

   [社会的感情] 孤独,憎悪,怨恨,怒り,嫉妬,閉塞等(排他的)

   [劣等的感情] 劣等,不信,自虐,敗北,拘束,恥辱,罪悪等(自虐的)

  意志的感情

  好奇,希望,期待,願望、意欲,信念,義務,正義,挑戦、祈り、退行等、

  (自己の意図や目的、欲求や希望を実現するか、実現したときの感情、

充実感・達成感、祈り、感謝、または否定的な意志。言語を持つ人間にもっとも特徴的) 

⑧動物と人間の思考と行動の特色は何か 詳細

  ⇒動物行動の実験や観察から、条件反射や学習、洞察や欺き行動、しつけや訓練などについて、人間と共通の思考と行動の特性が見られる。しかし、人間は言語による社会的情報処理能力(知性・理性)を活用することによって、諸対象の記憶・創造・判断能力を高め、具体的直接的世界を越えて空間的時間的適応能力を拡大する。またそれによって、実在しない「虚偽の情報や世界」に適応せざるを得ないことにもなった。 

⑨高等動物と人間の音声信号の相違点は何か 詳細

  ⇒類人猿の音声信号は、行動の延長として自己の意志を表現伝達する。しかし人間の言語は、行動から独立して対象を音声信号化し、対象の状態や自己の意図を内的に再構成して他者に伝えることができる。人間は直接的世界だけでなく、間接的観念的(内言的)世界をつくって自己を合理化し制御し行動する。 

⑩言語認識の成立と思考・再構成の原理は何か 詳細

  ⇒言語は、対象(名詞what)とその状態(動詞・形容詞how)を、刺激(対象)反応性にもとづいて音声信号化し、対象の情報と自己の判断を同胞へ伝達するものである。

  その言語化(認識・思考)の過程で、対象の状態の認知と自己の判断(思考)が必要となり、何が(what)、どのように(how)、なぜ(why)あり(be, なりbecome,do)、対象間や時空の関係(助詞)、主観的可能、願望、意図 推量(助動詞)等々の表現が取り入れられ、複雑な文の構成が可能となった。 

⑪西洋的思考様式の特徴と言語的合理主義の起源 詳細

  ⇒ギリシア的・西洋的思考(認識)様式では、世界(対象)を言語(ロゴス)化した限りで、存在の絶対性(納得性)を認める。つまり、西洋的合理主義では、言語化以前の、特定しにくい曖昧な対象の存在を認めない。

  西洋的認識にとって、対象は言語(合理)化されてはじめて存在性が生じるから、曖昧な言語表現は西洋人を納得させない。西洋的合理主義では、対象に対する反応としての主観的感情(喜怒哀楽)を言語化し、そうすることによって、行動の動因としての感情を抑制し、「自然をそれ自体として」ありのままに、科学的に観察(認識)できたのである。これが西洋的科学的認識と自然支配の根源となった。 

⑫西洋的因果関係と仏教的縁起主義はどのように異なるのか詳細

縁起の語は「因縁生起」の略で、「因」は結果を生じさせる直接の原因、「縁」はそれを助ける外的な条件のことである。

  ある結果が生じる時には、直接の原因(近因)だけではなく、直接の原因を生じさせた原因やそれ以外の様々な間接的な原因(遠因)も含めて、あらゆる存在が互いに関係しあうことで、それら全ての関係性の結果として、ある結果が生じるという考え方である.

  これは「此があ(生じ)れば彼があり、」「此がなけ(滅す)れば彼がない。」というもので、西洋的因果関係のように「有」の一面的論理(始まりと終わりがある)ではなく、無(無限)や空(縁起)を含む相互依存的因果関係の論理(多面的因果性)である。 

⑬生命と縁起的認識との関係はどのようなものですか 詳細

⇒生命や個体には始まりがあって終わりがあります。しかしこれは因果関係ではありません。生命の誕生は、原因ではなく自然物質の存在形態の変化(物理化学的変化)の一環に過ぎません。人間の因果的認識は、刺激反応性に起源を持つ有限な認識能力から生じています。しかし、縁起関係は、特定の刺激と反応の限界を超えています。

 生命存在は、人間の認識能力の限界を超えた無限の変化の過程として成立しています。つまり、特定の原因による結果として生命の存在があるのではなく、強いて言えば、特定できない「無限の因果関係」から縁起の関係として成立しているのです。

 このように、人間の認識の限界を理解することによって、因果の連鎖を超え、また、時間的永遠(eternity)と空間的無限(infinity)の感情の中に生きることによって仏教的縁起と無常・空の意味が理解されます。

 因果関係の認識は、人間の認識能力の限界を示しますが、縁起の認識は、因果認識の限界を超えようとしています。因果認識は有限な言語の産物ですが、我々人間は、言語の本質と限界を理解することによって、はじめて生命存在の縁起的本質を理解することができるのです。 

 縁起的認識は、バランスと現状持続性(生命の恒常性維持と行動・反応の快不快感情バランス)、つまり自然との一体化と相互依存性を重視します。因果的認識は、目的追求と発展性、つまり自然の合理性と支配を重視します。縁起的認識には、始まりと終わりがなく、永遠と無限の運動があります。因果的認識には、始まりと終わりがあり、永遠と無限は単なる目的(終わりend)にすぎません。

 言語的・理性的認識は、因果的認識に片寄りやすく、言語的・感性的認識は、縁起的認識を基本にしています。人間には両者の認識が必要ですが、生命と人間の本質を見抜くためには、縁起的認識が必要です。生命進化は、発展や進歩ではなく自然環境の多様性に対応した、生存形態の多様化に過ぎないのです。

【地球環境と生命存続】 ここ

 生命は、地球環境の多様性と不安定性、抱擁性と破壊性の中で持続的生存のシステム(ホメオスタシス)と能力を獲得してきた。地球環境は生命を誕生させたが、その生存は環境と生命の間のきわどい変化とバランスによって維持されている。 

【心の構造と機能】 ここ

 人間の心は、哺乳動物の心(欲求と感情)に、人間の言語機能が作用して形成されたものである。人間の思考も動物の思考機能に言語が作用して、情報処理能力が飛躍的に拡大した。心は生存欲求に感情の反応様式が、言語と思考の増幅と抑制の機能によって複雑に作用したものである。 

【人間の心と幸福】 ここ

 動物は、食欲・性欲・安全・自己表出などの欲求を充足させるとともに、感情反応としての快楽を求め不快を避ける。人間の心は、単なる直接的刺激反応や欲求充足だけでなく、言語的思考と行動統制によって感情反応は複雑となる。幸福感も刹那的なものだけでなく、一定の目的や願望をともなう意志的感情が強く働き、絶対や永遠、崇高や悟り・諦観等の宗教的感情を持つようになる。

 幸福は、三つの形態に分類できる。①刹那的幸福 ②過程的幸福 ③永続的幸福 

【意志的感情とは】 ここ

 意志的感情とは、人間に特有の言語的意志的行動に伴って生起する観念的感情である。意志的感情は、知性的・知識的背景(知識・情報は反応を導く刺激である)を持つ身体的生理的「反応」である。ただその反応は目的性に支えられた積極的反応であり、快(肯定的感情)を求め、不快や苦痛(否定的感情)に挑戦し克服することのできる持続的反応である夢や希望、愛や信仰を含む。 

【感情と人格の形成】 ここ

 人格は、その人に固有の反応・行動様式なので、感情反応と密接に関係している。乳幼児に不安や恐怖の否定的感情を過剰に経験・学習させると、警戒心が強く神経質な人格が形成される。逆に安心と喜びの感情経験が多いと情緒的安定性のある積極的な人格が形成される。また意志的感情の多くは、思春期以降の精神的自立とともに形成される高次の反応様式(人格)である。さらに人格における感情や行動の強弱・遅速は、生理的欲求の強さや知覚反応過程の鋭敏さと関連している。 

【動物的思考と言語的人間思考】 ここ

生命の刺激反応性と適応様式から、動物的思考と人間的思考の比較を通じて、思考における言語の役割を解明する。動物的思考は対象(刺激)に直面するときにのみ機能する。しかし人間的思考は、言語(音声信号・刺激)化された対象(情報・意味・主語述語)を、内的自律的に処理・再構成・創造することによって成立・機能する。

★【定義】 他の動物と異なる人間の思考(認識)の特徴は次の通りである。動物は、行動(反応)と無関係で直接的知覚対象(刺激)のない認識(思考·判断)が 困難(皆無)である(直知的思考・行動)。それに対し、人間は、第二信号系しての言語刺激による創造的(想起的)認識思考が可能である(間知的思考・行動、創造的想起的思考・行動、言語的人間的思考・行動)。

 

―生命の存在は、因果性を超えた縁起(的因果)性によってはじめて明らかになる。―

― ニーチェは「神は死んだ」と言ったが、「神は必要ない」とは言わなかった。人間は、自らの存在を意味づけるために神を造ったのであり、神は死んだのでなく、必要ではなくなったのである。人間は自らの存在の真実と意味を知ることによって神を必要としなくなった。人間は今後、人間自身の知識と知恵によって、この有限な地球を常に意識しながら、ともに思いやりと分かち合いの精神で、手を携えて生きていかねばならない。―

ー地球上のすべての生命は、常に「いまここnow and here」の環境に、それぞれの選択した生存様式(種と多様な個性)によって、永続的生存(持続性)をめざして生きています。ー


【生命言語説とは】

 生命言語説(Life-Words Theory, LWT)は人間の本質的特徴を言語であるととらえ、人間や言語を理解するためには「生命にとっての言語」「言語を獲得した生命」という視点が不可欠であると考えます。生命(とくに動物)は、種に応じた環境の無限の変化に適応し、個体と種の維持・繁栄を図ろうとしますが、その活動において環境(刺激・情報)を正しく認識・理解し、その意図や情報を仲間に確実に伝達し共有することが、個体と種の生存にとって有利な条件となります。そのため、それぞれの種は、環境刺激に応じた最適の知覚器官(五感)と表現・伝達手段(動作、音声、フェロモン等)をもち、それらを神経ネットワーク(または生化学反応)で活用・統合して環境に働きかけ(反応・行動)、生存欲求を充足させます。それらの刺激・反応過程で最も進化し汎用的であり、生命をホモ・サピエンス(智恵ある人)である人間に進化させたのは音声信号としての言語です。

 このように言語の基本機能は「諸情報の認知・記憶と伝達」ですが、膨大な情報を処理(認知・保存・構成・統合)するには中枢機能である大脳の発達と多様な分節的発声能力が必要となります。そしてこれらの信号(情報)を認知・統合・表現するために、様々の疑問が発せられます。言語表現としての「何が(what)どのように(how)あるか?」「何と何はどのような関係にあるか?」「どちらを(which)選ぶのか?」等は、人間以外の高等動物にとっても必要な認識です。さらに人間では言語を獲得したことによって、直接的な反応・行動を抑制して、「なぜ(why)そうなるか?」の因果関係の究明や時間(when)・空間(where)の認識が求められ、観念や知識・情報量が飛躍的に拡大しました。このように無限の情報を正しく認識し、伝達・共有するためには、言語内容(意味・概念)を再構成・創造し、情報を整理して文章化するための約束、すなわち「文法」が必要となります。

 こうして言語は個体と種にとって創造的活動を可能にし、自己と社会集団、生活と自然の制御や支配によって複雑で豊かな文化・文明的秩序を築いてきました。「生命言語」的な生き方(ものの見方考え方)とは、言語を人間の本質と考え、生命と言語の原理をすべての思考や知識、労働や生活様式の基本に置く考え方です。このような考え方は、かつての観念論と唯物論、精神と肉体(心身問題)、行動論と認知論のような人間観についての認識論や価値論争、さらには神や創造主、宗教や哲学・倫理上の基本的な論争を終わらせることができます。 

⇒詳しくは、拙著『人間存在論 (前・後編)』 を参照してください。

http://www.eonet.ne.jp/~human-being/mokuji.html

 

◇ 生命には生存の維持・存続という意味(目的)があり、生命として言語を獲得し生命進化の頂点にある人間は、その生命存在の意味(個体と種の存続)を言語的に的確に表現し(「生き続けよう」と)、体現しなければなりません。言語獲得の意義は、生命が環境の状態(刺激・情報)を言語的に認知し、社会的(相互的)に伝達・共有し、言語的思考(理性・ロゴス)によって的確に生存活動を行えるようにするものです。ただ、認知や伝達には誤りや意図的な欺き・嘘があり、道具としての言語は十分慎重に検討して理性的に使うのが望ましいものです。

◇ 人類最強、最善、最終のイデオロギーに値する条件は何か?・・・・・科学的検証に耐えること

・ 生命活動は、無限の多様な環境の中で物理化学的な作用・反作用、刺激反応性の原理が支配する。

・ 生命活動は、地球という特殊な環境においてエネルギー代謝を可能にした細胞という特殊な系である。

・ 動物の活動は、快・不快の反応で制御されており、「個体と種の存続」の欲求実現を目的としている。

・ 多細胞動物は、外界の刺激を神経系によって知覚・伝達・統御して、環境に適応する。

・ 動物の活動は、環境情報の的確な把握と、その情報による環境への適応的判断によっておこなわれる。

・ 動物の意図伝達は、動作、音声、視線、臭気等の身体変化を通じて行われるが、音声は距離性においてすぐれる。

・ 動物と人間の刺激反応性の違いは、人間が第二信号系としての言語によって、大脳の内部に言語的創造世界をつくり、直接的環境刺激(直示的情報)に支配されることが少なくなったことである。

・ 人類は、二足歩行によって自由な手、豊かな音声、大脳の発達そして言語を獲得することによって創造的な発達が可能になった。言語による認知能力の拡大・伝達と世界の知識化は、人類を自然の束縛から 解き放ち自由で豊かにしたが、他方で自然破壊、殺戮、専制支配、経済学の欺瞞をもたらした。

どうするか? ⇒ 新しい社会契約   

                    重要!!ダーウィン自然選択説批判