世界連邦への道

世界連邦建設の条件と構想 ―世界平和のための唯一の道―(編集中)

   (世界連邦への道と世界連邦建設における日本の役割)

☆ 世界連邦による新世界秩序は、人類が直面している諸課題を解決し、世界の永遠平和を実現する唯一の道である。今人類には、永遠平和への確実な展望が求められています。人間の本性であるエゴイズムとナショナリズムを超えて、グローバリズムの精神的・政治的発展と人類的連帯が求められています。

 今日人類が直面している諸課題(戦争やテロの根絶、環境問題への対処、貧困・南北問題の解消、資源エネルギー問題の調整等々と、これらの諸問題に絡むイデオロギー的・国家的な利害対立・分断)は、現在の「国際連合」の改組・発展による「世界連邦・世界政府」の建設以外にないことは、すでに多くの識者によって唱えられている。第二次世界大戦後(モントルー宣言↓1947以降)組織化の動きが始まり、日本でも1948年8月6日、広島被爆3周年を期して「世界連邦建設同盟」が結成され(1948)、初代会長には尾崎行雄が選出され、「世界連邦運動協会」として活動している。

 しかし現在その運動は活発とは言えず、逆に各国の利害の対立や大国の利益が優先して、むしろ各国の民族主義的な傾向が強まっている。例えば東西冷戦が終了して以降、資源・エネルギーの争奪、環境問題における利害対立、南北問題に起因する貧困と格差の問題、特にイスラム諸国で民族・宗教対立、自暴自棄的なテロ活動等、解決すべき緊急の国際的課題が山積する状態になっている。これらの課題の解決には、先進国の植民地支配や資本主義の弱肉強食の経済・政治の問題だけでなく、今まで議論になりにくかった西洋近代の合理主義・進歩発展思想に由来する哲学的・思想的・宗教的閉塞状況が原因となっており、新しい理念が必要である。とりわけ、我々の立場からは、イデオロギー上の課題として近代民主主義の基本になった天賦人権論と社会契約説の限界、宗教上の「創造神」を背景とするユダヤ教起源の信仰対立、経済学上の「等価交換」仮説による新自由主義とマルクス主義の対立がある。

 経済的・政治的問題の解決は、「世界人権宣言」的レベルで利害の調整が可能であるが、今日の文明論的閉塞状況では、西洋的人権概念や社会契約説(人間の正義規定:自由・平等・幸福追求権、私有財産権および分配的正義)だけでは解決の糸口さえつかめなくなっており、人類の共通の課題である「人間とは何か」というさらに根源的な問題の解明が必要である。我々は「生命言語説」「新社会契約説」がこれらの課題の解決に役立つ という考えのもとに、新しい人権を視野に入れた世界連邦組織化のために一つの具体的理念を提案する。

                                       参照⇒ 社会発展への道モデル

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世界連邦建設10原則

1.人類社会の多様性を前提として、持続的生存と共存共栄、永続的平和と万民の幸福のために人類が連帯できる共通的・普遍的価値をもとめ新しい人権(新世界人権宣言)を策定する。

<補足> 世界各国の宗教や伝統、地域性や民族性を損なわずに、人類としての共通性、普遍性を「抽出」し、個人・社会や民族・国家が希求している平和と人類福祉の価値を追求し、また創造・啓発していく。例えば、人間の求めるものとして物質的・精神的安心・安全と、快楽や幸福の追求、またそれらが我々の子孫に永遠に受け継がれていくこと、つまり、全人類の快適な生存を維持・保障している価値を創造する。そのような共通の普遍的な価値と理念にもとづいて、地球の自然環境と有限な環境資源における利害対立の公正・公平な調整が、平和的調和的に行われることをめざす。

2.人類社会が追求するべき普遍的価値は、「世界平和と福祉の向上、貧困・犯罪の撲滅、公正と正義の実現、地球環境との持続的調和」による万民の幸福を目的とし、「思想・信条の自由、科学的認識と検証性、共存共栄と互恵互助、討議と民主主義」をその実現方法として追求することが必要となる(目的と手段の区別)。

<補足> 具体的な普遍的価値として、宗教・思想・信条についての違い(「創造神」「天賦人権」「死後の世界」「霊魂の存在」等)の検証不能な命題・思想については保留し、現実生活における世界的規模での、不快で否定的な反人道的な現状(戦争、テロ、犯罪、貧困、格差等)をできる限り縮小することを普遍的価値として承認する。

 そのために、普遍的諸価値の追求するべき目的・理想(「世界人権宣言」の改訂を含む)と、それらを実現する現実的方法を区別する。これは、現実の人類社会の進歩・発展が、諸個人や地域、諸民族の利己的な利害対立・強者支配によってなされてきた戦争や殺戮、不正義や犯罪という人類の否定的な歴史をふまえて、世界市民が了解・納得できるようなあるべき姿を漸進的に追求するためである。

3.上記の目的を達成するため、世界連邦を設立する。世界連邦は、連邦議会を最高議決機関とし、その下に連邦政府と連邦裁判所を置く。

<補足> 世界連邦は、世界の多様な利害を調整する権力機関である。人間の本性が持つ独善的・自己中心的発想による対立抗争は、その原因の調査・検討・議論を通じて常に抑制され、人類の平和と福祉のためにより向上改善されなければなりません。このため組織管理の原理としてのPDCAサイクル(plan do check act)は、状況を的確に認識し、調整的事業を理性的・計画的に推進することによって、世界連邦の目的を達成しなければなりません。この機関は、権力分立の原理に従い、議会による討議と決定、政府による執行、裁判所による点検・裁定を行いが行われ、「宇宙船地球号」より良い世界秩序を構築していきます。

4.連邦議会は、各国1名(各3票)、各州3名(一名5票)、各国人口割り市民代表(各1票)の合計500名を上限とする議員(約1000票)によって構成する。各国と各州の代表議員は国と地方の利害を代表し、他の議員は世界市民の資格で1名1票の投票権を持つ。人口割り代表議員の任期は5年とする。各議員は地域や国益を代表するよりも、地球世界の利益を優先しなければならない。

<補足>モントルー宣言の議会の構成は、世界市民単独であり世界の複雑な利害を反映しにくい。「国際連合」も国家単位で構成されているが、世界の利害は、地域・民族・国家により異なる利害をもつため(大国の利害が優先して)、それらの間の対立抗争を調整する役割を十分果たせていない。多様な意見や利害を反映するため「世界連邦」では構成をより多様にすべきである。

5.連邦議会の議決は、重要問題に関しては、出席し且つ投票された投票数の3分の2の多数によって、その他は出席し且つ投票された投票数の過半数によって行われる。重要問題には、国際平和と安全の維持に関する勧告、新加盟国の世界連邦への加盟の承認、加盟国としての権利及び特権の停止、その他連邦議会の多数決で議決された事項が含まれる。

<補足> この項目についてはそれほど問題ないと思われる。

6.連邦政府は、連邦議会で選出された2名の統領のもとに構成され、両者の討議を尽くした上で意見が分かれる場合は、首席統領が決断するが、その理由は検証可能な形で明示されなければならない。首席統領は両者の合意によって交替可能なものとする。

<補足> 世界連邦政府が、古代共和制ローマで行われたように2名の統領(consul 執政官)のもとにあるのは、一名の大統領では、世界の情勢をすべて把握するのは困難で、異なる人間の合意による叡智を必要とするからである。世界の利害は複雑で、強力な権力と権威(理念・正当性・イデオロギー)を必要とするが、その権力の執行には立場や意見が異なる指導者の透明な合議こそが望ましい。合議によって違いが明らかとなり、妥協と調和によって問題解決が可能になるような智恵こそが、世界政府にはふさわしい。世界政府では、人類共通の価値観の追求を前提するため「独裁」防止という理由で二名制にする必要はない。なお首席統領を交替可能なものとするのは、二名の統領の信頼関係や理念(人類の平和と福祉という共通理念)を前提とするからであり、信頼を喪失した二名の統領は、ともに解任され新たな統領が選出されるべきである。

7.世界連邦は、連邦警察軍を設置する。各国軍は世界連邦軍の指揮下に入り、その十分の一を連邦軍の常時直轄混成部隊とし、また各国軍は連邦警察軍各国支部(例:世界連邦警察軍日本支部)とする。なお各国軍は合理的で可能な限り縮小するものとする。

<補足> 世界連邦警察軍は、各国支部軍の精鋭を集めた世界連邦の最も優れた組織であり、世界の平和と安全、不正と犯罪を取り締まる。連邦軍は、世界の各国支部軍や、原子力、地球資源・環境を実力を持って管理し、世界に正義をもたらす組織となる。連邦警察軍は、統領の指揮下にあって安全保障理事会の監督を受ける。

8.「国際連合」の諸機関はこれを継承する。各州理事会を新設し、州選出議員3名を含む10名程度の各国代表者で構成する。安全保障理事会の理事は各州の議員代表を含み、「拒否権」は廃止する。

<補足> 安全保障理事会は、連邦議会のもとで世界の平和と安全にかかわる問題を討議し、連邦警察軍の活動を間接的に管理・監督する。各州理事会は、各地域の利害にかかわる連邦議会の下部討議機関である。

9.連邦機関を支える財政的措置として、世界市民一人あたり収入の1パーセントと、各国の財政状況に応じた負担金を拠出する。

<補足> 連邦政府各機関は、世界の平和と安全を守り、経済活動を円滑にして世界市民の福祉の向上を図る。また人類の持続的生存および地球環境を守り、地球市民の自立と関与、国家間の利害を調整するために、財政負担(税)が義務づけられる。モントルー宣言におけるように個人負担を中心にするのではなく、国家の利害も関連するので、国家単位の負担も必要とする。とともに常設の機関として世界連邦政府と連携をとりながら執行権限を持つ。

10.「世界連邦」は、「国際連合」のもとで時代の変化と将来的課題に適合した「世界連邦憲章」と「新たな世界人権宣言」を策定し、漸次的に「世界連邦」へ移行・発展させる。

<補足> 世界連邦は、国際連合の結合をより進化・発展させる人類愛と正義にもとづくより調和を重視した組織原理(統領二名制)と、有限な人間的本性を重視したより現実的・普遍的な人権的価値を明示する。その価値は、世界連邦建設の過程で、人間的本性の解明を通じて明らかにされる。


◇ 欧米中心主義時代の終焉と新しい世界包括・統合時代の幕開けを

 我々人類は、現代の全世界的・人類的危機に直面して、地球における持続可能な生存のために、生命と人間の存在に目覚め、世界平和と人類福祉のために共存共栄の世界連邦を建設すべき時に来ている。無知と独善の構造的対立の時代から、人類的共通性の理解を深めて正義と仁愛の支配する創造的協調の時代に転換しよう。

 伝統的宗教の中から慈悲と仁愛を、科学的合理主義の中から人間生命の真実と限界を、政治経済学から正義と道徳を、欺瞞と独善による強者(貨幣)支配の社会構造から有限性の自覚と透明性にもとづく公正公平な社会を創造しよう。検証不能な権威や権力による天賦の社会契約でなく、人間の有限性と調和的理性にもとづく新しい社会契約を実現しよう。人類の英知を結集して、過剰な拡大成長と人類破滅の危機を乗り越えよう。現代に生きる人間としての、未来世代に対する責任を果たそう。世界は今や西洋中心主義時代の終焉から、新しい世界包括・統合時代への幕開けを迎えている。 Think globally, Act locally.

新世界人権宣言Universal Declaration of New Human Rightsの提案

――人権概念の革新―人間として生きることの正しさとは何か?――

・地球世界の人民が、未来に平和と安寧と幸福を持続的に享受して生きていくために、生命の代表である人間として、社会的に正しく生きるとはどのようなことか?(第三世代の人権の課題)

・国家や世界連邦にとって、人間の永続的正義(法)とはなにか?

・民主主義を万民のものとするため与えられる人権ではなく、獲得し、創造するべき人権とは何か?

・刹那的功利主義を越えて、自由・平等の概念の歴史的・社会的再検討が必要ではないか?

・有限な地球と諸個人の競争的生存と利害対立の中で、人間の自由・平等・社会権は、どのように実現されるべきか?

第四世代の人権として、幸福追求権をさらに進化させ、人類普遍の「持続的幸福」を追求する権利を提案する。

◇ 縮小社会における「世界連邦」と新しい世界人権宣言

要 約

現行の「世界人権宣言」の限界性・過渡期性・不完全性を克服し、「世界連邦」「世界政府」による世界恒久平和の基盤としての「新世界人権宣言」の構想を提案します。現在進行中の縮小社会に起こっている政治・経済、宗教・文化、思想・哲学等々の対立や混乱は、「世界人権宣言」における人間の「尊厳と権利」「理性と良心」の根拠の薄弱さ(イデオロギーの貧困)に一因があります。ここで提案する新宣言では人権としての「永続的幸福追求権」を、すべての宗教や哲学・思想等の根底にあるものとして、またとりわけ東洋哲学の根底にある人間と自然と社会との調和を前提にし、人権思想の根底にある人間の普遍的欲求・感情としての「幸福追求権」の発展形態として捉え、科学的普遍的知識・認識論(ものの見方考え方)のもとに、共通理解が可能で東洋思想にも淵源を持つ人権論を追求します。 ☞ 続き

◇ 世界連邦建設への日本の役割と憲法改正

・憲法改正による自衛隊の世界連邦警察軍日本支部への過度的位置づけが、自衛隊問題の唯一の解決方法である。

・世界連邦建設をめざす憲法改正が、世界の永久平和と日本の領土問題解決の唯一の方法である。

                                   ☞ 参照 日本国憲法改正の三条件

◇ 世界連邦研究所の創設 Think globally, Act locally

   ――あるがままの「構造から」、あるべきものの「創造へ」――

・ 科学と価値の厳密な区別: 科学的知識による構造から、人類のめざすべき価値への創造へ

・ 世界連邦の建設は、人類の普遍的知識を前提に、多様な価値観を受容する和の精神から始まる。

・ 世界の利害対立は、人間的精神の調整・寛容・制御能力によって抑制され持続的共生が可能となる。

◇ モントルー宣言(1947)世界連邦の[改訂]6原則

 各国の熱心な世界連邦主義者達は、1946年、ルクセンブルグに集まって、「世界連邦運動」(WFM)の前身である「世界政府のための世界運動」(WMWFG)を組織し、その第一回大会を、翌47年、スイスのモントルーで開きました。23カ国から51の団体代表が集まり、いわゆる「モントルー宣言」を発表し、世界連邦の6原則を明らかにしました。我々はこの原則をやや現実化して、「改訂6原則」とします。 

・モントルー宣言(1947)世界連邦の6原則とその改訂(下記改訂は二重取消線と[ ]で示します) 

1)全世界の諸国、諸民族を全部加盟させる。

2)世界的に共通な問題については、各国家の主権の一部を世界連邦政府に委譲する。

3)世界連邦法は「国家」に対して[だけ]ではなく、1人1人の「個人」を対象として適用される。

4)各国の軍備は全廃[連邦政府と共同で管理]し、世界警察軍[と各国支部警察軍]を設置する。 

5)原子力は世界連邦政府のみが所有し、管理する。

6)世界連邦の経費は各国政府の供出ではなく[と共に] 、個人からの税金でまかなう。

運動の進め方としては、「国連を改革して世界連邦政府に発展させる方法」「世界人民の世論を喚起して人口比例の代表により世界憲法を起草するための人民会議を招集する方法」などを採択しました。

(「世界連邦運動協会」ホームページから)


◇ 地球世界は一つ、人類は皆朋友同志、生命と人類の共生平和と幸福福祉をめざす。(地球は一つ、人類は皆同胞 One earth, humankind all)

◇ 地球資源は人類の共有財産。冨と資源の独占・浪費は、生命と人類の持続的発展の倫理に反する。

世界平和を実現するための人間の心と西洋思想―認識論の変革が意識を変える―(意識の変革が人間と世界を変える)

西洋の合理主義と科学技術は、資本主義的発展の中で、どのようにして現代社会のグローバルな諸問題を生み出したか? また、進行しつつある縮小社会の危機と混乱をどのように克服していくか?

We'll always enjoy various lives and cultures with one earth and world in a heart. (One Earth and World, Various Lives and Cultures)

いつも心に一つの地球と世界を思い、多様な生活と文化に親しもう。

参照:「危機の時代」をどう考えるか?


□ 世界連邦建設の多様な過程

 永続的な世界平和のためには、国家連合(United Nations)世界市民連合(United Globalcitizens 各州・地域からの選出)の統一が必要です。なぜなら、国際的な人権や民主主義を確立し、平和を維持させるためには、国家のような専制体制(衆愚政治)をうみだしやすい制度の代表だけでなく、直接市民の代表からの利害や意見を反映する機構の必要があるからです。

  そのために現在の国際連合(United Nations)は、規約を改正して世界市民連合を組織化しつつ、自らを漸進的に改組発展させることによって、両者を統一した機構としての世界連邦(World Federation、世界政府)を建設するのです。世界連邦議会は、連邦議院と世界市民議院の二院制にするか、一院制にして両者の統一体にするかが考えられますが、当面は、国際連合総会に世界市民連合(現行の世界連邦運動World Federalist Movement)を加えることから改革を進めることが考えられます。

 正しい知識、正しい行動が、あらゆる変化に対応し、人々に永続的幸福をもたらします。私たちは世界の平和が脅かされ、閉塞状態に置かれ、一部の強者のみが勝利を得るというこの不公正な時代に生きて、究極の選択と決断を迫られています。私たちはこの地球上の生命であり、言語を持つ人間です。そのことを自覚して生命と言語の意義を知り、正しい選択を行いましょう。なお、今の時代にあって、「正しい選択」とは、誤った知識(フェイクニュースfake news)に騙されないこと、目先の利益に欺かれないことです。


◇○「ユネスコ憲章」の冒頭には、「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」とあります。人の心は、欲求と感情、そして心の記憶を意味づける言語(観念)で構成されています。心の中の平和のとりでは、言葉で作られます。あなたは心の中にどのような平和の心を持っていますか。心の中に生命や人間の尊厳という観念(言葉)を持っていますか?これからの人間は、心の中に平和と人間の尊厳という言葉を育てて、自分の欲求や感情を制御(manage,control)していく必要があるでしょう。 (22710)

                      人間存在研究所 研究員 大江矩夫(山田武)