台風を弱める装置(特許)
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台風8号の接近に伴い,気象庁は宮古島,沖縄本島周辺に,台風としては初めての「特別警報」を出した.沖縄では1時間に90ミリを超える猛烈な雨が降るなど各地で記録的な大雨となったほか,九州や四国でも激しい雨に見舞われた.一方で,梅雨前線を刺激したため,台風から離れた甲信越や東北などでも大雨が降った.
東シナ海を北上した台風は,九州の西(福江島の付近)で,90度近く東に進路を変更したため,熊本直撃を覚悟した.ところが,10日午前7時になると,わずかに南下して,気象庁の予報どおりに県境の鹿児島側(阿久根市)に上陸した.そのため,熊本市はほとんど風は吹かなかった.
ところで,大昔,台風は水爆で消滅させることができるという話を聞いたことがある.当時,水素爆弾の実験をしていた米国の発想と考えられるが,放射能汚染のため,机上の空論に終わったようだ.
時代は下って2009年,マイクロソフト創業者のビル・ゲイツが台風を抑止する特許を申請したと話題になったことがある.大金持ちの道楽と思っていたが,2006年に同様の特許を取った日本人が居ることを知った.当時の新聞記事によると,台風の勢力維持に必要な海面温度(27度)を少し下げるだけで,台風減弱が実現できるというわけである.海面下30メートルの海水を上層へ移動させるために循環パイプを装備した潜水プラットフォーム(新聞記事では潜水艦)を使うという発想である.具体的には,8個の送水管(20メートル,直径70センチ)を装備した潜水艦20雙を使用するとのことである.特許原文に記載された数値と異なる部分があるが,新聞記事の場合は直接取材に基づいて書かれているためと思われる.
新聞記事やウエブ情報だけでは,分かり難いので特許原文を調べてみた(http://www.patentjp.com/18/A/A101152/DA10001.html).
発明の名称 海面の水温低下装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2006-254903(P2006-254903A)
公開日 平成18年9月28日(2006.9.28)
出願番号 特願2006-21005(P2006-21005)
出願日 平成18年1月30日(2006.1.30)
代理人
【識別番号】100072039
【弁理士】【氏名又は名称】井澤 洵
発明者 北村 皓一
要約
課題
海面の水温を効率良く低下させ、海面の水温の低下によって海面からの水蒸気の蒸発を抑制し、低気圧の発生を防止ないしは勢力を弱める。また、海面水温の上昇を抑制することで赤潮や青潮の発生を防止ないしは軽減する。
解決手段
海 面の水温を低下させるための装置として、送水用のパイプを海中に設置し、そのパイプ11の吸入口18を目的海面Aの水温よりも低温の冷水帯Lに配置し、ま たパイプ11の噴出口19を海面下の所要の位置に配置するとともに、吸入口18から冷水を吸引し、噴出口19から噴出させるために、パイプ11にポンプ 15を接続し、目的海面Aの領域の海面下に供給し、より高温の暖水と混合させるように構成する。
後略(資料参照)
特許紹介サイト ekouhou.netには,4個の「株式会社伊勢工業により出願された特許」の中に,図が掲載されている(http://www.ekouhou.net/disp-applicant-398054650.html).
ウエブ上での紹介記事だけ読むと,アバウトな印象が強いが,特許全体をながめると実現できないことではないような気がしてきた.台風はともかく,特許の中で述べているように,赤潮や青潮の軽減に役に立つ可能性があるようだ.
今回の台風8号の場合,海水温が高い海域を通過するため,超大型に発達する可能性があった.そのため,早くから家の周囲の片付け等それなりにエネルギーを使ったが,幸い空振りに終わった.空振りを喜ぶのは台風襲来だけかもしれないが,ずっと連続空振りを望みたい.
参考資料
米国特許 7832657 (Apparatus for lowering water temperature of sea surface)
---------- 新聞記事の例 ----------------------------------------------------------------------------------
毎日jp 2010年09月20日13時44分
三重県桑名市の鋼(こう)構造物設備会社が、台風が進む海域に潜水艦を出動さ せ、海中の低温水をくみ上げて海面水温を下げることで勢力を弱める構想をまとめ、このほど日本とインドで特許を取得した。海面水温が高いと台風の勢力が維 持されることに着目して考え出したという。
この会社は伊勢工業で、06年1月に日本と米国、インドの3カ国で申請、今年7月に日本とインドで認められ、近く米国でも認められる見通しという。
特許は「海水温低下装置」という名称で、潜水艦の両側に長さ20メートル、直径70センチのポンプ付き送水管を8本取り付けたうえで、水深30メートルから低温の海水を海面にくみ上げる仕組みだ。
発案者である同社の北村皓一社長(84)によると、潜水艦1隻当たりの送水能力は毎分480トン。潜水艦20隻を台風の進路に配備すると、1時間で周辺海域5万7600平方メートルで水温を3度程度下げられ、台風の勢力を弱められるという。
気象研究所(茨城県つくば市)などによると、台風の発生には海水温が25~26度以上であることが重要な条件で、勢力を維持するには27度以上が目安にな るという。同研究所は今回の特許について「現状では台風の進路予想の精度などに課題はあるが、理論上は台風を小さくすることが可能」と評価している。
北村社長は、これまでも水道管の漏水を内部から補修する「内面バンド」など約30件の特許を取得しているが、特許使用料などの対価は求めてこなかった。今回の特許も、構想に対する公的機関のお墨付きを得るのが目的と話している。【田中功一】
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ビルゲイツの特許
United States Patent and Trademark Officeの検索サイトで,hurricaneやtyphoonのキーワードを用いて検索しても出てこない.タイトル等は以下を参照.
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(2014.7.18)