捨てられない電子部品

今年の3月に私立大学を定年退職された先生から「目下断捨離中」というメールが来た.国立大学在職中からため込んだ書籍, 資料類から整理を始めたと書いてあった.私の場合は後任の教授に研究室の後輩が就任し,研究テーマも当分継続することになったため,書籍や研究資料はその まま利用してもらい自宅に持ち帰ったものはそれほど多くなかった.新しい研究が軌道に乗る過程で不要になった資料は廃棄して貰えるだろうと勝手に思ってい る次第である.

私にとっては,研究資料よりも趣味のパソコン,電子工作等のために集めた諸々の物体が書斎の大部分の空間を占めているので,これらの処分が緊急の課題で ある.時間的余裕ができたら何時か利用するであろうと思い捨てずに取っておいた小型機器・機械類,いろいろな電気器具から取り出した電子基板類(自作の物 も含めた)を眺めていると,IC, トランジスター,LED,セラミック等を埋立ごみとして廃棄する気にはなれない.結局,半田ごてを取り出し,これらを基板から外し体積を小さくして保存す ることにしている.これも最終的には捨てることになるかもしれないが,「都市鉱山」は携帯電話だけではないことを役人が気付くまで気休めに持っておくこと になるだろう.

左 カーステレオ(左側),エアコンのリモコン(左上),ハードディスク(右上),モデム(右中央),蛍光灯(部品を抜いたコの字型)の基板等. 右 PC電源基盤2台分

携帯電話は国内の出荷台数が年間 3000~4000万台,デジカメの1000万台に比べても多いので,行政が携帯電話に焦点を合わせているのはキャンペーンを推進する上でもっとも効率的なためであろう.

携帯電話に含まれるリサイクル金属を以下に示した.

IC,トランジスタにはAu, Ag, Si, Sn, Cu

コイル,ボードにはCu

コネクターにはCu, Ni, Au

抵抗,コンデンサー類には Fe, Ag, Ni, Cu, Zn, Sn, Ti, Pb, Sr, Zr

半田 鉛,錫

等が含まれている.

携帯電話の重さによって異なるが、1台あたり金で40mg、銀で140mg、銅が10gとパラジウムが4mgで、1台あたり100円くらいの希少金属を 含むそうである. 100円以下の低い処理コストでこれらの希少金属を回収しなければならないという問題があるためなかなか軌道に乗らなかったようである.最近民間企業等の 努力で解決に向かって進んでいるようである. Webによると,小型電子機器に通常はかからないねじれ力を与えることで、そのねじ部周辺やはめ込み部など、機器の構造的に弱い部分から破断していく方式 などが開発され,基板や部品など部材の原形を比較的保持しながら、部材毎に分離されたような状態に破解することが可能になったようである.

それにしても国の対応は遅い.都市鉱山がマスコミで話題になって久しい.もっと早い時期に軌道に乗っていたと思っていたが調べてみるとこれからとのこと である.都市鉱山もレアアース輸出制限の際の一時的な話題に過ぎなかったということで,何時の間にか忘れ去られてしまったということにならないように願う 次第である.

追 記 基板から部品を外さず,基板そのものを保存することにしたので気が楽になったが,筐体(プラスチック,ビニール,金属)を廃棄する方がたいへんである ことを感じ初めている次第である.9/28の朝のニュースで携帯端末を含め40品目の回収を予定していると報じていた.(2011/9/28)