安倍さん大丈夫?

(2014)

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安倍総理が消費税率を引き上げるかどうか判断するうえで重要な経済指標としてきた,今年7月〜9月間のGDP(国内総生産)の速報値が17日朝に発表された.

GDPの伸び率は,物価の変動を除いた実質で前の3か月間と比べて-0.4%,年率に換算して-1.6%となり,消費増税の影響により年率でマイナス7.3%と東日本大震災の時を超える大幅な落ち込みとなった4月から6月に続いて,2四半期連続のマイナスとなった.

7~9月期の実質GDP改定値,年率1.9%減に下方修正

速報は1.6%減

2014/12/8 8:52

内閣府および日経新聞の統計データをグラフ化した.

実質GDPを主な需要項目別にみると,個人消費は前期比0.4%増,住宅投資は6.7%減,設備投資は0.2%減,公共投資は2.2%増,輸出は1.3%増,輸入は0.8%増である.2期連続マイナスとなったのは,GDPの約60%を占める個人消費の回復が消費増税の影響で予想以上に遅れて、住宅や設備投資の落ち込みを補いきれなかったことが大きな要因と言われている.政府による公共事業以外は総崩れの状況と言っても過言ではない.

安倍総理は,12月18日,官邸で記者会見し,消費税率の10%への引き上げを1年半延期する考えを示したうえで,21日に衆議院を解散する意向を表明した.さらに,自民・公明両党の与党で,衆議院の過半数を維持できなければ退陣するとして,過半数の議席の獲得を目指す考えを示した.

以前,「安倍さん言い過ぎでは」というコラムを書いた.その際,「年金問題」を,スーパーコンピュータの導入によって1年以内に解決すると断言しながら失敗に終わり,後継の福田総理が謝ったことを紹介した.中途半端な問題認識にも関わらず自信に満ちた発言が,その後の混乱を招いた.

「消費税アップの延期」と「衆院解散の表明」も何となく安倍流である.記者会見では,「政権発足以来,雇用は100万人以上増えました.今や有効求人倍率は22年ぶりの高水準です.この春,平均2%以上給料がアップしました.過去15年間で最高です」と経済政策はすべて巧くいっていると言っていた,企業の収益が増え,雇用が拡大し,賃金が上昇し,景気回復が好循環するためには,個人消費の好転が必須のようだ.あと一歩なら総選挙の必要はないように思えるが,あえて国会を解散するのはほかに不安材料(あるいは魂胆)があるのだろう.

税金は民主主義の基本であり,基本中の基本は国民が決めるべきとして衆院を解散して選挙をするという.集団的自衛権の行使容認や特定秘密保護法なども同じと思うが記者会見ではふれなかった.

やれることは何でもやると言って,円高に誘導したのに輸出が意外と伸びないという.空洞化,燃料,原材料の高騰,新興国の経済低迷等で円高になっても輸出は伸びないだろうと予想したエコノミストもいた.そのとおりになってしまった.それでも企業は200兆円を超える利益を上げているという.消費が伸びないのは,それを賃上げに回していないことが原因である.政府は経営者に給料を上げるように要請しているが,単発ではなく継続的である必要がある.懸案の女子力活用,地方創生等の施策も検討されているが,総選挙で実現に遅れがでることは必至である.19日には,アベノミクスの是非を総選挙で問いたいと言っていた.「消費税増税による落ち込みは一時的.経済は早期に回復する」と言っていたのだから仕方ないかもしれない.

一連の会見では「身を切る改革」等の都合の悪いことについてはふれなかった.

小泉政権の郵政解散的な選挙になるのか,または全てを争点するかは有権者が決めることである.

追記

・エコノミストと言われる人たちはGDPは2%程度と予想していた.「彼等の多くは証券会社や銀行に属しており,当局に先んじて市場に影響を与える予想を出せる立場にはない」と書いている人がいる.

・4−6月期のマイナス7.3%は在庫量の増減を考慮すると,さらに落ち込むと指摘されている.

参考資料

クラフ作成の基礎データは日本経済新聞11.22(ビジネスリーダートップ > 統計・指標 > 各種データ)を利用した.