太極拳の実戦運用!!太極拳の推手!!八卦掌と形意拳との関係性!!内家三拳と呼ばれる武術

投稿日: 2017/07/24 7:50:02

太極拳には、多くの門派(流派)が存在します。

代表的なものは、五大流派とも言われる、陳式太極拳楊式太極拳武式太極拳呉式太極拳孫式太極拳の、五つの太極拳です。

また、現在では、更に多くの種類が存在します。

また、太極拳に限りませんが、政府が中国体育として確立した、制定拳と、伝統的に受け継がれてきた、太極拳があります。

上記の制定拳伝統拳においても、武術性の高い太極拳や、健康増進に特化した太極拳があります。

武術としての太極拳は、比較的、伝統拳の太極拳に多いようです。

ここでは、武術としての太極拳について、考えていきたいと思います。

一概には言えませんが、現在の武術としての、多くの太極拳の戦闘法は、推手が基準となっています。

競技としての推手も含めて、推手の基本的な概念は、手が触れ合った状態から始め、相手を投げるか、突き飛ばす事で勝敗を決めます。

あるいは、上記の状態において、相手の重心を崩す練習などを行います。

このような、推手の概念が形成された理由については、色々な仮説があります。

太極拳に限らず、中国の武術の長い歴史の中で、試合や腕試しの方法として、会手と呼ばれる方法があります。

この会手は、門派(流派)や系統によって、様々な呼び方があるようです。

この会手とは、構えをとった状態で、前に配置した腕の、手首の部分を、相手の手首と接触させた状態から、戦闘が始まる事です。

つまり、推手競技で、よく見られる、お互いが前手の手首どうしを接した状態から、戦闘が始まる試合形式です。

通常、太極拳以外の武術では、上記の会手の状態から打撃を主体に、関節技や投げ技など、全ての攻撃を行うだけでなく、歩法(フットワーク)も自由に行います。

戦闘の始まりが、基本的に、会手の状態から始まるというだけです。

中国に限らず、国や歴史によって、試合や腕試しにおけるルール設定は変化する場合があります。

例えば、現在の日本や、多くの先進国における、試合や腕試しの方法は、総合格闘技のルールが、基準になっているのではないでしょうか。

これは、現在の武術や闘技を練習するものの中で、多数をしめるのが、総合格闘技や、それに関連するものだからです。

また、メディアによって、一般人にも浸透されているからでもあります。

しかし、これは普遍的なものではありません。

一昔前では、キックボクシングの形式が主流だった時代もあります。

また、百年以上前の日本に限定するならば、刀での斬り合いが主流でした。

つまり、時代や場所によって、主流となる試合形式は、変化するということです。

現在の感覚から見るならば、前述した会手の状態から、戦闘を始める試合形式は、ナンセンスです。

しかし、中国のある一時代に、このような形式での試合や腕試しの方法が、確立していたのは、事実のようです。

当然、中国武術の多くには、前述の会手の状態から、相手とどのように戦闘を始め、闘うかという技術が、少なからず存在します。

太極拳の推手の技術も、この会手の状態の試合形式が、少なからず影響を与えていると思います。

また、太極拳の歴史のなかで、楊式太極拳以降に成立したものは、一概には言えませんが、貴族階級や文人(学者、教師などの知識人層)が練習する事が、多かったようです。

彼等の練習体系では、会手の状態から始まる形式から、更に打撃や、危険な投げ技、関節技なども排除され、相手の重心を崩すという行為に、特化していったのではないかと思います。

当時の中国では、貴族階級はもちろん、文人も、特別な存在でした。

彼等のような知識人には、打撃などの、一種野蛮な行為は必要なかったという事です。

おそらく、彼等にとって、当時の太極拳は、囲碁将棋のような、知的な遊びの一種として、捉えられていたのかもしれません。

実際、日本人の、ある大学講師が、台湾で拳法を練習していたところ、現地の大学教授に、「文人なら、太極拳以外の武術をやるべきではない」というような注意を受けたそうです。

このように、近年まで、文人と呼ばれる人間は、ある種、特権階級でした。

全てとはいいませんが、太極拳の多くの門派(流派)は、この特権階級の人間達によって、伝えられてきた武術だと言えます。

そのため、相手の重心を崩すという技術に特化し、特殊な試合形式での技術に特化した武術だと言えると思います。

そのため、現代の格闘技などの試合形式では、対応出来ない部分があるでしょう。

では、太極拳は、意味のない、役に立たない武術なのでしょうか。

それは、間違いです。

相手と触れ合った、会手や推手の状態から、相手の重心を崩すという、技術にのみ関して言えば、太極拳を勝る武術はありません。

重要なのは、この太極拳の特性を生かせるか、です。実際、現在の太極拳の練習において、推手の状態以外の想定での練習をする事が、少ないのは事実です。

もちろん、全ての太極拳の門派が、そうではありません。

つまり、現在の多くの太極拳の戦闘法には、推手のような、相手と触れ合った状態をどのように作るか。

また、相手の重心を崩した後、どのようにして相手を倒すか。

という二種類の技術が、抜け落ちている門派(流派)が多いのではないでしょうか。

これら、上記の二種類の技術を、太極拳練習する武術家の多くが、他派の武術によって、補っていたように思います。

一番、想像しやすいのは、八卦掌形意拳ではないでしょうか。

実際、八卦掌の多くの門派(流派)が、歩法によって、相手との接触点を作りやすい、技術体系を持ちます。

また、形意拳には、洗練された発勁技法があります。

つまり、八卦掌の技術にて、相手との接触点を作り、太極拳で、相手の重心を崩し、形意拳の発勁で倒す。

という図式です。

そのため、上記の太極拳、八卦掌、形意拳の三派を学ぶ武術家が多かったのかもしれません。

もちろん、これらの三派を、内家三拳として提唱した名人の影響もあるでしょう。

また、当時の太極拳が発達した北京において、八卦掌形意拳が盛んに練習されていた事も、一つの要因だと思います。

実際、台湾のある太極拳の系統では、蟷螂拳と弊習するという事もあるそうです。

つまり、武術としての太極拳の特性を、真に理解していた武術家は、他派の技術を取り入れる、あるいは、様々な方法で、太極拳に欠けている技術を補おうとしてきたのだと思います。

このように、楊式太極拳以降に成立した、多くの系統の太極拳は、長い歴史の間に、極めて限定的なルール下での戦闘に、特化してしまった武術なのだと思います。

太極拳を武術として練習する場合、このような特性を理解した上で、推手以外の状況下に対応できるように、変化、応用させる必要があるのだと思います。






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