参照 ⇒ 世界連邦への道
※補足 上のモデルは、ヨーロッパ先進国による植民地支配を十分に含んでいません。世界連邦の建設に当たっては、欧米の過去の植民地支配による南北格差の問題を、先進国が公正と正義にもとづいて解決する責任をになっています。また、日本国憲法前文に示された日本国の「名誉ある地位を占め」るという崇高な使命の実現のために、20世紀に成立した国際連合(United Nations 創設1945 国連 UN)の枠組みは、日本国と国民自身が世界連邦の実現に努める責務を与えられていると言えます。
西暦20世紀の世界は、第一次、第二次世界大戦の二度の悲惨な経験を経て、国際連盟(League of Nations 1920)、国際連合を創設して世界平和と国際協力をめざしましてきました。しかし、国際連盟は、帝国主義の悪弊を克服することができず、イデオロギー的な偏見と民族主義的な利害の対立によって崩壊し、ふたたび世界大戦を引き起こし、ヒロシマ,ナガサキ への原爆投下という悲劇を経て終了しました。それらの反省にもとづいて創設された国際連合は、世界人権宣言を制定し、南北、東西対立の解消や人権福祉、民主主義の拡大などに大きな成果を上げてきましたが、21世紀の今日、大国の拒否権によって、総会よりも安全保障理事会が優先権を持つという欠陥によって機能不全に陥っています。世界連邦と連邦軍の創設が待望される理由がそこにあります。
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世界平和や共存共栄、そして国際協調を実現するための障害になっているのは、物質的・経済的利害の対立や格差・貧困、また自民族中心主義や利己主義、主導権争いなどが根本にあります。しかし今日、解決可能でありながら人間の知的怠慢と偏狭が災いとなって、世界史上の未解決問題であるイデオロギー上の混迷や対立とそれに伴う閉塞状況があります。人々は現代社会の問題状況の克服の必要性に気付いていても、もつれた糸を解きほぐす端緒を見つけ出せずに戸惑いと絶望を感じているのです。
宗教上ではユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの一神教に特徴的な深刻な対立や、仏教を含めた全ての宗教に当てはまる「人間存在の不条理」を説明しきれない天国や地獄の存在や生き方の問題など(例えば、「人はいかに生きるべきか」という問いの普遍的な解は不明または選択・妥協の問題)、生前や死後の世界や人生苦の根源の問題などの合理的説明の困難性、つまり人生の意味や幸福、生きがい、平和への願いなど に従来の宗教教団の教義(総じて心・精神の問題)の限界があります。
また、哲学、心理学、言語学、人間学、政治経済学等の人文科学上の問題として、科学的手法による脳生理学、生化学、遺伝学等の著しい進歩はあるものの、それらの科学的知識の成果を全体として統一的に体系付ける作業は行われておりません。また政治経済学などの社会科学においても、20世紀に蓄積された学問的成果は、18世紀のアダム・スミスを超えることまではできていません。さらに20世紀に明確になってきた地球環境問題や資源エネルギー問題などの人類的課題については、人間の経済発展にともなう環境破壊や人口増大に伴う生存環境の有限性からみれば、人類や生命の正常な恒常的自然状態の永続性を、人類自身の発展的生存活動が自ら破壊している感があります。
現代の細分化 精密化された知識や科学技術は、生活の享楽化・娯楽化や宇宙開発、軍事力増強など個別の経済成長やまたは利益に応用され、「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」における地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓うというスローガンは、人類共通の課題や人類福祉の向上・幸福の追求を達成する目標としては不十分です(格差と分断の増大、宗教的普遍性からの忌避)。人間の普遍的本質や人間の精神的豊かさ・幸福追求の意義についての目標が明確さを欠くようなスローガンは人類共通の課題としては不十分であります。
以上のような理由から 人類世界の豊かな永続的生存を可能にするためには、「人間とは何か?」「いかにすれば世界平和が実現できるか?」などの人類的課題についても緊急に世界的な討議が必要だと思われます。これは単にアカデミズムや専門家だけの問題ではなく、一般市民や大衆すべての人類が考えるべき問題なのです。そのような我々に課せられた課題についてSDGsで述べられ目標だけではとても不十分です。我々のこのような問題提起に関心を持たれた方々は、是非とも世界連邦や世界政府、そして人類の諸課題について十分考え意見を表明されることを期待しております。
参考 日本国憲法前文(1947施行)
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、 諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、 政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、 この憲法を確定する。 そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、 その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。 これは人類普遍の原理であり、この憲法は、 かかる原理に基くものである。 われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、 平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。 われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、 名誉ある地位を占めたいと思ふ。 われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、 平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、 普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。