霞の引札

霞の引札

霞の引札は南総里見八犬伝や鎮西椿説弓張月で有名な曲亭馬琴(滝沢馬琴)の作で、有名な前二者とは少し趣が違う読み物である。 世間の色々の噺を面白可笑しく病気に例え、その病気に効く薬の宣伝文風に作っている。 寛政年間に出版しているものを焼き直して天保八年に再出版したものと前書きで言っているので30年以上の間がある。 絵は天保年間当時売れっ子の歌川国芳である。 板物であるため古文書の読解としては難しくはないが、江戸時代の洒落や滑稽が分からないと内容は理解できない。 特に歌舞伎や遊郭に通じていないと何の可笑しみも感じない。 江戸の粋人はこの様な本を読んで楽しんでいたという事か。