掛物三点

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後水尾天皇御宸筆

御狩すと鳥立

の原をあさりつつ

片埜のゝ辺に

けふもくらしつ

註 後水尾天皇 江戸初期の天皇

作者 藤原忠通 平安後期

伊勢物語より

さむしろに 衣かたしき こよひもや

こひしき人に あハてのミねん

とよみけるを おとこあはれとおもひて

そのよは ねにけり 世の中のれいとして

おもふをハ おもひ、おもはぬをハおもはぬ

藤原盛徳

かへる雁 をのが別れを たかゝたの 帰る雁 己が別れを誰が方の

つらさになして 音をハ鳴らん 辛さになして 音をば鳴くらん

前半:伊勢物語63段の最終節 伝兼好法師筆

後半:藤原盛徳、南北朝時代の歌人

達磨面壁

達磨面壁二 達磨面壁す、二

祖立雪断臀云 祖雪に立ちて臀(ひじ)を断ちて云く

弟子心未安乞 弟子未だ心を安んぜず

師安心 磨云 師心を安んぜよ、磨云

将心来 與汝安 心を将(もち)来たれ、汝が為に安んぜん

祖云 覓心了不可 祖云く、心を覓(もとむる)に了(ついに)

得 磨云 為汝 得べからず、磨云く、汝が為に

安心訖 心を安んじ訖(おわんぬ)

乏道清巌宗渭

註 達磨:五世紀末―六世紀禅宗開祖、インド出身、中国で禅宗を開く

二祖:慧可 達磨の弟子、禅宗第二番目の祖

面壁 達磨は中国の少林寺で壁に九年向かい悟りを開いたという

清巌宗渭:江戸前期臨済宗の僧、大徳寺、東海寺住持

茶道、書画に通ずる

出典:個人