江戸名物双六

東海道五拾三駅見立

江戸名物

当時流行双六

五柳亭徳升作

一雲亭安秀画

越前屋喜兵衛版

振り出し

日本橋 初松魚(はつがつお)

はつかつお 松としよべバ 日本橋

いつも常盤の 賑わひぞする

福内楼 豆成

品川 干海苔

霞とも 春めくのりは 浅草の

並木のたな(棚)に にほふ紫

福花園真盛

川崎 鳥飼饅頭 *鳥飼和泉丞源転房

まんぢうの うまみを声に ふくませて

なく鶯の とりかひの見世

福占亭正成

神奈川 芝魚

竹芝の 浦にとりえて 夕河岸に

ひさげる魚や 雀いろ時 *夕暮時

福文亭有舛

平塚 隅田川の桜餅

すみ田川 四季のながめの あぢはひは

不断桜の もちにこそあれ

遊戯坊真我

大磯 虎屋の蒸籠(せいろう)

かほ見世の 人の浪間に まんぢうの

子渡しもみん とら屋せいろう *手渡

福 禄 亭

小田原 越後屋の外郎餅

越後屋の 名も寒国の 雪そらに

似しういろうの 味ぞ深かる

福健亭成都良

程ヶ谷 堀江町の団扇

反古張の うらをおもてに 見る文字の

左りうちはの 風のすずしさ

福草 花雄

戸塚 吉原油揚

うれまさる 豆腐の数も 揚屋町

名物のなも よしやよし原

福魚亭節人

藤沢 亀戸の蜆(しじみ)

橋の如 は(歯)のそる人へ をかしくも

土産に求めし 亀井戸蜆

福中舎釈子

おもふをみな箱根 八百善の料理

太鼓鉢に もりて出せる 会席の

料理ハ音に ひびく八百ぜん

福金亭砂子

三嶋 玉屋の花火

春秋を 見つる花火の からくりは

すすきの武蔵 藤のふさ玉

福刀館弓雄

沼津 浅草楊枝店 *柳屋の楊枝

あさくさに ひさぐやうじの 看板と

が こしの柳は

福茶園呑好

以下略