健康食品

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健康食品の市場規模は1兆2千億円を超え,その約半分は特定保健用食品が占めるとのことである(消費者庁).

新設私立薬学部を定年退職後,知り合いや一般の人からよく訊かれることのなかに,健康食品に関することが多いのに驚く.

ほとんどがテレビのコマーシャルや人から聞いた「効能」に関する質問が多い.

皆,内心まゆつばものと思っているから,本当のことを知りたいのだろう.

ホームページなどに掲載されている利用者のコメントは「やらせ」かもしれないので,独立行政法人,国立健康・栄養研究所が公表している情報を見るように勧めている.しかし,研究情報に基づいて客観的に記載されているため,"YES"か"NO"かを期待する人にとってはニュアンスが汲み取り難いようだ.「読んでみたが,ヒトでの有効性・安全性については信頼できるデータは見当たらないと記載されていた.大丈夫?」と再度訊かれたら,なるべく素人にも分かるようにその理由を説明することにしている.

コマーシャルに出演しているタレントは覚えているが,商品の名前をはっきり覚えていない人もいるので,コマーシャルを視聴して確かめているが,宣伝の仕方が巧妙であることに少々あきれている.

調べてみると効くはずがないのに,飲めば症状(未病の)が好転するような印象を与える宣伝が多い.コマーシャルを作っている業者は絶対に薬事法には抵触していないというかもしれないが,お年寄りや病気の人には「効く,治る」と聞こえるはずである.テレビの場合,毎日同じ時間帯に繰り返し繰り返し宣伝するので,そういうものだと思い込んでしまう.販売する方は「毒ではないし,規則的に飲むことで生活自体が規則的になり健康に留意するから問題はない」と思っている面もあるようだ.

これらの商品宣伝の問題点は,「振り込め詐欺」のターゲットにされている年齢層を対象にしている点である.若い人は,「なぜ簡単にダマされるのだろう」と疑問に思っているようだが,判断力のバリアーが低下しているところを狙っている点では〇×詐欺と共通点がある.

有名人や利用経験者が登場し,「%&に効く」とは絶対に言わないが,「飲んでます」を繰り返す.例えば,肉体派元NHKアナウンサーが,アミノ酸のひとつである化合物(アルギン酸代謝物)を愛用しているので元気であるかのようなコマーシャルが流されている.また,ある有名芸能人が「自分が使って調子がよいので,親にも勧めている」と言っている画面の隅の方に,小さく”個人的意見”であり,”効能を意味するものではない”と書かれている.ここまで手が込んでくると宣伝している方も何となく言い過ぎかもしれないという罪悪感を持ちながらやっていると思わざるをえない.

お年寄りは,テレビのチャンネルを頻繁に変えることはしない.そのため同じコマーシャルを何回も聞かされる,健康食品のコマーシャルの前後には病気入院特約付き生命保険のコマーシャルが流されるという具合である.健康食品メーカー,広告制作会社,タレント,テレビ局を巻き込んだ高齢者の弱点を突いた巧妙な戦略が見え隠れする.

健康食品の質問には,相手が素人とはいえ,不確実なことは言えないので,よく調べて答えてはいるが,もともと高い金を払ってワザワザ摂る必要のないものが多い.

コラーゲン,ヒヤルロン酸,グルコサミン,コンドロイチン等はその代表格であると言ったら叱られるかもしれないが,この中には経口による摂取では役に立たないものもある.グルコサミンの場合,医療用医薬品を製造している製薬メーカーが.「◯%製薬のX×#&Y$」という具合に,製薬メーカーだから効き目が違うと言わんばかりの宣伝をしている.品質管理が行き届いている,不純物が少ない,あるいは溶解度に差があると言いたいのだろうか.逆に言えば,そうでない会社の製品は問題があるということになる.不純物といえば,トリプトファン事件を思い出す.不純物が原因なのか,大量摂取が原因か結論は出ていない.

サプリメントの場合,必須ビタミン,必須ミネラル,必須脂肪酸ならともかく,まともに食事を摂っていればサプリメントとして摂る必要のないものも多い.それを実質以上に高価な価格でテレビショッピングでお年寄りに売りつけるのは正常ではない.健康食品会社は「予防医学,代替医療を基本として,健康づくりをサポートし,医療費削減に貢献する」と言っている.ある大手健康食品会社は酒を売りつけてアセトアルデヒドを体内で作り出しながら,健康維持のためのサプリメント販売にも力を入れている.医療費削減に繋がるいう考え方もあるようだが,それに便乗したような商売は間違っている.

健康食品が漢方生薬の場合,処方に従って調合された漢方薬と勘違いしている人達も多い.漢方薬に使われている生薬エキスを錠剤にして「肝臓の薬」として開発したような印象を与える錠剤(食品)をもらったことがあるが, 開発?に関わった研究室の名前が入っていた.一般人は偉い大学の先生が創ったのだから効くと思ってしまう.ひと頃ブームになった「茶」も 同じである.何でも「茶」になると言っていた先生がいたが,意外にも市販「??茶」の仕掛け人だった.また,ブルーベリーもよく訊かれるものの一つである.視力改善効果があると思われているが,アントシアニンの視力改善効果は認められていない.

ミネラル,ビタミン,アミノ酸,プロテイン,核酸等も単体でサプリメントとして売られている.さらに,2種類,3種類組み合わせれば,無数にサプリメントを作り出すことができる.

ビタミンとアミノ酸を組み合わせたものはその好例である.疲労回復やしみそばかすのための大衆薬として売られている.抗酸化物質の場合,身体に悪さをする種々の活性酸素種に対して,単一成分でオールマイティーなものはない.活性酸素種は細胞において過酸化水素 (HOOH) およびヒドロキシラジカル (·HO) とスーパーオキシドアニオン (O2•-) のようなラジカルや一重項酸素 (1O2) を形成する(過酸化水素や一重項酸素はラジカルではない).これらを捕捉する能力がもっとも広いのはアスコルビン酸であり,ヒドロキシラジカル以外は効果 がある.システインと組み合わせれば4種類の活性酸素種に対して効果を発揮することになる.

インターネット世代がネット通販で「痩せ薬」等を掴まされるのに対し,インターネットに対応できないお年寄りのためにテレビショッピングによって手軽に電話で対応できるようにしている点は健康食品の特徴である.薬事法の規制を逃れるため,「薬効」を「経験談」として提供するやり方も規制する時期かもしれない.

代表的な健康食品の分子構造

EPA(エイコサペンタエン酸), ビタミンC(アスコルビン酸),

グルコサミン,ヒヤルロン酸,カテキン,

システイン,トリプトファン,ビタミンE(トコフェロール),セサミン(ごま),

GABA(γ-アミノ酪酸),アリシン(にんにく),クエン酸(黒酢),アミノ酸類(黒酢)

ユビキノン(コエンザイムQ10、ビタミンQ、CoQ10)コエンザイムQ),DHA(ドコサヘキサエン酸)

スクワレン(肝油),ビタミンB1

リコペン(トマト),パントテン酸

化合物の構造や反応性を理解している薬剤師であれば,原報を読み,分かり易く説明することができるはずであるが,化学に弱い,構造式に弱い薬剤師養成教育が実践されていると嘆いている薬系大学教員もいる.国公私立を含めた全体的な傾向とすれば問題であり,医療従事者の中での薬剤師のアイデンティティが確保できるのか心配である.

参考資料

健康食品の表示制度の概要 - 消費者庁

「健康食品」の安全性・有効性情報

「健康食品」の素材情報データベース

トリプトファン事件 - Wikipedia

変形性膝関節症へのグルコサミン内服、初のRCTでは予防効果得られず ...(日経メディカル 2012年11月)

2012年に全国の警察が認知した振り込め詐欺や類似の詐欺による被害の合計は前年比78.1%増の363億4745万円だった.

(2013.4.18)

追記

2013.5.21 NHK あさイチ 玉葱の抗動脈硬化作用

追記

朝日新聞デジタル:トクホウCM「トクホと誤解する... http://www.asahi.com/national/update/0515/TKY2013...

2013年5月15日19時9分

トクホウCM「トクホと誤解する」 消費者庁が改善要請

特定保健用食品(トクホ)ではないのに、炭酸飲料のテレビCMで「トク

ホウ」と強調したとして、消費者庁が日本コカ・コーラに対し、改善を求めて

いたことがわかった。CMはすでに終了している。

問題となったのは、同社が4月22日に発売した「カナダドライジンジャー

エールFIBER8000」。CMは同月24日から始まり「トクホウ」という

文字が画面に大きく表示され、音声も流れた。同庁は4月下旬、消費者が誤解す

る懸念があると伝えた。同庁によると、5月上旬に同社から「7日でCMを取り

やめる」と連絡があったという。

同社は「CM終了は当初の予定通り。一部の方に誤解を与えたことは真摯(し

んし)に受け止めている」と説明している。同庁の阿南久長官は15日の会見で

「トクホでないものをトクホのように誤解させるのはよくない。情報発信にあ

たっては留意してほしい」と述べた。

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