至仏山
07.25-2022
7月に出会った花 後編
至仏山山頂~小至仏山~オヤマ沢 田代~鳩待峠
2022.07.25
11時25分着。登山口から所要時間4時間05分の超ゆっくり登山
ミヤマウイキョウは個体数も多いようだが、さらに山頂下山方向は最適地なのか、群生している。
尾瀬の至仏山と群馬、新潟県境の谷川岳に分布。蛇紋岩地帯の崩壊地や風衝草原に生育する。ミヤマウスユキソウの変種で、ミヤマウスユキソウの花のつかない茎の根出葉が、幅2~4㎜であるのに対し、本種のそれは1~1.5(2.5)㎜とさらに細長い。また、ミヤマウスユキソウより頭花の縁にある苞葉の幅が狭い等の区別点がある。なお、ハヤチネウスユキソウ、オオヒラウスユキソウと共にに、ウスユキソウ属の中ではヨーロッパのエーデルワイスに似た外見だと言われている。
キク科 ウスユキソウ属
「これこれこれ。」と思わず言ってしまう。ホソバヒナウスユキソウに間違いないと思う。
「お先にどうぞ」「いやどうぞ、休んでいますから」「では、お先に」「ゆっくり、どうぞ、気を付けて」と、山の挨拶は優し過ぎないか。下界で、人はここまで優しくなれるか。山行はいい。優しい人に出会えるから。優しい自分に戻れるから。
至仏山から大きく下だりながら、交差する登山者と笑顔の挨拶を交わす。
「あれっ、こんな所に」と1枚撮影。大きな株になってほしい。
「やぁー。1輪、咲き残っていてくれた。」と感激。小葉が5対11枚確認できる。
ツツジ科 ツツジ属
北海道、本州、四国の亜高山帯から一部はハイマツ帯まで分布。樹高は、亜高山帯では3m、ハイマツ帯では50cmにも満たないこともある。樹皮は灰褐色で、幹に細かい裂け目が入る。葉は枝先に車輪状に付く。革質で厚く、光沢がある。全縁で、やや内側に巻き込む。花期は6~7月。花冠は径3~4㎝の漏斗形で5裂する。花は白~淡紅色で、十数個がまとまって咲き、大型でよく目立つ。内側に薄い緑色の斑点(蜜標)がある。雄しべは10個、雌しべは1個。蜜をたくさん出すので多くの昆虫たちが訪れる。花期も終わりの頃なので、撮影できたのはこのひとかたまりだけだった。出会えてよかった。
「エーッ。まだ下るのか。」と愚痴も出る。小至仏山は、なお遠い。
整備されているとは言え、急降の礫地道は膝に負担がかかる。
雌雄異株。赤の濃い花は メイゲツソウ(名月草)と呼ばれる。
山の鼻~至仏山の上りコースでは、見落としもあるかもしれないが確認出来なかった。しかし、至仏山~小至仏山の下りコースでは、多くの株を確認出来た。
ミヤマウイキョウ ネバリノギラン イブキジャコウソウ
タカネナデシコの根元に、イブキジャコウソウ。仲良く共生。
至仏山の尾根を下り切り、小至仏山の上り口にやっと着いたあたり。
ムラサキタカネアオヤギソウを撮影しながら、「この辺りに小至仏山の上りを避けて通る巻き道(エスケープロード)はないかしら。」と探している。下りの緊張感と疲れの蓄積で体が悲鳴を上げている。心も折れかかっている。5分間の小休憩。白花はミヤマウイキョウ。
蜜を求めてやって来たのは、ヒョウモンチョウだと思われます。よく似たコヒョウモンがいて、湿原や渓谷にいるそうです。
タカネトウウチソウとネバリノギランの混生。ネバリノギランはよく見かける植物ではあるが、個体数がこれほど多い山は初めてのような気がする。お花畑に必ずと言っていいほど群生している。
セリ科 シラネニンジン属
北海道、本州中部地方以北に分布。亜高山~高山帯の草地に生育する。高さは10~50㎝。葉は2~3回羽状複葉で羽片はさらに不揃いに裂け、葉先や羽片の先がやや鈍頭、ニンジンの葉に似ている。しかし、変異が大きく似ていない場合もある。茎葉は小さい。花期は7~8月。茎頂に複散形花序を出し、白色の小花を多数付ける。花は径2~3㎜、花弁は5個。雄しべ5個、葯は紫褐色。総苞片、小総苞片ともに線形。
キク科 アキノキリンソウ属
北海道、本州中部地方以北に分布。亜高山~高山帯の草地、砂礫地に生育する。高さは15~30㎝で、黄色の径1.2~1.5㎝の花を咲かせる。花期は8〜9月。別名【コガネギク】アキノキリンソウの高山型で、アキノキリンソウの花が比較的まばらにつくのに対し、本種は頂部に固まってつく傾向にある。総苞片の列で区別するが、中間型もあり、厳密な区別は難しい。今回、こんな所で初めて一枚だけ撮影している。見落としたか。
北海道、本州中部地方以北に分布。高山帯に生える高山植物。雪渓が溶けたあとの湿った草原に生える。高さは20~70㎝。葉は丸みのある腎形で、3出葉。裂片は羽状に欠刻し、切れ込みは狭い披針形。
花期は7~8月。花は径3~4㎝のあざやかな黄色で萼片が5~7個ついており、花弁のように見える。
チングルマは雪渓の雪解けと共に咲き、早くに結実する。当地点は雪解けが遅かったのかもしれない。山の季節は、山頂から降りてくるということかもしれない。オゼソウ等もそうだが、標高が低い方が遅くに開花するように思える。
高山~亜高山帯に分布。草地や岩場に群生する。低山に分布するイワカガミの高山型で、全体に小さい。草丈は5~10㎝。葉は径1~4㎝の円~広卵形で、光沢がある。縁に浅い波状の鋸歯がふつう8個ある。
花期は6~7月。花は茎の先に1~5個付く。花冠の先は5中裂し裂片はさらに細かく線形に裂ける。
北海道、本州中部地方以北に分布。高山帯に生育する。シオガマギクの仲間では、最もよく見られる種である。(今回は当地点で初めて撮影した)同属のミヤマシオガマが岩場などに生えるのに対し、ヨツバシオガマは湿地帯に生える。高さは20~50㎝。名前のとおり、シダのような葉が茎の節ごとに4つずつ輪生する。花期は6~8月。薄紫~淡紅色の太くて短い花弁が数段に重なり輪生する。(分布域が北になるほど、草丈が高くなり、花数も多く、花色が濃く、紅色も美しくなる)
北海道、本州、四国に分布。亜高山~高山帯の針葉樹林下や林縁に生育する。高さは5~15㎝。葉は2枚の対生葉と短枝に2個ずつ葉が付き、計6枚の輪生に見える。花の咲く株は葉が6枚にまで成長したものである。花期は6~8月。花は4枚の白い総苞に囲まれハナミズキやヤマボウシに似る。核果は径5~6㎜で赤い。
森林の林床に生える。4~8月ごろに地下から花茎を伸ばし、最大15㎝まで伸びる。花茎は多数が集まって出る。枝分かれせず、先端に一輪の花を付ける。花は横からややうつむきに咲き、全体は円筒形。先端がやや広がる。色素はなく全体が透けた白色だが、花が咲くと柱頭は紺色である。茎には鱗片状の葉を多数付ける。
13時55分 鳩待峠まで2.9㎞、ゆるやかな下りながら、だらだらと長い道
全国に分布し、地帯上部~亜高山帯の針葉樹林に多く群生する。根茎を横に伸ばしよく繁殖する。茎は高さ10~20㎝ほど立ち上がり、途中に2枚のハート形の葉を付ける。
花期は5~7月。先端から茎を伸ばし、白色の小六弁花を総状花序に付ける。
自身にとっては、〖よく似たヤマブキショウマに比べて➂葉脈は少なく、不揃いである。(平行ではない)〗ことが、一番分かりやすい区別点だと思う。他の相違点を見るには細かい観察が必要で、しんどい登山中にはなかなか出来ないことである。
この辺りは、トリアシショウマの群生地としても知られているようだ。
北海道、本州中部地方以北と四国に分布。山地~亜高山帯の林縁に生育する。樹高は3~10m。葉は長さ4~8㎝の葉柄をもって対生。葉身は長さ6~13㎝で掌状に5~7浅裂・中裂し、裂片の先端は鋭くとがり、基部は浅心形から切形になり、縁には欠刻状の鋸歯がある。花期は6~8月。長さ10~20㎝の円柱形の複総状花序を花枝の先端に直立させる。花は花序に100~200個付き、黄緑色になる。花弁、萼片は5個、雄しべは8個ある。子房には細軟毛があり、2分する花柱は外曲する。果期は9~10月。果実は翼果で2個の分果からなる。
ムクロジ科 カエデ属
写真➀②はもともと一枚のもので、②は➀の一部分を拡大したもの。オガラバナは、カエデ属としては珍しく穂咲きになることで知られているもの。
本州東北地方南部~中部地方に分布。亜高山~高山帯下部の草地、林縁に生育する。草丈は50~150㎝。茎は上部で枝を分け、無毛。葉は3回羽状複葉で、小葉は長さ6~15㎝の長楕円形で、幅は細く先が尖る。葉柄はふくらんで袋状になる。裏面脈上に毛がある。花期は7~8月。花は大きな複散形花序となり、白色の小さな花を多数付ける。平地~山地に生えるシシウドに似るが、葉が一層広く、小葉は細くて長く、裏面脈上にしか毛のないこと等が異なる。
セリ科 シシウド属
写真➀②は同一株のもの。写真➀、登山道に沿った、トリアシショウマの大群生地。圧巻。
前出のジョウシュウオニアザミかなと思ったが、雰囲気と細かい葉の切れ込み方が異なっている。Internetで調べた範囲で、ノアザミ、オゼヌマアザミの名を目にするが、それらとは明らかな違いがあり、同定出来ない。
ゆるやかだけど、だらだらと長くてぬかるむ登山道。体力の限界で撮影意欲も減退、そして惰性の歩き。と、そんな時に目に止まったのがこれ。オオバギボウシは、長い花穂に多くの蕾を付けて豪華だが、下方から順次咲き上がっていき、咲いた花はやはり早くから傷んでしまう。だから、なかなかよい写真としては撮れないことが多い。花期は6~8月と長いが、こんな状態で出会うことは少ない。ちょっと、休憩する。
本州中部地方以北に分布。亜高山帯の針葉樹林下に生育する。高さ10~20㎝の蔓性の低木。茎は最初は這うが、2年目には立ち上がって花茎を伸ばし、細かい刺がある。葉は鳥足状の5小葉からなり、頂小葉は長さ5~8㎝の菱状狭卵形。先は鋭く尖り、縁には欠刻と鋸歯がある。花期は6~7月。花は2年目の腋芽から花柄を出し、下向きに1~2個付ける。花は径1.5㎝、花弁はなく(退化し線状で目立たない)、萼や花柄には細かい刺と腺毛がある。果実は集合果の球形で径1㎝、紅く熟す。
名は、葉がアカネ科のアリドオシに似ているランということによる。北海道、本州近畿地方以北と四国に分布。山地~亜高山帯(深山)の針葉樹林や落葉樹林の下で、苔に混ざった湿った場所に生育する。茎は細くひも状で下部は地を這い、高さ5~10㎝で、無毛。葉は3~5枚でまばらに互生し、長さ5~12㎜の広卵形で、表面に微突起と光沢があり、冬には枯れる。花茎には白い縮毛がある。花期は7~8月。茎の先端に1~3個の白、まれに薄桃色の花を横向きに付ける。苞は膜質で、長さ4~6㎜の広披針形。唇弁は長さ6~7㎜の萼より長く、長さ1㎝で基部はふくれ、先端は2裂する。葯は広卵形で、薄紅色。草姿はアカネ科のツルアリドオシに似る。(何しろ小さいもので、誰かに教わらなければ、見つけることはできなかったと思う。運がよかった。)
ラン科 アリドオシラン属
未設定
下山中、誰かが三脚を付けたカメラで何かを撮影していたので、「何を撮影しているのですか」と尋ねて、教えてもらったもの。自身初めての出会い。8枚ほど撮ったが、それにしても写真が悪すぎる。
入浴後、明日の観察地 白馬五竜高山植物園 に向かう
夕食は高速道路のSAで 車中泊、時間はいくらでもある