雑多なネタ

Twitterのハッシュタグ等で公開した雑多なネタをまとめております。

《ショートストーリー》

(2019/10/9 「#ファボごとにうちの子が自分の過去を語る」/11いいね より)

・孝明

1. 「レオ先生という方の話をしよう。とある世界を訪れた時に出会った偉いお医者さんで、僕に脳みそのことを教えてくれた。けれど恐ろしい感染症が流行って、先生は街ごと死んでしまったのだ。 僕はその場にいたのだけど、何もできなかった。そして、僕だけが死ななかった」

2.「ある時偶然に妖精郷を訪れた。そこの草花には僕の異能が効かなかった。人間の世界から悪いやつが入ってこようとしていたので、境目にあるただの植物たちを操って戦い、追い払った。妖精郷の花たちは頭を下げ、木々が僕をいたわった。 僕はその時から、自分の力を気持ち悪く思うようになった」

3.「ずっと前、木の最後の葉っぱが落ちた時に死ぬって思っちゃう人に実際に出会ったことがある。 僕の力でしばらく葉っぱを留めてあげたのだが、それは死んでほしくないと思ってたからか、本当に葉っぱが残ってる間は死なずにいられるのかって好奇心があったからか。 今の僕にはもう思い出せない」

4.「ちょっとどうしても金が必要になり、自然のジュースを売る屋台を開いた。自然とつければ人は自然と寄ってくるものだ。 だが、一番不自然なのは言うまでもなく僕である。 いるだけの金をピッタリ稼いだところで閉店した。何回も買いに来てくれたチビっ子にそこを見られちゃって、苦労した 」

5.「絵描きのモデルになったことがある。ぼうっと動かずにいると、今どの辺りを描いているんだろうって気になってくる。頭のもじゃもじゃの葉っぱか、それとも指先についた小さな芽かしら。あるいはほんのりコケのついた樹皮。結局出来上がりは見せてくれなかったけれど、まあしょうがないね」

・クアン

1.「大きくてきれいな家に住んでいた。いるのは大抵私と使用人たちだけだった。 ずっと、最後の誕生日プレゼントになるだろうと思っていた品がある。ひょろ長いクッション。私たちのように身体の長い種族が巻き付くためのやつだ。忘れかけていた、抱きつく感覚があった。毎晩、手放さなかった」

2.「父と母がおそらくは戻らないだろうと知らされた時、もしかこの家から出ていくことになったらと思った時、私は一晩だけ枕を濡らした。どうして一晩で済んだのか、上手くは思い出せない。 確かなことは、幸福に手を伸ばす気が失せ始めたということだ。今もまだ取り戻せていないように思える」

3.「アカデミーに居た頃、よく施錠間近の時間のプールに訪れた。誰もいない中、ひっそりと水に揺蕩うのは気持ちがいい。生きるのを止めずにいる言い訳にできる程度には。 いつだったか、雲ひとつない空に満月が見えた。誰かと一緒に月を見上げることになるなんて、その時は考えてもみなかった」

4.「アカデミーでは当番制で亜魔族の世話もした。いつか誰かの使い魔になる大事な生き物たちなので手は抜けない。 餌のバケツを抱えて水槽に入っていったら大きな蛙どもが襲いかかってきた。 私は半分だけとはいえ蛇なのだが。当時の私はだいぶ不健康な体だったし、舐められてたのかもしれない」

5.「駆け出しの頃のトトテティアは、とんだおっちょこちょいだった。ちょっと立ち止まればわかるような罠にはまって毒を受けた彼女を救うのに、体中スライム責めにしなくてはならなかった。今にして思えば、なんでそんなことを考えついたのかわからない」

・アノーヴァ

1.「我ら始祖竜はほとんどのニンゲン達よりもずっと長寿だが、物心がつく時期というのは実はそんなに変わらないらしい。いちばん古い記憶は、私が三つの頃。洞穴の中ではなく、マバデデの村長の家でのことだった。毛布から起き出して、外に連れ出されると子どもたちが待っていた」