サルトル研究会会報 第4号 1996年 9月
Bulletin du Cercle d'Etudes Sartriennes no.4 septembre 1996
サ ル ト ル 研 究 会 会 報 第4号 1996年 9月
サルトル研究会第2回例会開催の報告
第2回例会が下記のように開催されましたので、ご報告申し上げます。参加者は30名(うち聴講者4名)でした。
日時:1996年5月31日(金)午後1時
会場:早稲田大学文学部キャンパス 39号館(第2研究棟)5階 第5会議室
研究発表
「サルトルの想像力論 『想像的なもの』をめぐって」
発表者:田辺秋守氏(早稲田大学博士課程) 司会:北村晋氏
サルトルのimaginaire論がフッサールの像理論を出発点としながらも、到達点においては決定的に異ることを、両者の理論を詳細に比較にすることによって明らかにした興味深い報告であった。質疑応答では、『想像力の問題』を中心とした前期のサルトルにおけるimaginaireの問題を、後期の文学論のそれといかにつなげるかなどといった指摘もあり、活発な議論が行なわれた。
「『嘔吐』から『弁証法的理性批判』の接点 historiographieの検証」
発表者:生方淳子氏(青山学院大学) 司会:澤田直氏
小説『嘔吐』と『弁証法的理性批判』というこれまでには結びつけられることの少なかった二つのテクストを、「歴史のエクリチュール」という清新な切口でつないだ非常に刺激的な報告であった。質疑応答でも多くの発言が見られ、サルトル復権を唱える発表者の意気込みに対する多様な反応が起こった。
午後5時より総会が澤田直の進行で行われた。まず、会計担当の黒川学氏から95年度会計が報告された。続いて運営委員から提案された会則が出席した会員によって承認された。95年11月に暫定的に提案された運営委員(鈴木道彦、海老坂武、石崎晴己、澤田直、北村晋、黒川学、岡村雅史)の正式の承認が行なわれた。任期は96年度より2年間。また、会計監査に武田昭彦氏が選出された。
その後、早稲田大学近くで懇親会が開かれ20人近くが出席し、遅くまで議論を続け盛況のうちに会を閉じることができた。
☆ 第2回例会の会場の手配及び準備を担当して頂きました佐藤眞理人氏をはじめ、早稲田大学のみなさまの御尽力で、理想的な環境で例会を行なうことができました。ここに御礼を申し上げます。
1995年年度会計報告
(会計年度1995年7月1日-1996年3月31日)
1.収入の部
発起人寄附(8口)
\80,000
会費(11口+学生1口)
23,000
合計
103,000
2.支出の部
通信費
26,380
事務費
5,146
印刷費
5,400
合計
36,926
収入-支出= 66,074円(次年度繰越金)
会計担当 黒川学
会計監査 澤田直
☆ サルトル研究会の会員は96年9月1日現在以下の41名です。(50音順)
阿部 文彦
池上 明哉
石崎 晴己
出水 慈子
稲村 真美
井上たか子
生方 淳子
海老坂 武
大谷 克躬
岡村 雅史
尾畑久美子
加国 尚志
川神 傅弘
川瀬 雅也
北見 秀司
北村 晋
清 眞人
黒川 学
軍事 敏
河野 哲也
坂井由加里
佐藤眞理人
澤田 直
重見 普也
柴崎 秀穂
柴田 芳幸
鈴木 梯男
鈴木 正道
鈴木 道彦
武田 昭彦
田中 端
田辺 秋守
谷口佳津宏
茅野 亜弥
中田 平
永野 潤
前原有美子
松葉 祥一
水野 浩二
森田 秀二
家根谷泰史
☆ 今年度会費未納の方は郵便振替にて、納入してください。一般は2000円、学生は 1000円です。
☆ サルトル関連の文献目録の作成にご協力下さりありがとうございました。多数の方からご報告頂き、お蔭様で400点近いレフェランスが集まりました。整理が遅れておりますが、近日中に会員の方にはペーパーの形で配布する予定です。また、フロッピーでご希望の方はご連絡下さい。今のところ、マッキントッシュ、ファイル・メカーのみです。
サルトル研究会会則
本研究会は一九九五年六月、鈴木道彦、海老坂武、石崎晴己、澤田直を発起人として、世代を越えたサルトル研究者の自主的組織として成立した。会の活動の指針として、以下の会則を定める。
第一条 本会はサルトル研究会Cercle d'Etudes Sartriennes(Japon)と称する。
第二条 本会は会員相互の研鑽を通じて、サルトル及び関連分野の研究とその発展を図ることを目的とする。
第三条 本会はこの目的を達成するために次の事業を行う。1 研究発表会、研究会等の定期ならび随時開催。2 会報、資料集の刊行。3 サルトル関係資料、研究文献の情報整理及び紹介。4 国内外の関連分野の研究団体との交流。5 その他必要な事業。
第四条 本会は上記の目的に賛同する研究者をもって会員とする。二、会員は本会の事業に参加し、またそれに関する意見を述べることができる。三、会員は別途定める年会費を年度初めに収めるものとする。四、三年にわたり会費を滞納した場合は、退会したものとみなす。
第五条 本会は年一回定期総会を開催する。また必要に応じて運営委員会の発議により臨時総会を開催することができる。総会は最高の議決期間であり、会の活動方針を決定し、運営委員会より必要な報告を受けかつ承認する。二、総会は出席者の過半数により議決することができる。
第六条 本会に次の役員をおく。任期は二年とする。役員は総会の承認を受けなければならない。1 運営委員 若干名。総会において選出する。運営委員は会の運営と事務にあたる。2 会計監査委員。運営委員会の推薦に基づき総会において選出する。二 運営委員会は総会において一般報告、会計報告その他の報告及び提案を行い、決定された方針を執行する。会計監査委員は年度事に会計を監査する。
第七条 本会則の改正は発起人、運営委員会あるいは出席会員の発議に基づき、総会の議決を経てこれを行う。
細則第四条三、 細則、年会費は 一般会員二〇〇〇円、学生会員一〇〇〇円とする。(一九九六年六月)
☆ 第3回例会のお知らせ
日時:11月16日(土曜日)一時半
会場:法政大学
多数の方のご参加をお待ちしております。
☆ 6月にパリで行なわれたGESの大会には、在仏のサルトル研究会員の方など数名が参加しました。以下は稲村真美さんによる報告です。
例年と同じく今年も、サルトルの誕生日(6月21日)に近い週末である6月22-23日にかけて、この時期にしては少し肌寒い天候のパリ、ソルボンヌ大学(パリI)のルーフェブル講堂において、サルトル学会(GES)の大会が行なわれた。本年はデカルト生誕400年と言うこともあり、哲学関係を中心とした初日の午前中は〈サルトルとデカルト〉というテーマで、両者におけるコギトの問題をめぐって検討された3本の発表があり、午後は〈間主観性と歴史〉という観点から3つの発表がなされた。引続き、文学関係のテキストを対象とした2日目は、前半を〈小説的テキスト〉という角度から、後半は言語学的なアプローチをも含めた広範な〈エクリチュールの実践〉という視点から、多彩な発表があった。本年度の大会において、とりわけ印象に残った点を挙げてみると、一方で、必ずしもサルトル研究専門でないと思われる発表者からの開かれたアプローチがあり、例えばフランク・ヌヴーの統辞(syntaxe)のレヴェルから緻密に引き出された伝記的なテキストにおけるディスクールの構造の解明などは、言語学的レヴェルにおいてもサルトルのテキストが今日与えうる読みの可能性を垣間見せるものであり、また他方では、従来から続けられてきた、コギト、歴史、自伝や間テキスト性に関しての綿密な研究があり、例えば『嘔吐』をネルヴァルとの対比においてロマン主義的文脈との関連で読み得る可能性を提示していたセルジュ・ゼンキーヌの発表などは、〈間テキスト性〉の観点からもまたサルトルのテキスト性が持つテーマの豊饒さを示すものであるように思われた。これはデカルトルの関係においてコギトを考察したダニエル・ジョヴァンジェリの発表の最後でも言及された、サルトルの哲学が常にそれを維持するために展開された、〈瞬間〉における意識の〈自発性〉spontan司t獅フ絶え間ない運動が、エクリチュールの次元においても実現されており、それゆえ現代の私たちに今でも多くの息吹きを与え得ることを如実に示しているようにも思われる大会であった。(稲村真美)
☆ Bulletin d'Information du Groupe d'Etudes Sartriennes n。 10が数部、研究会事務局にあります。一部3000円(+送料)でお分けします。ご希望のかたはお申し込みください。