追悼 石崎晴己先生

   本学会の設立発起人のひとりである石崎晴己先生が、10月22日、ご逝去されました。83歳でした。

  先生はフランスの社会学者エマニュエル・トッドの日本への紹介者として知られていますが、元来サルトル研究者でした。「『嘔吐』への眼差し」(『現代詩手帖』)、「いわゆる『サルトル・カミュ論争』再検討」(『青山総合文化政策学』第3号)など多数の論文を公刊されるとともに、捕虜時代の戯曲や日記等の翻訳解説書、戦中日記『奇妙な戦争』(共訳・人文書院)、またアニー・コーエン=ソラルの『サルトル伝』(藤原書店)の翻訳など、数々の重要な業績を残されています。

  発足当初の本学会を軌道に乗せるためにもご尽力くださり、その後も国際シンポジウムの企画・運営や例会へのご参加など、活動に積極的に関わってくださいました。その成果は、共編著『サルトル 21世紀の思想家―国際シンポジウム記録論集』(思潮社)などの形で上梓され、学会員の多くもお世話になりました。

  先生はここ数年、サルトルの「単独的普遍」概念や「遡行的・前進的方法」を取り入れた自伝的文明論に取り組まれ、『ある少年H』、『続・ある少年H』(ともに吉田書店)を出版され、闘病の中でさらなる続編の執筆に取り組んでおられました。

  先生の活力的にして威厳に満ち、かつ親しみやすかったお人柄を偲び、敬意と感謝を新たにするとともに、心より哀悼の意を表します。     


日本サルトル学会 理事一同


石崎先生の2012年までの業績については、青山総合文化政策学第5号でご参照できます。

https://www.agulin.aoyama.ac.jp/repo/repository/1000/12993/00012993.pdf