2009年4月のメッセージ

エイプリル・フール!

4月1日、新学期・入学式・入社式の日です。私はホームページのレイアウトとアドレスを一新しました。ホームページに「今月のメッセージ」を書き始めて以来7年、初めてのCHANGEです。まだブログが世に知られていなかった時代から書き始めた「今月のメッセージ」ですが、BLOGとは異なります。私が一方的に書いて、皆さんからのコメントは載りません。

7年のうちにネット社会は随分変わりました。たくさんのサイトが開設され、そしてたくさんのサイトが消滅しました。その中で7年間も同じスタイルで毎月書き続ける私は、ネット時代の化石のようです。ちょっと退屈してきています。新しいテクノロジーを使いたいと思います。iPHONE発売の日に表参道に並びに行ったほどのミーハーの私としては、新しいことがしたいのです。そこで、正月休暇にGOOGLE SITEを勉強しました。これを使えば、HTMLを書けない私でもサイトを作ることが出来ます。1日でほとんどマスターしてしまいました。ただし、これまでのコンテンツを移植するために3ヶ月掛かってしまいました。まだ、色んなところが未完成です。

4月1日、新しいサイトのお目見えです。GOOGLE SITEは無料ですし、人に頼まずにいつでもどこでも、自分で更新できます。「平成洪庵の会」も「科学者維新塾」もGOOGLE SITEを使っています。GOOGLE GROUP、GOOGLE DOCUMENT、GOOGLE CALENDER、みんな無料で仲間と共有できて、どこのコンピュータでも書いたり読んだりできるので、とっても自由です。ネット社会が進化していることを実感します。まさに「WEB進化論」。ビジネスモデルの転換はとても速くて、もはや、検索エンジンもWEB作成も業者に頼む必要がなくなりました。出版したばかりの野口悠紀夫さんの「超・超整理法」だって、内容に古さを感じます。

4月1日、私の所属する教室ではたくさんの研究室が引っ越しをしました。新しい建物に移る人たちや同じ建物で違う研究室と入れ替わる人たちがいます。何人かの人は他大学に栄転され、新しい教授が着任されて新しい研究室が生まれました。古い荷物を片付けて新しい部屋に移り、みんな爽やか、楽しそうです。3月に学生が卒業してしばらく静かだった研究室に新しい学生が配属され、賑やかになりました。4月1日、引っ越しは居残り組も気持ちが一新して、これからの新しい1年に思いを馳せます。

4月1日、私がもうひとつの組織である研究所に参加して、新しい研究室を立ち上げて丁度7年です。今年は、研究室のいわゆる7年レビューがあります。新たに参加する人たちは期待と不安に胸を膨らませていますが、長くいる人たちはこれまでの延長で、緊張感が感じられません。惰性はサイエンスに有害です。そこで私は、研究室スタッフ全員に、この1年の研究計画の発表をして戴くことにしました。さらに皆に、部屋替え・席替えをお願いしました。日本の学校は小学校から高校に至るまで、4月1日にクラス替えし、学期毎に席替えをします。日本人とは変化を嫌い既得権益にしがみつく民族ですから、強制的にクラス替え・席替えをするのです。授業で座る席の決まっていない欧米にはない、日本固有の大イベントです。

大学では、いま教員の定年延長が計画されています。年金がもらえるようになる65歳まで雇ってくれるのだそうです。私は能力ではなく年齢により人を退職させるする日本の定年制に反対ですが、能力ではなく年齢によって定年を延長する今の計画は、もっと納得できません。早く辞めたり、所属を変えたり、役職を変わったりすることのできる自由・多様性があって欲しいと思います。定年の一律延長は、年長者には年金受給の歳まで給料がもらえてありがたい話ですが、若い人達の昇進や任用のチャンスを減らします。ただでさえ、ポスドクの就職が無いと社会問題になっているのに、彼等の道を狭める制度です。60歳で退職し再雇用や転職や引退などの道を選ぶような制度を作ろうという意見は、高齢者が支配する理事会からは聞こえてきません。若い科学者の職がさらに奪われてるのです。

私が会長をする会社も、創業後7年が経ちました。経営・開発・マーケッティングの主導が創業者達から、後に参加した若い人たちに変わりつつあります。経験は足りなくても、学習意欲と冒険心と行動力において、創業時のメンバーよりも圧倒的に上回っています。勢いのあるベンチャー会社と既得権益にしがみつく大学の違いを、日々実感しています。

4月1日、1年の計画を立てましょう。1年後の自分をイメージしてみましょう。研究室では、1年後に得られるであろう研究成果をポンチ絵で描いていただきます。研究成果は公約ではなく、夢です。

同じ組織にいて7年経った人も、これから一年の計画を立てましょう。これからの7年ではありません。1年です。同じ組織にいて7年経った人は、電話番号を変えましょう。オフィスを移りましょう。研究分野を変えましょう。新しい仕事を探しましょう。古い荷物を捨てて、身を軽くして、新しい自分を探してみましょう。電話番号を変えて、登録されたアドレスブックは一度捨ててしまいましょう。しがらみを断ち切って新しい世界に飛び込んで下さい。メールアドレスもホームページのアドレスも変えてしまいましょう。アメリカでは(特に軍隊や大学)、同じ職場に居続ける人たちを、サバティカル・リーブと称して1年間職場から放り出します。自分のオフィスは他の人に明け渡します。配属される学生は途切れ、研究設備も維持できません。サバティカルを長期休暇だと勘違いしている人がいますが、これは長年背負っていた荷物を一度捨てて、未来に向けて旅に出ることなのです。

今月のメッセージを書いている間に、私の気持ちはだんだん固まってきました。よし、決めた。今年はサバティカルを取らせて戴きます。来週から、ボリビアに行きます。明日から、大学にも研究所にも会社にもセンターにも現れません。皆さん、後はよろしく。SK

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