2002年7月のメッセージ

どちらが相手を選んでいるのか?

大学のトップ30(21世紀COE)の話題が賑々しい。この審査でもって、大学(専攻)の国内の順位を決めることによって、大学と研究者を叱咤激励するつもりらしい。バカだなと驚く。大学のランクは、もともと国の政策で決まっています。日本の大学には競争する自由がありません。学科を作ったり閉じたり、学生や教官の定員を変えたり、教官の給料を変えたり、大学の場所を選ぶことができません。雁字搦めの規制の中には、本当の競争はありません。地方大学が都会の旧制大学に勝つことは、残念ながらあり得ません。地方は産業規模も小さく、若者人口も少なく、地方大学の教官は教育の負担が春会に高くて、研究をやるのは圧倒的に不利ですい。不平等な条件で競争をすることは不公正でしょう。大学間に競争はありません。

一方、研究者同志は互いに競争をしています。優れた研究がしたければ、地方より都会の大学、特に旧帝大に移るのがいいでしょう。どの大学に移れるか、それは競争です。旧帝大は大学院重点化を済ませており、教育負担が少なくて学生レベルが高くて、研究面積が広い。特に、首都圏の大学に移るのがいいでしょう。ほとんどの会議が東京であり、旅費と移動時間を大いに節約できる。人的交流と情報が、圧倒的に豊富です。だから企業も東京に移る。企業も受験生も、東京に集中する。地方より10倍から100倍、有利です。競争は規制下の大学間にはなく、研究者間にあります。研究者はより良い大学に移ります。より良い大学が日本に無ければ、欧米に移る。今やアジアやオセアニアにも、日本のトップ30より優れた大学がいくつもあります。

このままなら、いずれ大学にもイチロー・新庄現象が訪れます。それなのに、日本の大学や研究所の人事採用システムには危機感がみられません。大学が教官を選んでいるつもりでいます。研究者が大学や研究所を選んでいるのだということが、未だわかっていません。わかっていれば、大学トップ30なんて話は出てはこないでしょう。研究者のトップ30を選べばいい。くだらないプログラムの申請準備に時間を費やすことなく、世界に誇る研究と教育に情熱を捧げたいと思います。SK

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