2002年10月のメッセージ

少子化時代は来ない?

9月15日、敬老の日。新聞を見ると、75歳以上の人の人口が1千万人を超えたと ある。65歳以上はいずれ30%に及ぶ。高齢で仕事を持つ人は多くない。所得税は払わないが、年金はもらう。電車バスも映画も医療費も、割引か無料である。そのお金は、働く青年・中年が負担している。しかし、未来の納税者たる子供の出生率は 予想を超える速さで減少している。これから生まれる子供達は、かわいそうかな、生まれたときから数人の高齢者の生活費と医療費を負担し、さらに過去の高速道路建設の巨額の借金を生涯背負って生きる。これでは、アジアの国々のしたたかな政治と経済発展の中で、日本という国は無責任国家の具体例として破綻していく、....

とは、ならないと思う。

「日本人はそんなに愚かではない」とか言う精神論ではなく、数理学的に考えての結論である。単純な高齢者増加と少子化は訪れない。島に住むネズミの数は年間増加率aでもって増 えるが、ネズミが増えると食料が減り、その結果ネズミの数が減る。初期値と増加率 によって人口の変動はカオス化する。この話は、複雑系の科学で必ず最初に出てくる [1]。物事は線形システムの範囲を超えると、単調増加することはなくカオス化する。 1980年代、日本の株価は青天井で上がるように信じていた。突然バブルが崩壊し、みんなが大損した。人口が爆発的増加をしたときは、伝染病が起きたり戦争が起 きる。何年周期説などを信じ地震予知者の予想は、当たった試しなどない。

では、 急速に近づきつつある高齢者人口増加のバブルは、どうやって崩壊するのだろう?病気や戦争は、高齢者のみならず若者の人口も減るので、これらは違う。高齢者のみが減り若者が増えなければならない。世代間の戦争が起きるのかもしれない。階級闘争からイデオロギー闘争を経て、今は民族・宗教戦 争だが、次は世代間の闘いかもしれない[2]。戦争はいやだから別のことを考えてみると、何かの病気で高齢者が一斉に命を落とすか、一斉に国を離れるか。高齢者が一斉に子供を産み始めると考えるのが、愉しい。動物の最高の本能的幸せは、 恋愛と子育てではないだろうか。子供を産むことと育てることは大変なエネルギーが必要である。高齢者は長生きができなくなり、子供の数は増える。予想できないからこそカオスだが、悲惨な結末でない未来を見つけたい。単調増加・単調減少でないことだけは、確かだろうと思う。SK

[1] 河田 聡「科学計測のためのデータ処理入門」CQ出版、2002)

[2] 村上龍一「希望の国のエクソダス」文芸春秋、2000年)

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