2015年6月のメッセージ

言い訳して得をすることはない

「○○ちゃん、そろそろゲームを辞めて勉強しなさい」

「今、勉強しようと思っていたとこなのに、、」

どこの家でもよく聞かれる子供と大人の会話です。言い訳をすれば子供たちは親に余計に叱られます。およそ言い訳をして得をすることなどないのです。子供たちは次第に言い訳は役に立たなくて損をするだけだということを学んでいきます。ところが最近、大人になっても言い訳を繰り返す人が多くなっていることが気になり始めました。これは日本社会の甘えの構造、もたれ合いの構造からきてるのでしょうか。

上司になぜ締切までに報告書を提出しなかったのかの言い訳をして、褒めてもらえることはまずありません。取引先のお客さんに納期までに納品できなかった理由を言い訳をしてみても、大変でしたねと慰めてもらえることはないでしょう。いろんな事情があって、努力したのに結果が出なかったことの悔しさの気持ちはよく分かります。だけど、言い訳することは信用を失い、軽蔑されるだけです。「百の言い訳よりも一つの実行」です。大人の世界は契約社会ですから、言い訳は有効ではありません。

学生には、言い訳することは得には決してならないこと、それどころか信用を無くして損を被ることになるのだということを説明します。しかし、言い訳する大人に対してはどう対応すればいいのでしょう。50歳にも60歳近くにもなった大人が言い訳をして、許し(excuse)を乞います。言い訳を聞かされた方は困惑するだけです。同情してほしい、あるいは慰めてほしいのでしょうか。言い訳が簡単に口から出てくる未熟な大人たちが増えているような気がします。

「言い訳はずるい」

のです。だから、言い訳は得をしないのです。あとで言い訳するのではなく、仕事を頼まれるときあるいは契約をするときに、できないことはできないと言いましょう。受けるなら、後で言い訳することのないように、事前に交渉をしておくのが良いと思います。

「明日までにこれをやってくれ」「いえ、やりません」「なんとしてもやって欲しい」「1ヶ月くだされば、しっかりと結果を出します」

「他に受ける人がいないから、是非あなたに頼みたい」「いえ、やりません」「どうしてもあなたに頼みたい」「3人、専任スタッフを用意してくれるならやりましょう」

事前に交渉をしておくべきです。それをせずに結果が出ずに後で言い訳するのはだめです。頼む側も頼まれる側も、後出しジャンケンは卑怯です。

先日来、地方議会の政治家たちが政務調査費の私的流用でマスコミに糾弾されました。言い訳をして相手を納得させることができた人は、一人もいなかったと思います。むしろ言い訳したことが致命傷となりました。政治家は常にマスコミの批判にさらされていますが、後になって言い訳した人はほとんど皆さん失脚されています。自殺に追いやられた人すら少なくありません。

毎日毎週、無意味で形式的な書類の提出要請がたくさん届きます。「今忙しくて書類を書く時間がありません」と言い訳の返事をすると、敵はこちらが暇になるまで督促を続けます。「私は研究と教育に専念したいので、書きません」と答えると、事務から「他の先生は皆さん提出されました。後は先生だけです」と言ってきます。このあたりから不毛な論争が始まります。「たとえくだらぬ書類であっても提出していないのはあなただけですよ」と攻めてきます。私の場合は言い訳をしません。迷惑メールボックスに入るようセットしておくと、そのうち督促のメールも届かなくなります。

言い訳はしないことです。言い訳は相手に軽蔑されるだけです。損はしても得になることは何もありません。

「忙しいんです」「ボランティアでやっているんですから」「情報が足りないんです」「前回にはやりましたよ」「私も一生懸命頑張っているんです」、、、、。

心当たりのある方、是非お気をつけください。無用な損をしていますよ。

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