2009年10月のメッセージ

もっと素直に、、、関空から飛行機に乗りたくない100の理由

関西空港が危機なんだそうです。国際線・国内線ともに便数が減り続けている上に、経営危機にあるJALが関空発着の便を半減させると発表しました。海外に行く便がどんどん減ってしまったので、私も伊丹から成田経由で海外に飛ぶことが多くなってきました。「伊丹空港から成田に行くのはけしからん」「伊丹空港を廃止せよ」と、芸能人の府知事さんが声高に言われています。

私は、素直に「伊丹空港から海外に行きたい」です。関空は、大阪の町からあまりに遠すぎます。海岸からもあまりに遠すぎます。なぜ、あんなに陸地から遠い海の中に、巨額の経費の掛かる人工島の空港を作ったのでしょうか。騒音対策のためだと言われていますが、それだけでしょうか。素直に考えて、あの空港はわざと町から遠くに作ったような気がしてならないのです。できるだけ遠くに作った方が高速道路は長くなり、地域振興になると考えたのではないでしょうか。できるだけ遥か沖合に作った方が、埋め立て工事で土木業者が儲かるからではないでしょうか。できるだけ工事費が掛かる人工島の空港を作りたかったのではないでしょうか。人の住まないところに途切れたままの高速道路を造ったり、必要性のない巨大なダムを何十年も掛けて日本中に造りつづけようとしたのと、同じ発想があったのではないでしょうか。

もし環境を言うのなら、野生動物の住む山を削りその砂で海洋生物の住む沖合の海を埋め立てたのは、それこそまさに地球環境破壊でしょう(このことは、2005年8月のメッセージ「お稲荷さん」や、2005年10月の「万博・反博」でもで詳しく書きました)。一石二鳥とはまさにこのことで、山と海の野生動物や植物を一度に大量に殺すことができます。伊丹空港の周囲に立ち退きを求めて伊丹を広げた方が、コストも環境破壊の少なかったことと思います。環境破壊は、人類の生存のためのどうしても必要である工事だけに、必要最低限に押さえるべきでしょう。ダム建設も空港建設も地域住民の要求を口実にして、必要以上の経費と破壊が行われています。

空港サービス・空港ビジネスは利用者がいて初めて成り立ちます。わざと不便なところに空港を作ったのは、利用者の希望ではありませんでした。大阪府の南部へと高速道路を延ばせて、その地域を活性化させて、都心部や北部との地域格差を減らしたいという、行政のご都合があったのではないでしょうか?地域経済は、この巨大なる土木建設プロジェクトからは大きな利潤を得ただろうと思います。漁業組合も、巨額の補償金を手に入れました。そして、利用者に不便な空港ができあがりました。府知事さんは熱心に、道州制や府庁移転や伊丹空港廃止などのプロジェクトを説かれていますが、これらは府民の声ではありません。府民が彼に共鳴したのは、選挙の時の彼の「子供達が笑う大阪にしたい」というメッセージでした。

関西空港の問題は、ダム建設に似ています。人類の、地球と自然に対する奢りの象徴です。自然を破壊し野生動物を殺してしまう土建事業に対して、人々はもっと謙虚になるべきだと思います。一度始まったら(あるいはできあがってしまったら)、巨大土建プロジェクトを自ら止めることができないというのは、悲しいことです。地元住民の利益のためにと言うセリフは、空々しく聞こえます。人間の環境破壊には、自然はかならず祟りで仕返しをします(2005年8月のメッセージ「お稲荷さん)。

需要がなくて便数が少ないというならば、ダム工事の見直しと同様にいっそ、関空もその廃止を検討してみてはどうでしょうか。乗客の乗っていない飛行機であっても飛ばすべきだと、府知事はJALに要求されます。これは無茶苦茶な議論であって、騒音と空気汚染とガソリンとお金の無駄遣いです。もっと素直に考えてみましょう。

フィンランドのヘルシンキ空港やシンガポールのチャンギ空港は関空より遥かに広く、遥かに多くの便数の飛行機が発着します。関西の人口は、フィンランドやシンガポールは実に6倍ですが(中国、四国の人も利用するとして)、関空には閑古鳥が鳴いています。大阪にはフィンランドやシンガポールよりもはるかに多くの数の大企業があります。日本は縦に長くて、新幹線で行ける都市は限られています。島国ですから、外国には鉄道では行けません。それなのに、関空からのフライトはがらがらです。

伊丹空港があるからではありません。伊丹があっても、関空は十分成り立つはずです。関空が、不人気なんです。利用者の便利のためではなく、役所の都合で作り、今なお役所の理屈で議論されている限りこの状況は変わらないでしょう。

私は関空に行くときは、いつも伊丹空港からバスに乗っていきます。そのバスの回数券が、今年、なんの前触れも説明もなく突然使えなくなりました。既に購入した回数券が、突然使えなくなりました。今まで片道1,700円、11枚の回数券なら1割引で、1,530円でした。残った枚数の回数券はこの割引額で払い戻しされます。回数券がなくなったあと、片道は1,900円に値上げされました。回数券と比べて24.2%の値上げです。往復割引(それも値上げ)はあるのですが、私は行きは関空発、帰りは成田着であることが多いので、使えません。

もし、他の公共の乗り物が、こんな値上げをすれば大騒ぎになるはずです。でも、関空ではこんなことは日常茶飯事なのです。別のあるときには突然、空港連絡橋の料金が土日に限り半額になりました。回数券を持っている私は、回数券ではほぼ倍払うことになるので回数券を払い戻してもらおうと交渉しましたが、完全拒否。1回でも使っているとダメだという理由で、倍額を払い続けました。

伊丹ー関空のバスの便も激減しました。電車に乗ればいいのですが、難波での地下鉄から南海電車の乗り換えは、地下から地上3階まで重い荷物を持って移動しなければなりません。南海電車は、関空まで29分と言ううたい文句で別料金のいる特急を走らせていましたが、いつの間にか40分を超えるようになりました。

関空関連のビジネスは、実は嫌々サービスしているのがよく分かります。役所が言うから仕方なくバスを走らせたり、いやいやターミナルビルを経営したり、いやいや飛行機を飛ばしているように見えます。だから、やる気がなくて利用者の利便に意識が回らないのでしょう。関空会社や府や国に対する不満が鬱積していて、利用客に当たり散らしているようです。

国際線は、成田から乗るよりも飛行機運賃が高い(ディスカウントの場合)にもかかわらず、機材は常におんぼろです。超多忙の私は長い時間の機内で、到着後の会議の資料作成などの仕事をします。しかし、関空からのフライトはビジネスクラスでも電源が付いていません。関空から飛びたくでも、サービスが足りないというか、サービスするのを嫌がっているようです。私は関空から飛行機に乗りたくない理由をリストアップしたことがあります。その数は100に及びました。ここで羅列するのは止めておきましょう。

日本の行政が、ありとあらゆるところで市民や国民の気持ちからと乖離してしまっています。そして、そのことを素直に「おかしい」と言える人がいなくなっています。この状況が少しでも変わっていくよう、しばらくは新しい政権に期待してみたいと思います。

58年待ち続けた新政権ですから、、、。

そう丁度、58年なんです。SK

追記:この原稿を書いたのは10月1日でした。それから半月ほど経って、はやり私が海外(サンノゼ)にいたときに、前原さんが羽田のハブ空港かを宣言されました。素晴らしい!成田もまた千葉県振興を目的とした政治的な空港でした。乗客にとっての利便を考えて造った空港ではありません。このような乗客無視の空港を作ってきたことには、素直に反省をするのがいいでしょう。50年も60年も掛けて完成しないダムも、治水でも利水でもなく、地方振興と土建業支援が目的でしょう。むしろ、その50年の間に洪水がないと分かっているのかもしれません。。SK

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