2022年3月26日に顔身体学領域主催サイエンスx哲学カフェ「身体x心=私?〜哲学の課題を心理学実験と対話から探る」が開催されました。
日時:3月26日(土)14:00 - 16:30
会場:日本科学未来館7階コンファレンスルーム木星
参加者:25名
・トーク(発表順)
河野哲也(立教大学)
田中章浩(東京女子大学)
・ファシリテーター
佐藤摩依(立教大学)
盛岡千帆(こども哲学おとな哲学あーだこーだ)
尾崎絢子(はなこ哲学カフェ)
このイベントは「わたしとは何か?」という哲学のテーマをめぐり,科学技術の1つであるVRを使用し,その体験を通して参加者全員でこのテーマについて話し合うというものでした。
初めに河野先生と田中先生から,それぞれ哲学と心理学の観点からの「身体」「自分」に関するトークを聞きました。続いて,板口先生が開発した「手の見た目が変化するVRプログラム」体験を参加者全員が行いました。このプログラムでは、自分の意志でヘッドマウントディスプレイ上の手を動かせるのですが、その際に手が大きくなったり、指の数が変化したり、肌の色が変わったりといった体験ができます。つまり、自分の手の見た目が突然変わるという,日常ではめったにない経験の一端を味わうことができるのです。この体験の直後には、参加者それぞれが「どの変化に違和感があったか?」というアンケートにシールを通して回答し「なぜそう感じたか?」を参加者とスタッフで話し合う場面もありました。
VR体験ができるのは同時に3名までなので、待ち時間に「ラバーハンド錯覚」や「顔の錯覚」を使ったミニゲームをすることで,「顔」「身体」について楽しみながら知ることができるようになっていました。
イベントの後半では、河野先生とファシリテーターのもと、3つの輪にわかれて哲学対話を行いました。最初は気軽に、直前に体験したVRプログラムの感想を言い合うことから始まり、やがて「身体」をテーマにした議論に突入して,参加者それぞれが考えを深めていきました。
私が対話の参加者の1人として感じたのは、結論を導かない機会の重要性です。話しながら、わかっていた(と思っていた)ことが余計にわからなくなるという感覚、うまくまとまらない自分の発言にフラストレーションを感じつつ、それが肯定される場であることの安心を得て、忙しい日常では得られない贅沢な時間を過ごしました。結論を導いてしまったら(要点を急ぐ世の中において)頭に残るのはその結論の数文字だけになりかねないからこそ、結論を出さないこの対話の時間が重要なのかもしれないという気づきを得て、哲学対話の自分なりの面白さを発見した気がしています。
(by H. Yamamoto, Tokyo Women's Christian University)