第7回『フェミニスト現象学入門』オンライン読書会
日時:1月22日(土)17:30–19:00
会場: zoomによるオンライン開催
参加者:約130名
講演者(五十音順):
稲原美苗(社会学)
髙木佑透(発達心理学)
オーガナイザー:中澤 瞳、小手川正二郎
哲学班を運営の中心とするイベント「『フェミニスト現象学』オンライン読書会」の第7回が開催され、約130人が参加しました。会は、まず講演者2人が自らの執筆した講読対象について概要を説明し、次にお互いへの質問と応答、最後に参加者からの質問、という順番で進みました。
会ではまず、『フェミニスト現象学入門』第13章「障害はどのような経験なのか?」の執筆者である稲原氏が、障害の個人モデルと医学モデルについて説明された上で、アブジェクションという概念を軸に、ご自身の経験も踏まえ、男性的・健常者的な生の世界がすでに記述され理解し合うことができる共通構造を持っているのに対し、障害者の経験や世界はそれとは大きく異なるため、理解することが困難になるということをお話ししていただきました。またその上で、既存のモデルに潜む男性的・異性愛者中心的・健常者中心的な見方を顕在化させるという点に、フェミニスト現象学の重要な役割があると指摘されました。
もう1人の登壇者であり、映画「僕とオトウト」監督であり発達心理学者の髙木氏からは、ご自身の映画活動・研究の動機のひとつとなっている、ご自身の弟についてのエピソードに始まり、様々なエピソードを通じて、当事者と非当事者を隔てる距離について、あるいは逆に、関係発達論等の考え方を利用して、当事者と非当事者の連続性ないし厳密な区別の不可能性を明らかにする新しいモデルについて、お話しいただきました。
質疑の時間には、現象学的還元の意義、当事者の不在性、エスノメソドロジーとの関係など、多岐にわたる質問が取り上げられ、活発な議論が行われました。
文字起こし原稿は以下よりご覧いただけます。https://drive.google.com/file/d/1Jp1YBVmUMtIS3H9nwtNhMLJtukyPsmis/view?usp=sharing
(by T. Yamashita, Keio University)