2019年9月11日、哲学班 河野先生企画によるシンポジウム『顔認知の発達と障害と』が日本心理学会第83回大会で開催されました。
▪日時:2019年9月11日 13:20~15:20
▪会場:立命館大学大阪いばらきキャンパス A棟2階:第7会場AC232
▪参加者: 80名 (内外国人参加者 5 人)
立命館大学大阪いばらきキャンパスで開催された日本心理学会第83回大会において、公募シンポジウム『顔認知の発達と障害と』が開催されました[企画者:河野哲也教授(立教大学文学部)]。話題提供者として、ジョナサン・コール先生(ボーンマス大学)と本領域から山口真美先生(中央大学文学部)が登壇されました。コール先生からは顔認知(顔をどのように見、動かし、感じるのか)とその障害についての多くの知見とそれらが個人のアイデンティティに及ぼす影響について、山口先生からは乳児期における顔認知発達過程の実験研究とご自身が経験された顔面神経麻痺について当事者の視点からお話しいただきました。指定討論者の稲原美苗先生(神戸大学発達科学部)とペキット・マイケル・ギラン先生(大阪大学)から寄せられたコメントとともに、フロアからも多くの質問がなされ、顔の社会的存在について多角的な議論が交わされました。
▪プログラム
司会 : 河野哲也(立教大学)
話題提供者 : Jonathan Cole(Bournemouth University)
話題提供者 : 山口真美(中央大学)
話題提供者 : 稲原美苗(神戸大学)
話題提供者 : ペキット・マイケル・ギラン(大阪大学)
▪企画の趣旨
本シンポジウムでは、顔の表情を失うメビウス症候群の専門家として著名な臨床神経学者であり、現象学にも詳しいジョナサン・コール氏を招いて、顔の表情の経験とその障害がどのように個人のアイデンティティに影響を及ぼすかについて議論する。山口氏は、顔認知の発達研究と自身の経験から顔の社会的存在について考察する。現象学者であり、障害学の専門家でもある稲原美苗氏とMichael Gillan Peckitt 氏がコメントする。
▪講演要旨
Face and Brain; from VIIth Nerve to Self.
Jonathan Cole
In this lecture I will consider various aspects of the neuroscience and phenomenological experience of the face. These will move from its work on its recognition, seeing the face, to its motor functions, moving the face, to the role of the face in the expression and experience of emotion, feeling the face. I will then consider briefly some work on face transplantation, changing the face, before concluding by giving some of the consequences of living with facial visible difference for a person’s sense of identity, being one’s face.
山口真美
顔は社会的な対象であり、他者とのコミュニケーションを成立させるため、また人間関係を支えるために欠かせない存在である。本発表では発表者がこれまで行ってきた、顔認知の初期発達過程の実験研究を紹介し、生後8か月頃に既に成人とほぼ同様の顔認知能力を備えていることについて解説する。さらに10年前に自身の身に生じた「顔面神経麻痺」について、当事者視点からの話を加えることにより、顔の社会的存在を浮き彫りにする。
(by M. Kobayashi, Institute for Developmental Research, Aichi Developmental Disability Center)