11月7日、 B01班を中心に、ソウル五輪シンクロナイズドスイミング銅メダルを獲得した小谷実可子・田中ウルヴェ京ペアをお招きし、公開シンポジウム「シンクロする身体」を開催しました。
日時:11月7日 14:00〜16:30
会場:東京大学駒場キャンパス18号館ホールにて収録した映像をライブ配信
参加者:183名
登壇者(敬称略):
小谷 実可子(ソウル五輪シンクロナイズドスイミング銅メダリスト)
田中ウルヴェ 京 (ソウル五輪シンクロナイズドスイミング銅メダリスト)
山口真美(領域代表・中央大学)
吉田ゆか子(東京外国語大学)
渡邊 克巳(早稲田大学)
司会:工藤和俊(東京大学)
指定討論者:大須 理恵子(早稲田大学)
本シンポジウムは登壇者のみが会場に集まり、その様子がインターネットを通じてライブ配信される形式で行われました。工藤和俊先生(東京大学)の司会進行で、領域長の山口真美先生(中央大学)より開会の挨拶が述べられた後、吉田ゆか子先生(東京外国語大学)、渡邊克己先生(早稲田大学)よりご講演いただきました。
吉田先生からは、バリ芸能の舞踏や合奏のフィールドワークの観点から共調についてお話いただきました。演技者、演奏者、そして観客が異なる役割で一つの場を作る「共にある身体」から、その過程を経て生まれる一体感「一つになる身体」がどのように経験され、社会に影響を与えるかについてお話いただきました。渡邉先生からは、これまで先生が行われてきた「無意識的な同調」に関する一連の研究についてご紹介いただきました。単純反応時間、指先の動き、力発揮で見られる無意識的な同調・役割分担を示した実験研究、センシング技術を使った選手・観客を含む集団の行動・認知・精神状態の見える化と集団パフォーマンスの最大化の試みをご紹介いただきました。
次に、シンクロナイズドスイミング・デュエット競技で活躍された小谷実可子氏・田中ウルヴェ京氏を特別ゲストにお迎えし、「シンクロする身体・シンクロする社会」というテーマで対談を行っていただきました。現役時代、身体、長所・短所、考え方まで異なるお二人が、完全なシンクロを目指して、その違いをどのように擦り合わせていったのかという経験をお話いただきました。動きを合わせるために多大なる努力をされてきたお二人ですが、小谷氏が一度だけ合わせる努力をせずに田中氏、そして観客と一体感を感じた試合があったそうです。その試合を田中氏が当てたことは、吉田先生・渡邉先生のお話にあった、選手・観客を含めた「一つになる身体」を確信させるものでした。
最後に、大須理英子先生(早稲田大学)を指定討論者として、吉田先生、渡邊先生が加わり、5人でのパネルディスカッションが行われました。小谷氏・田中氏の動きを揃える身体経験を始めとして、コロナ禍における同調圧力の功罪についてそれぞれの視点から活発な議論が行われ、シンポジウムを終えました。
今回のシンポジウムでは、フィールドワーク研究、実験研究、そしてシンクロナイズドスイミングのアスリートという様々な視点から、文化に根付くシンクロ、ヒトの様々な行動でみられるシンクロ、そして異なる身体をシンクロさせる難しさ・喜びについて興味深いお話をいただきました。特に、運動を合わせることに全力を尽くされてきた小谷氏・田中氏の身体経験のお話は非常に興味深いものでした。そして、新型コロナウィルス感染症の拡大により、ヒトとヒトの関わり合い方がオンライン中心になる中で、失われた空気や水などの媒介物、そしてそれを感じ取る身体の重要性について改めて考えるきっかけとなるシンポジウムでした。
(by K. Miyata, The University of Tokyo)