2019年9月12日、日本心理学会第83回大会に於いて、大会準備委員会企画シンポジウム『心理学における脳科学−基礎と臨床をつなぐfNIRS研究』が開催され、領域関係者が登壇しました。
▪日時:2019年9月12日 9:30~11:30
▪会場:立命館大学大阪いばらきキャンパス A棟2階:第11会場AN210
▪参加者: 80 名(内外国人参加者 ? 名)
日本心理学会第83回大会にて,日立製作所シンポジウム「心理学における脳科学―基礎と臨床をつなぐfNIRS研究」が開催されました。はじめに山口真美先生(中央大学),檀一平太先生(中央大学)からシンポジウムの目的やNIRSの特性,その利点についての説明がなされたのち,話題提供の先生方から,NIRSの特性を最大限に生かした具体的なご研究の数々を紹介していただきました。嶋田総太郎先生(明治大学)からは自己の身体感覚や他者を見ている際の脳活動について,皆川泰代先生(慶應義塾大学)からは他者とゲームを行う際や母子相互作用における脳活動について,本領域メンバーでもある小林恵研究員(愛知県医療療育総合センター発達障害研究所)からはADHD児の表情認知時の脳活動について,門田行史先生(国際医療福祉大学)からは臨床的な視点から病態や薬物の効果を可視化するという活用についての話題提供がなされ,様々な視点からNIRSの持つ可能性を感じられました。またシンポジウムでは日立製作所による実際の装置の展示も行われ,NIRSによる研究経験のない私にとっても理解が深まる機会となりました。
▪プログラム
・企画:日立製作所
・司会【敬称略】
山口真美(中央大学)、檀 一平太(中央大学)
・話題提供者【敬称略】
嶋田総太郎(明治大学)
皆川泰代(慶應義塾大学)
小林 恵(愛知県医療療育総合センター発達障害研究所)
門田行史(国際医療福祉大学・自治医科大学)
・企画の趣旨
これまで、心の機能の神経基盤について様々な脳計測技法で検討されてきたが、計測環境等の制約から基礎研究の脳科学的知見を臨床現場に応用する試みは未だ限定的であると言える。一方、近赤外分光法(fNIRS)は負担が少なく計測環境の自由度が高いことから、さまざまな環境や対象で脳活動計測が可能である。fNIRS技術を世界で初めて製品化した日立製作所を冠した本シンポジウムでは、4名の登壇者からfNIRSを用いた基礎研究・応用的研究を話題提供していただき、心理学の基礎研究と臨床現場を繋ぐ架け橋としてのfNIRSの可能性を提案したい。話題提供では基礎研究として、ラバーハンド錯覚・ロボットハンド錯覚などの自己身体認識に関する研究およびコミュニケーション時の2者同時計測実験(嶋田)、自由度の高いPCゲームにおける二者間の脳活動同期と個人内結合を検討し社会的信号に対応する脳機能結合を明らかにした研究(皆川)、応用的研究として乳児期の顔処理発達と注意欠如多動症の表情処理特性に関する研究(小林)、発達障がいの病態可視化や治療後の脳機能変化に関する研究成果を元にした、病院での行動療法やリハビリ治療、行政や教育との連携(門田)について紹介いただく。会場内に日立製作所のfNIRS装置を展示するとともに、シンポジウムの最後には登壇者との交流・日立製作所への質疑時間を設け計測原理から応用に至るあらゆる質問に対応する。
(by H. Yamamoto, Tokyo Women's Christian University)