2019年9月16日、領域共催による哲学班主催の国際ワークショップ『臨床神経学と現象学』を開催しました。
▪日時:9月16日(月)9:00ー11:30
▪会場:北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟5階W518教室
▪提題者:
Jonathan Cole(ボーンマス大学・プール病院)
柿木 隆介(自然科学研究機構生理学研究所)
河野 哲也(立教大学)
森 直久(札幌学院大学)
▪参加者: 11 人(内外国人参加者 4人)
臨床神経生理学者であると同時に、哲学的な現象学的身体論の専門家であるJonathan Cole先生(Bournemouth University)を招聘し、臨床神経学と現象学をテーマにしたワークショップが開催されました(共催:科学研究費補助金基盤研究(A)「生態学的現象学による個別事例学の哲学的基礎付けとアーカイブの構築」)。
当日は、河野哲也教授(計画班C01-P01代表・立教大学)が冒頭で、このワークショップの目的と意義についての発表をなされた後で、柿木隆介教授(自然科学研究機構生理学研究所)と森直久教授(札幌学院大学)が登壇され、それぞれの発表に対しCole先生からのコメントをいただき、哲学、心理学を中心に小規模であるがゆえに、濃密な議論を含むワークショップとなりました。
柿木教授の発表では、非侵襲性で、携帯性に優れた近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を利用することで、従来測定することが困難であった乳幼児の脳状態について計測することで、特に、乳幼児の顔認識についてポジティブな表情を認識する能力に対し、ネガティブな表情を認識する能力が低いことなどを提示されました。森教授は、記憶に関する研究を中心に、ひとの記憶が直接的な経験に基づくものと間接的な経験に基づくものとでは、一人称と三人称という異なる形式をとるということを示唆されました。
これらの発表に対し、Cole先生はそれぞれ臨床神経学的観点から、柿木教授には感情との関係で森教授には健常者と車いすの方の移動に関する自身のデータを利用しながらコメントをしていただくと同時に、山西大学(中国)から参加したJinchao Zhang、Jifeng Zhang、Yuxia Huiの三名からは、それぞれ身体性認知や文化的差異の観点からコメントがなされました。また、ほかの会場の参加者からも熱のこもった反応をいただき、少人数であるがゆえの利点を生かした有意義なワークショップとなりました。
(by S. Sako, Rikkyo University)