第2回『フェミニスト現象学入門』オンライン読書会
5月9日(日)に、第2回『フェミニスト現象学入門』オンライン読書会が開催されました。
・日時:5月9日(日)13:00 - 14:00
・会場: zoomによるオンライン開催
・参加者:約160名
・講演者(五十音順):
宮本優(フェミニスト現象学)
中村佑子(文筆家・映像作家)
オーガナイザー:小手川正二郎、中澤瞳
哲学班を運営の中心とするイベント「『フェミニスト現象学』オンライン読書会」の第2回が開催され、約160人が参加しました。会は、まず講演者2人が自らの執筆した講読対象について概要を説明し、次にお互いへの質問と応答、最後に参加者からの質問、という順番で進みました。
『フェミニスト現象学』の第3章「妊娠とは、お腹が大きくなることなのだろうか?」および第4章「なぜ月経を隠さなくてはいけないのだろうか?」の著者である宮本氏は、メルロ゠ポンティの「身体図式」という概念を用いながら、妊娠した女性の経験とその変容について、フェミニスト現象学の観点から考察されました。また、隠さなくてはならない身体現象と考えられがちな月経について、月経を社会から排除することは、女性の排除であるだけでなく、社会からの身体性の排除という面があるという考えを披露されました。
今回関連する文献として同時に検討した、『マザリング——現代の母なる場所』の著者であり映像作家・文筆家である中村氏は、ご自身の妊娠をきっかけに、宮原氏やご自身の母親を含む様々な女性へのインタビューによって書かれた同書について紹介する中で、子供という脆弱なものに向き合うことによって、弱さ一般への敏感さが得られるという体験や、予測不可能な幼児の振る舞いに付き合うことによって、自分自身の時間感覚もが、予見不可能性を持つように変容してしまうという体験などを紹介されました。
質疑の時間には、中村氏が沖縄では祭りの際にも月経中の人間が普段と変わらず祭事に関わることができるという例などを挙げ、月経を隠すという規範が文化的な排除の上に成り立つものであることを指摘されたり、宮原氏は、月経が女性のQOLを下げるという理由から月経を止める女性もいるというコメントに対して、月経が女性のQOLを下げるような社会になっていること自体が問題であり、人間の身体に技術的に手を入れる選択肢は広げつつも、根本的な問題として社会の枠組みを見直す必要があると指摘されていました。また他にも、多くの質問があり、活発な質疑が行われました。
文字起こし原稿は こちらからご覧いただけます。
https://drive.google.com/file/d/1d0YRhBZFQ9e7izL3Xa42OUG8iRp4E3x-/view?usp=sharing
by T. Yamashita (Keio University)