『フェミニスト現象学』オンライン読書会

4月7日に『フェミニスト現象学』読書会が、オンラインで開催されました。


日時:4月7日(水)18:00 - 19:00

会場: zoomによるオンライン開催

参加者:約130名

講演者(五十音順):

後藤絵美(イスラーム・ジェンダー研究)山本千晶(ジェンダー法学)


オーガナイザー:小手川正二郎、中澤瞳

哲学班を運営の中心とするイベント「『フェミニスト現象学』オンライン読書会」の第1回が開催され、約130人が参加しました。会は、まず講演者2人が自らの執筆した講読対象について概要を説明し、次にお互いへの質問と応答、最後に参加者からの質問、という順番で進みました。

『フェミニスト現象学』の第6章「どこまでがセクシュアル・ハラスメント?」の著者である山本氏は、大学でハラスメントに関する相談員としても仕事をされている経験を参照しつつ、当事者にとっても同定しづらいセクシャル・ハラスメントにいち早く気付き、相談・介入へと繋げていく制度作りの大切さについて話されました。また、言葉にすることの難しい経験を言葉にするという点で、セクシャル・ハラスメントという主題にとっての現象学の適性についても触れられました。

今回関連する文献として同時に検討した、『「みえない関係性」をみせる』の第8章「言葉が動くとき:『セクシュアル・ハラスメント』の誕生、輸入、翻訳」の著者である後藤氏は、エジプトにおける女性の性的被害と、「セクシャル・ハラスメント」をめぐる刑法改正に繋がる動きを主題とした映画「678」を取り上げながら、性的なからかいからレイプまでを含む、非常に意味の広い言葉として、「セクシャル・ハラスメント」に対応する「タハルッシュ・ジンスィー」というアラビア語の単語が使用されているという現象について話されました。

また、お2人の質疑などでは、エジプトにおける刑法改正ないし性的攻撃に対する罰則の制度化の動きは、日本と異なり、そうした攻撃がなされる場が路上や公共交通機関など、個人の繋がりが薄い場であることが関係しているのではないかという分析や、「どこからがセクシュアル・ハラスメントなのか」という(加害者になりうる人間が気にしがちな)問いに対して、セクハラという概念の使用は、性的攻撃を早期に言語化・発見し、制度的な対処が必要になる前に介入するために使用することのできるものであり、ハラスメントを認定して処罰するか否かという分水嶺として捉えることは適切ではないという助言がなされるなど、様々な有意義な議論がなされました。


文字起こし原稿は こちらからご覧いただけます。

https://drive.google.com/file/d/1MIyYyAX_xDIg-yXnVOMeRsj3FYlGU0a7/view?usp=sharing


by T. Yamashita (Keio University)