P-F 19

ミカが凪斗に問いかける


「ねぇ、さっきの子、凪斗にとってどんな人なの?」


「・・・友達だけど」


「・・・そっか、本当はもうちょっと後で言うつもりだったけどあんまり時間はないんだね」


「何を」


「ねぇ、凪斗、凪斗は天使族が幸せに過ごせる世界に出来るのが自分の死だったら受け入れてくれる?」


「受け入れるわけない、なんで種族縛りの他人のために自分が死ななきゃいけないの?」


「でも君が死ねば幸せになれる人は大勢いるんだよ、それでもだめ?」


「今までボクだって嫌な思いばっかりしてきたんだ、今は友達がいてそれから開放してくれようとしてるのに今死にたいわけないでしょ?」


「・・・そっか・・・」


ミカが凪斗を突き飛ばす


「痛っ!?え?」


「じゃあ、これはいったん没収ね」


「あっ!!返して!!」


ミカが凪斗の身分証を奪う


「これが無ければ君は何もできないただの人間だ」


「ねぇ・・・君が何でそれを知っているの?それはボクにとって大切なものなの!!!だから返して」


「返すわけないじゃん、だって俺だって君と同じなんだよ」


ミカが自身のペンダントを見せる
それは冠に対になった羽をかたどった物の付いたペンダントで、この状況下で見せられるということが何を表すかの理解など考えるより早かった


「大丈夫、毒が一番濃くなる君の誕生日までは生かしてあげるから、まぁその日はこれで殺しちゃうけど」


ミカが凪斗の身分証から武器を取り出し凪斗に向ける
使ったことこそないが、凪斗の武器は二丁拳銃だ
本来持ち主にしか取り出せないはずのそれを、ミカはいとも簡単に取り出した


「なんで・・・?ミカちゃん、君は何者なの?」


「はー、百合子も気づいてないみたいだし教えてあげる、俺ね」


ミカが自分の身分証をたたき翼を出す
と同時にその容姿はとても15歳には見えないような大人の姿になる


「10年前に行方をくらませた天使王なんだよね、君を作り出したのも俺だから感謝してよねー」


「作り出したって・・・」


「だって、うざいの!種族が違えば価値観も違うのにお手々つないで仲良くなんて無理でしょ、それでも仲良くしようっていうなら支配するものされるもので分けるのがいいじゃん、だから、毒で支配しようと思ったんだけどうまくいかなくてさー、結局歳月かけて熟成させるのが一番だってわかったけど、計画ばれて死神王と悪魔王にぼこぼこにされて逃げてきたってわけ」


「そんなの勝手だよ!!」


「みんな勝手なんだから俺だって勝手でいいじゃん、でも百合子も馬鹿だよねー、悪魔王のくせして俺に気が付かないなんて」


「百合子さんに」


「言ったらどうなるかわかってる?」


パキッ・・・
ミカの手の中の凪斗の身分証から嫌な音が聞こえる


「ひぃっ・・・!」


「・・・そう、それで良いの、俺もお前も今まで通り過ごす、それでいいの、それじゃあ、期日までよろしくね、ベノムキッズ」


「・・・ねぇ、一個聞いていい?」


「何?」


「なんで正体を表したの?最後まで待って不意を突けばもっと楽に計画を達成できたんじゃ・・・?」


「あー・・・だってさっきの子死神でしょ?それに死神王の息子も来てた以上俺が見つかるのも時間の問題、じゃあ接点のあるやつを脅すしかないじゃん、百合子にばれても同じようにするから、いい?君は人質であり最終兵器でもある、それを忘れないでね」


「・・・は・・・はい・・・」


「よろしい!」


ミカがペンダントをたたき元の姿に戻る


「あー・・・本当はこんな一回り幼い姿でいる気はないんだけどね、力も制御されちゃうし、でも可哀そうな子供っていうのはいつだって最も優先されるべきだししょうがない、これで女だったら最高なんだけど、まぁどれだけ身分証を改造しても性別は変えられなかったししょうがないか」


「・・・ドン引きだよ」


「ドン引き結構、どうせ死ぬような奴にどれだけ軽蔑されようともう関係ないしね、身分証がなきゃあんたも単なる雑魚、でしょ?」


ミカがそう言い残し部屋を去っていった


「取り返さなきゃ・・・何とかして身分証を取り返して逃げなきゃ・・・」


凪斗がつぶやいた