イブ過去編①

私の生い立ちって正直意外だと思う


私は元天使

ショートへアーに白いドレス、ピンクのリボン、なんていう女の子らしい見た目が特徴

でも性格は今と変わらず男っぽい

そんなのが天使時代の私

こう見えて寿命管理って言う上位の仕事はしていたんだ

そして当時の私には恋人がいた

名前は天子美咲、みーくんって呼んでるんだけどね

このショートヘアーはみーくんの「女っぽくないからロングヘアーは似合わない」のアドバイスの下やってみたんだ

そんな私が死神になるまでの話をするね

本当、どうでもいい話だけど


ある意味私は依存体質だった

毎日私にお金をたかって日々遊びまくっているみーくんを見て私は「この人私がいないと何もできないから」なんて思っていた

そんな認識が変わり始めたのは12歳のころ

ある死神と出会ってからだった


「・・・今月ピンチだなぁ・・・貯金崩しちゃおうかな?」


「あの男にそこまでする価値はあるのかい?」


「え?」


声をかけてきたのは茶髪にメガネをかけた冷たい目をした青年

私はむっとして言い返す


「当たり前でしょ!?私の彼なんだから」


「彼?彼氏の事?へぇ・・・君どう見ても小学生だよね?」


「小学生じゃない!中学生だし!!」


「親の金使って遊ぶとはいい度胸だな」


「自分で稼いでる!!」


「へぇ・・・そいつはすごいな」


青年は私がどれほどきつく言おうともすべての言葉に冷たい返事をした、私はますますヒートアップしていう


「何だよ!!何も知らないのにそんなこと言うなって!!」


「へいへい、わっかりました、でも君、そのうち後悔すると思うよ」


「こっ・・・後悔なんてしないし!!」


「そう、あんたがそういうならいいけどさ」


男はそう言い残し立ち去った

私は迷わずそのことをみーくんに話した


「ってことがあったんだけどどう思う?」


「人の恋路に口出しするなんてよほどのおせっかい焼きだろ、気にすんなって」


「だよな!!」


私はその時満足げに笑っていたのだと言う

あとで友人に聞くとそう答えた

そしていつもの請求


「そうだ伊吹、自転車買い変えたいから金」


「えーごめん、今月ピンチなんだ、だから来月まで待って、ね」


「ったくしゃーねーな、分かった待ってやるよ」


「ありがとみーくん、その代りその1ランク上の買ってあげるね」


「まじで!?よっしゃ」


私はそれで満足だった

天使たちは彼氏がいるかいないかで立ち位置が変わるぐらい早く大人になることに敏感だ

だから満足だった

そして私はいつもの公園で会計をする

自分の今あるお金と次の入る給料の計算だ


「どうしよう・・・お姉ちゃんと久美の出費考えると来月足りない・・・あ、私の食費押さえればいいのかな?」


「ったく、育ちざかりはちゃんと食べなきゃだめだぞ」


「わぁっ!?」


また声をかける青年

思わず驚いて声を上げる


「またあんた!?一体なんで私にそんなに絡んでくるの!?私が満足してるんだから良いじゃない!!」


「なんでだろうな?なんか君を見てるともうすぐ破裂しそうで怖いんだ」


「そう・・・まぁ忠告ありがとう」


「へぇ、案外素直なんだな」


「そうでもないし」


そういいながら私はその場を後にした

そして1か月後

案の定食費を削ったせいでかなりの空腹感を抱えながら私はその公園にいた


「はぁ・・・お腹空いた・・・でも頑張んなきゃ、今月はお姉ちゃんにも久美にもみーくんにも不便な思いさせちゃったんだし、でもお腹空いた・・・」


そこに漂ういい匂い

その青年が私に中に何か入った湯気の立つ袋を差し出している


「これ、俺のおごりだから食べなよ」


「いっ・・・いらない」


「育ちざかりは食え、それだけだ」


「そこまで言うなら・・・・」


その袋を受け取り開ける

中にはいちごミルクとほかほかの親子丼弁当が入っていた


「ちょっ!!冷たいものと熱いもの一緒に入れるなんて!!」


「やれやれ、次からは気を付けるって」


「次からって・・・次はないと思うけど」


私はいちごミルクを飲んだ

生暖かいいちごミルクのこの味を私は一生忘れないだろう

でも文句を言うのも悪い、ありがたくそれらを食べさせてもらった


「ごちそうさまでした、あとありがとうございました」


「お、ちゃんとお礼が言えるのか、えらいえらい」


その青年は私の頭をなでる

私は照れくさくてすぐに手を振り払う


「こんなのやって当然だよ!!むしろちゃんとお礼言えない方がおかしいし!」


「じゃあ俺からも言わせてもらうよ、どういたしまして」


「あのー」


「ん?」


「名前なんていうの?」


「俺の名前?あぁ光輝、浅羽光輝、君は?」


「伊吹、白亜伊吹」


「へぇ、じゃあイブって呼ばせてもらうよ」


「いっ・・・じゃあお前はミッキーだよ!!」


「おぉ、ミッキー上等、呼べよ」


この浅羽光輝、ことミッキーと話している時間は本当に楽しかった

種族の違いだとかそういうのはどうでもよかった

ただの仲のいい友達、気楽に話せる友達として私はミッキーが大好きだった

その一方でみーくんとの仲はどんどん悪くなっていった


「伊吹、お前最近公園で男と会ってるだろ?」


「え?うん、でもただの仲の良い友達、好きなのはみーくんだけだから安心して」


いつもの調子でそんなことを言った

でもこの日は違った、みーくんの天界武器である靴で思い切り蹴られた

そのまま吹っ飛ばされた私は壁に叩きつけられそのまま倒れて地面に激突した

激痛のあまり立ち上がれない私の髪をつかんで無理矢理顔を上げさせてみーくんは言う


「じゃあさ、俺以外の男ともう口きくなよ、約束破ったらまた蹴るからな」


「う・・・うん、ごめん」


でも私が男の人と口をきかなくてもみーくんの意味のない暴力は続いた

気に入らないことがあるとすぐに私に暴力をふるった

それでも私は自分が悪いと思って耐えてきた、あの話を聞くまでは


「ね・・・ねぇ天子、最近白亜さんにつらく当たりすぎだよ、もうちょっと優しくしたら?」


「あ?良いんだよ、どうせあいつ搾取用のサンドバッグだし」


「そんなの酷いよ!!だって白亜さんは」


「ノンノン凪斗、世の中支配したもの勝ちだぜ、お前だってそうだろ?」


「別になるべきして上の方に立っただけで別に支配欲があってなったわけじゃないし・・・」


「でもま、そういうこった」


気づくと私はその場から走り去っていた

どこへ行くわけでもないしただただその場から去りたくて走っていた

無意識に走ってたどり着いたのはあの公園


「ミッキー・・・・」


出た言葉はそれだった

呆然と立ち尽くしていると私のところだけ止む雨

振り向くと私をかさに入れてくれているミッキーがいた


「・・・大丈夫?」


「ミッキー・・・」


それからのことが覚えていない

でもミッキーに泣きながら事柄を話した気がする

ミッキーは何も言わずにただ相槌を打ってくれた

そして私は、みーくんと、いや、天子と別れる決意をした