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事件収束から1カ月、凪佐は母親の同意のもと凪斗と二人で暮らすことになり凪斗は凪佐との生活を楽しんでいた
事件以降差別が以前より緩和されたことにより、どの町にもいろいろな種族が入り乱れ、壁を感じずに人々は日常を生きようとしていた
BridgeHeavenlyはと言うと、全員でライブを台無しにした件に関し頭を下げその時の客を最後のライブに誘うことを決め解散を決定した
その理由は一つ「差別をする人がいなくなったから」
バニーJは芸能界を引退、キャットCは元々やっていたモデルへの転身、シープKは新たにアイドルとしての活動をしていくことが決定した
以前との一番の違いは、全員種族を明かしたところで大きな問題にも差別の対象にもならなくなり、夢見ていた両親との生活が可能になったことだ
代表的な王様が一人になったことにより、異種族間での結婚が可能になったため離れざるを得なかった家族たちはようやく巡り合うことができたのだ
ミカは不貞腐れたような顔で面会に来た凪斗を見つめる
「この裏切り者」
「裏切るも何も初めから仲間じゃないし」
「あー、はいはい、分かりましたよ、俺が悪かったです、それで何しに来たの?まさかこの秘密公開ババ抜きをしに来たわけじゃないよね?」
「え?そうだけど」
「なんで!!!俺お前のことあんなひどい目に合わせてきたのに!!!はっ・・・まさか仲良くなって油断させたスキに殺す気・・・?」
「やめてよ、君じゃあるまいし」
「じゃあ何?」
「君のわがままにつきあるような友達はボクだけでしょ?だから退屈しのぎになってやろうと思って」
「・・・この性悪」
「そりゃどうも」
「紫苑からの差し入れのミント味チョコいる?」
「いらない・・・はぁ、あのクソガキ本当チョコミント好きだよなぁ・・・大袋のチョコ買ったときにミント味いらないからあげてたらあの年で中毒になりやがって・・・」
「事の発端は君か、紫苑のお父さんあげたことないのにチョコミント中毒になってびっくりしたって言ってたよ」
「あぁ、まともに仕事してた頃に紫苑職場によく来てたからね、百合子と一緒にいろいろお菓子あげてたんだよ」
「そんな仲なのに紫苑のお母さん殺しちゃったの?」
「言い訳にしかならないけど、あれは部下がやったんだ、俺は殺す気はなかった、紫苑の件も同じ・・・」
「・・・そんなミカちゃんに朗報です、紫苑、解毒剤の効果が出て体調回復に向かってるって」
「え?本当に・・・?」
「うん、もう走ったぐらいじゃ血吐かないって、ただ売られた喧嘩をすぐ買うって問題は発生して彼の父はまだ胃が痛いって」
「あぁ・・・ちょっと体弱いくらいでちょど良かったんだなあの子は・・・」
面会を終えると面会室の外で待っていた紫苑が凪斗に声をかける
「どうだった?」
「相変わらずかな?まだ全然殺意が消えてない」
「はー・・・まともに更生してくれるなら天使王の立場は返す予定なんだけどなぁ」
「え?そうなの?」
「うん、だってもともと死神王の跡を継ぐために死神族の勉強しかしてなかったから天使族の知識がないし、今から勉強しても違う気がするし」
「あぁ・・・それに死神王の跡取りがいないわけだもんね」
「まぁ・・・種族を変えられるのは一生に一度だけだから今後どうしていくかは考えなきゃだけど」
「・・・ねぇ、本当に後悔してない?」
「・・・正直、手段があるのならほかの手段を取りたかった、だけど結果的にどうにかなったのなら、もう何も考えないよ、じゃ、これから会議があるから」
「うん・・・」
凪斗が紫苑と別れ自宅へ戻ると凪佐が雑誌を開き見せる
「見て見て!!!ブリヘブは解散したけどシープKが香澄と一緒にアイドル活動するって!!信じられる!!俺たちの妹がだよ!!」
「え?すごいね」
「香澄、あの事件を絶対に風化させたくないんだって、だからアイドルとして一生そういう立場を背負うって」
「またそれはすごい覚悟を・・・」
「うん、でもその覚悟があったから事件は収束して二度と差別も怒らないようになるんだと思う」
「・・・それより約束遅れちゃうね」
「うん、そろそろ行くよ」
二人は走り出した、助けてくれた友達、守りたかった子供の下へ