P-F 27

凪佐が研究室で注射器を受け取る
素人にも扱いやすい形状になっており、力強く押し込むだけで薬品が注射される形状だ


「これは?」


「解毒剤、これを君のお兄ちゃんに注射して、かなりギリギリになったけど完成したんだよ」


「え?でも紫苑は・・・」


「紫苑にも効果は見られてるよ、だけどこれは君の抗体から作られてる、だからきっと無力化・・・そこまで出来なくても弱体化はできる」


「・・・分かった」


「でも気を付けて、注射は2本しかないから、落としたり盗まれたりしたら終わるよ」


「分かりました」


凪佐が注射器を受け取ると一本をベルトのホルダーに、もう一本をメンズスカートの下のホルダーに入れると待ち合わせ場所へと向かった
待ち合わせ場所で落ち着かない様子でうろついているとしばらくして霧斗と凪斗がゲートをくぐる


「凪斗!!」


「凪佐・・・!」


「感動の再開はあと、それより凪佐、解毒剤は?」


「あ、うん・・・これ」


「じゃあ急いで打って」


「分かった」


凪佐がホルダーから取り出した注射器を凪斗の腕に向けるとどこからか飛んできた銃弾によりそれは阻止される


「うわっ・・・」


「大丈夫!?」


「傷はないけど解毒剤が・・・」


「させないよ」


香澄が再度銃を構えて言う
霧斗が二人をかばうように立ち、武器である手品道具を構える


「なんで分からないの!?あんたが誕生日に死んでくれれば天使族の幸せが約束されるんだよ!!それなのになんであんたは・・・」


「天使族だけが幸せな世界なんていらない!!」


「うるさい!!あんたが完成するまでどれだけの天使族が!!生き物が!!!犠牲になったと思ってるんだ!!!役目を全うしろ!!!松葉凪斗!!!」


怒りのまま銃を放つ香澄、霧斗がとっさにトランプでバリアを張り難を逃れる


「何?何・・・!?」


「二人とも、ここはボクに任せて行って、あの二人ほどじゃないけど足止めはできるから」


「でも」


「行って」


「・・・分かった」


「凪佐・・・?」


「でも、絶対負けるなよ」


「もちろん」


二人が走り出す


「なっ!!待て!!!」


霧斗がボールを投げる、地面に当たるとそれは煙を出しながら砕け散る


「はい、君の相手はボクだよ、あの二人には指一本触れさせないからね」


「なっ!!生意気な・・・」


「じゃ、行くよ」


霧斗がトランプやボールを投げるそれらは地面に落ちると次々とカラフルな煙や発砲音を放つ香澄がそれに動揺したかのように銃を乱射する


「人がいなくて良かったけど、人がいたら大問題だなぁこれは・・・」


「あんたが大人しく打たれていればいいのよ!!」


「嫌だよ、痛いのが好きな奴なんて誰もいないからね」


「そこか!!!」


声のする方を目掛け香澄が銃を撃つ
その球は霧斗の手の甲をかすり出血する


「痛っ・・・」


「あっははは!!そっちか!!!次は当ててあげる!!!」


「残念、こっちでした」


霧斗が後ろから香澄を抱きしめるように銃を構えた手を覆う


「なっ!?なんで!?」


「ボクの武器は手品道具だからね、殺傷能力こそないけど人をだますことは簡単にできるよ、って言うことで瞬間移動マジックでした」


「クソッ!!!」


香澄が銃を放つがそこから出てくるのはパーティークラッカーの中身のような紙吹雪やテープだ


「・・・は?」


「えーっと・・・これも手品・・・君の本物の武器はこっち」


帽子から身分証と銃を取り出すともう一度その中にそれらを入れ被る


「返して!!」


「はい」

霧斗が帽子を脱ぎ帽子をひっくり返すとそこに銃はなかった

「え?え?えええええー!?」


「えっと・・・マジック大成功、凪斗の誕生日が終わったら返すよ」


「何よそれ・・・ボクを役立たずにしないで・・・」


「・・・」


霧斗が微笑んで言う


「しないよ、だから安心して」


「どうやって・・・」


「それは・・・これから考えるよ」


「・・・はぁ・・・ボクもやっぱ凪斗の兄弟なんだな・・・あんたのこと嫌いになれない」


「そう、じゃあ、大人しくしてくれる?」


「・・・分かったよ、負けは潔く認める」


「あぁー・・・良かった、実は致命傷にならない程度に弾丸食らっててすごい痛い・・・」


「はぁ・・・無理しやがって・・・」