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桜の花びらも満開になりつつあるころ
伊吹はその日学校の帰りで、小さな天使を保護していた
「・・・何で私こんなことしてるんだろう?」
「うるさーい!!俺っちを家まで運べー!!!」
「うん、もうちょっとしおらしくしてくれてたら私も喜んで運んだよ、でもここまで生意気なこと言われて「わーい運ぶ運ぶー」なんて言えないよ」
「とっとはこべー!!」
伊吹がその子を運びながら言う
会話は大体その子が文句を言い伊吹がそれに淡々と返事をしているだけだ
そこに近づく誰かが走ってくる足跡
その足跡の主の体当たりを伊吹が避けるとその主は盛大に転んだ
「あ、香澄ねーちゃん」
「・・・誰?」
「死神族が天使族に触れるなんてなんてこと!!誘拐したんでしょ誘拐!!!」
「するわけないでしょ、そんなデメリットしかないこと・・・でもま、この子引き取って家に帰してくれるんなら願ったり叶ったりだね、はい」
伊吹がその子を香澄に渡す
「新子ー!怖かったでしょ?もう大丈夫だからね!!」
「全然怖くなかったよ!!もしなんかされそうになっても俺っち最強だから倒せちゃうもん!!」
「そっか、そうだよねー!」
そう会話する香澄の羽を見て伊吹が違和感を感じる
「・・・君、左右で羽の色変えてるんだ、天使族なのに珍しいね」
「!!うるさいっ!!死神族が口出すな!!」
香澄がそういうと新子の手を引いて行ってしまう
伊吹が考える
「左右で羽の色が違うことに対してあの反応?別にいいけどなんか引っかかるな、野生のカンがささやくってやつかな?」
「イブ、どうしたの?」
「霧斗くん・・・実はさっき保護した天使族のお迎えの子左右で羽の色が違ってね」
「へぇ・・・天使族って白い翼に異常な執着見せるのに珍しいね」
「ってなわけでつけてみよう」
「イブのそういうところも大好きだよ!」
イブと霧斗の2人は新子と香澄の2人を観察し続けた
2人はファミレスで軽食を済ませ同じ孤児院に帰宅した以外怪しい様子はなかった
「うーん・・・この程度じゃ分かんないかーいっそもっとストーキングするか?」
「イブ、それは捕まる」
「んー・・・じゃあ私のストーカーに依頼するか・・・」
「え?」
イブが手紙を書きながら言う
そこには「七島桜へ 今日追いかけていた子の情報を手に入れたら私物を上げる 白亜伊吹」と書かれていた
「あの・・・イブ・・・これ・・・」
「あぁ、あとはこれを地面においておけば回収して調査してくれるよ、天使なら天使同士のほうが怪しまれないでしょ」
「って言うかこの子・・・」
「天使やめる前からのストーカー、どんなにぼこってもずっとついてくるからもう利用しようって思うようになったの」
「うっわー・・・ポジティブー・・・」
そんなイブの携帯に一件のメールが入る
その内容は純からで「お休みできたから明日会えない?」という内容だった
二つ返事でOKを出すと、伊吹は翌日に備えコンビニへと向かった
「おっじゃましまーす!」
純の声が伊吹の部屋に響き渡り迷うことなくソファへダイブする
伊吹が玄関のカギを閉めながら声をかける
「急に休みなんてどうしたの?」
「メンバーと酷いケンカしちゃってさ、正直ちょっと仕事どころじゃないんだよね」
「えー・・・大丈夫なの?それ、この前だってケンカしてたじゃん・・・」
「へへっまぁね、でもまぁ名声と地位を手に入れなきゃいけない理由はお金儲けじゃないからね」
「・・・でもあんたがやろうとしてることは、名声と地位を利用して差別をなくすことでしょ?どっこいどっこいじゃない?」
「まぁね・・・でも、ボクはよりお金の手に入る仕事よりもより知名度を上げる仕事がしたいのさっ!」
純が笑いながら言う
「ったく、ほら、お菓子」
「サンキューイブー」
2人がお菓子を食べながら話す
大半は女の子特有の他愛のない話だ
「どったの?今日元気ないね」
「んー・・・実は松原香澄って子の事探っててね、あまりにも怪しくて私どうしていいのか」
「ふーん、そんなに怪しいの?」
「うん・・・凪斗くんと容姿がそっくりなんだけど凪斗くんは別にいて羽の色が左右違って・・・」
「まぁ確かに不思議っちゃ不思議だね、でもイブがそんなに引っかかるなんて、嫌な感じだね」
「わかんないけど・・・なんかものすごく大変なことになる気がするんだ・・・」
「ふーん、なるほどね、こっちもなんか探ってみるね」
「え?探れるの?」
「まぁね、こう見えて先輩からはめちゃ好かれてるし人から情報聞き出すのは簡単だよ、噂話みたいにして聞けばあっという間さ!」
「ありがとう!協力して!!」
「OKOK!」
そこにかかる一本の電話
「何?謝る気になった?・・・・あぁ、そう、分かった、じゃあ明日」
「メンバー?」
「ううん、マネージャー、明日会って話したいことがあるって」
「ずいぶん改まってるね・・・」
「ああああ・・・解散とかだったらどうしよう・・・ハーフ集めるなんて無理だよ・・・イブ、そうなったらボクと」
「いや、無理だから、私リズム感無いから」
「ざんねーん・・・イブってこんなに美少女なのに・・・」
「そういうあんたはその容姿でよくアイドル出来るよね」
「それは言わないで!!」