P-F 23

凪斗が本を読む


「もうあきらめてくれたんだね」


「・・・そりゃあ、身分証を人質にされたんじゃね」


「どっちにしろ死んじゃうのに?」


「君がボクを殺さないことにかけてるから」


「あははは、それはないかな?」


「でもボクはボクが死なないほうにかけてる」


「ま、せいぜい頑張りな、これが俺の手元にある限りお前創造世界に帰ることもできないんだから」


「・・・分かってるよ」


凪斗が本を閉じ言う


「でもなんで君はほかの種族を天使族の奴隷にしようとしてるの?ただ鬱陶しいだけなんて納得できない」


「・・・しょうがない、もう2週間の命と見込んで教えてあげる、なんで俺がここまで天使族だけが有利な世界を望むのか」


「うん・・・」


「本当に鬱陶しいから、ただそれだけだよ、俺さーお前が思ってるよりもずーっとわがままなの、自分だけが楽しい世界が良いの、だってずっとそうやって育てられてきたんだもん」


「はぁ・・・?」


「あー・・・凪斗は親じゃなくて色んな人が育ててるもんね、うちの親、気に入らないことがあると本気でたたいて言うこと聞くまでひどい目に合わせてきてさ、泣いたら泣き止むまで殴る蹴るの暴行加えて気を失うこともあったよ、ってことはさ、大人になったら同じことして良いってことじゃん?」


「なんでその思考に行ったの!?」


「え?だって子供だからそういう目に遭うんでしょ?じゃあ大人になったら自分がする番じゃん、じゃなきゃ不公平だよ」


「そうだとしても」


「やばい奴が権力を持ってしまった、これが全ての発端であり真相だよ」


「・・・もういい分かった」


「じゃ、くれぐれも秘密を話さないでよ、じゃないとこれ砕くから」


「・・・分かってるよ」


凪斗が身分証を凝視する
ミカはそれを見て満足げに笑うとその場を後にした
そんな凪斗の部屋に一枚のメモが入る


「・・・これは?」


メモを開くとそこに書かれていたのは霧斗からの手紙だった


「もし身分証を奪われているのなら、この手紙を燃やしてほしい、奪われていないのなら何かを折って窓際において・・・?」


凪斗は素直に従い手紙をコンロで燃やした


「凪斗?何燃やしたの?」


「詩だよ、後で発見されて発表された日には死んでも死にきれないからね」


「なるほどね、黒歴史処分、いい考えだと思うよ」


ミカがその場を後にする


「・・・あきらめるのはまだ早いね」


凪斗がつぶやいた
霧斗が窓際に様子を見に来るとそこに折られた手紙は置かれていなかった


「・・・やっぱりか・・・」


そうつぶやくとバイト先に向かう
バイト先で真っ先にイブに言う


「イブの仮説は正しかったよ、やっぱ身分証取られてたみたい」


「それはまずいね・・・紫苑になんて言おう・・・」


「もう聞こえてる」


「わぁっ!!!」


紫苑がテーブルの下から顔を出し言う


「・・・そんなところで何してるの?」


「いや・・・飲もうと思った薬が落ちちゃって・・・喜ばしいことに解毒剤実験のおかげで回復はしてるんだけどね」


「そう・・・」


「なるほどね、監禁された状態でのそれじゃ動けないね」


「そうだね・・・」


「・・・あのさ、ちょっと相談乗ってもらっていいかな?」


「良いよ、何?」


紫苑がとんでもない提案をしたがために全員驚いたが、意思を尊重する方針を話した