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バニーJが楽屋でニュースを見る
そのニュースには凪斗の顔が映っていた


「この子何したんだろう・・・?にしてもすごい懸賞金・・・」


「そんなのどうだっていいでしょ、それより今夜のライブのこと考えて」


「あ、うん・・・」


そんなバニーJにかかってくる電話


「はいもしもし、どうしたの?」


『純・・・お願い・・・助けて・・・』


「イブ!?どうしたの?そんな息も絶え絶えに・・・」


『私はどうなってもいい・・・お願い・・・今日のブルーム館ライブで・・・今ニュースになってる子を守るように言って・・・』


「え?どういうこと!?」


『もしあの子が死んじゃったら・・・世界は天使族だけのものになってしまう・・・だから・・・お願い・・・』


奪われるスマートフォン


「勝手なこと言わないでくれる?どこの誰か知らないけど今日は私たちにとって大事な日なの!そんな一般人なんて守ってられないから!!」


「ちょっと輝夜!」


無情にも切られる電話


「何の電話か知らないけど、これに従おうなんて馬鹿考えないでよね」


「今のは親友からの連絡だったんだよ!あんな切羽詰まった声初めて聴いた・・・絶対何かあったんだよ!!」


「それが今日のライブと何の関係があるの?」


「ボク達は差別をなくすためのアイドルグループでしょ!?もしイブが言ってた子が守れなかったら差別社会に」


「別にいいよ!!頑張ったって差別なんてなくならない!!!だったらこのままトップアイドルでいる方が良い!!!」


「はい!喧嘩やめ!!本番に響く」


千鳥の一言で喧嘩が一時休止すると再度かかる電話


「イブ?ねぇイブ大丈夫?」


『あはは・・・初めて負けちゃった・・・でも大丈夫、最終手段は残ってるから・・・』


「どこにいるの?迎えに行くよ、って言うか手当も」


『・・・それをするぐらいならやっぱあの子を守ってほしいなぁ・・・誰かだけが幸せな世界なんて・・・誰も望まないでしょ?』


「そうだね!!!ねぇ、気を確かにして、頑張って!!!」


『大丈夫、一人じゃないし今手当受けてるから・・・とにかく、よろしくね・・・』


そういい終えると電話は終わった


「・・・どうしよう・・・」


迷う順に声をかける千鳥


「純ちゃん、純ちゃんのやりたいようにやればいいよ」


「でも」


「って言うか、俺のことを導いて、差別のない世界に、その決断がその子を助けに行くことでもライブをすることでも俺は恨まないし、真のファンなら分かってくれるよ」


「・・・ありがとう、ボク」


「お二人とも本番です」


「・・・とりあえず行こうか」


「うん・・・」


二人がステージへと向かう、指定の位置に立つと幕が上がりあたりは歓声に包まれ、一曲目を歌い終えると自己紹介が始まる


『おはようございます!バニーJです!!』


『こんにちは、キャットCだよ』


『こんばんは、シープKよ』


『今日は私達のブルーム館ライブに来てくれてありがとう!ネット配信のみんなも楽しんでる?』


『楽しんでないわけないわよねー?』


『じゃあ、次の曲行っちゃおう!みんなも大好きなあの曲だよ!!』


曲が始まるがバニーJの笑顔が徐々に消えていく


『こんなの違う・・・』


バニーJがつぶやき歌と踊りをやめる
そのことに気が付いたスタッフや観客はざわつきはじめやがてBGMも止まる


『あ・・・あれー?バニーJどうしたのかなぁ?振付と歌忘れちゃったのかな?』


『今・・・今よりもっと差別的な世界になろうとしてるのに、こんなのんきにブルーム館ライブ?ふざけんな!!』


バニーJが無線機を投げ捨て言う


『みんな聞いて!!テレビ中継で見てる人もネット配信で見てる人もみんな聞いて、私・・・ううん、ボクは死神族ですが天使族のハーフです、だからこれから天使族がやろうとしてる計画があって、もしその計画が成功したらみんな天使族の命令を聞かないと死んじゃう世界になっちゃうんだ』


バニーJがスタッフに向かい言う


『今流れてる人探しのニュース映像出して!!』


バニーJがそう叫ぶがスタッフはざわつくばかりで対応できない


『早くして!!!』


バニーJのその声でステージのスクリーンに走って逃げる凪斗と凪佐の姿が映るニュース映像が流れる


『これはボクの友達が教えてくれたことです、ボクは今からこの二人を助けに行きます、楽しみにしてた人はごめんなさい、だけど差別をなくしたくてこのグループを作ったのに、今差別社会が始まろうとしているのに行動しないのは違うと思いました、もしも・・・もしもこの考えに賛同してくれる人はどうか、どうかボクとこの計画を止める手伝いをしてください、この二人を・・・助けてください!!』


バニーJが深く頭を下げると機材を放り出し身分証を軽くたたき武器であるナイフを手に持ちステージから飛び降り走り出す
シープKがそれを止めようとするが、キャットCにそれを阻止される


「ちょっと、千鳥・・・」


「ごめん、俺も純ちゃんに賛成なんだ」


キャットCもお辞儀をすると一言添える


『払い戻しについては後日ホームページにて詳細をご確認ください』


そう言い残すとバニーJの後を追いステージから降りる


「もう!こんなの私が行かないのがおかしいみたいじゃない!!」


そういうとシープKも後を追った