06

日が昇り、三人はエリア移動のために走り出した

トラシーウィザードだけは箒に乗ってだったが


「ユキちゃん」


「ん?」


「箒目立つから悪いんだけど走ってくれない?」


「え・・・?それは無理」


「じゃあせめて目立たなくてはぐれないところで飛んで」


「はいはい」


トラシーウィザードが空高く飛び上がった


「ん・・・・?」


トラシーウィザードがかけていた眼鏡を外し目を凝らした

そこにはこの世界になじまないほど近未来的な建物が煙を吐きながら聳え立っていた


「あれは・・・・一体・・・・」


風向きが変わりそうつぶやくトラシーウィザードに煙がかかる


「っ!!エホッ!!ゲホッ!!あっ!!」


咳き込んだ拍子にバランスを崩しトラシーウィザードは箒から転落した


「うわあああああ!!!えっと・・・ウォーター!!ボール!!ビッグ!!」


そう叫びながら地面に水球をつくりその中にダイブした

泳ぐかおぼれるか分からない動きを繰り返すと水球から脱出した


「ユキちゃん大丈夫!?」


「はぁ・・・はぁ・・・・あ・・・」


トラシーウィザードがそのまま浅い息でクロに寄りかかった


「ユキちゃん?ユキちゃん!?どうしよう、ユキちゃん目覚まさない!」


「わっちが診察しんしょうかぇ?」


「え?」


二人の後ろには二人の少女が立っていた

年端もいかぬ幼い少女が1人と、明らかに人間ではない機械で出来た少女が一人


「えっと・・・あなたは?」


「わっちはDr.バルチャーと名乗っていんす、こちはエリクシル、わっちはエリと呼んでいんす」


「えっと・・・・私はクロ、それでこの子はユ・・・・トラシーウィザード、でこっちがシュンヤ」


「よろしくお願いしんす」


「アノッ・・・・宜しク・・・・」


「では、少々失礼しんす」


Dr.バルチャーがそう言うと意識の無いトラシーウィザードを診察し、カバンから取り出した注射器から薬品を注射した


「なっ!!ちょっ!!!」


「毒じゃありんせんので、心配しなんでくんなまし」


「ただノ体力回復ノ薬ダヨ、大丈夫」


「う・・・・」


トラシーウィザードが目を覚ました


「ユキちゃん!!おはよう」


「頭痛い・・・ってこれ誰?」


「あぁ、わっちはDr.バルチャーって名乗っていんす、これでも医者ざんすよ」


「にしても特徴的な言葉で話すね・・・」


「わっちが最初に覚えた言葉はこんな感じでござんす」


Dr.バルチャーが微笑んで言った


「それよりも、どうする?」


「どうするって何?」


「あそこに施設があった、あそこに行ってみたい」


「え?な・・・なんで?ユキちゃん」


「・・・・あそこからただならぬ魔力を感じた、ボクでも敵わないような強い魔力をね」


「基準がわかんないけど・・・・」


「えーっと・・・・」


トラシーウィザードがポケットから白い紙とペンを取り出しその上に魔方陣を書き込んだ

そこに箒の先を2回ほど当て、聞いたことの無い言語で呪文を唱えるとそこに炎が出現した

1つは水色に輝く少し大きめの炎

もう1つはカラフルに輝くかなり大きな炎だった


「ユキちゃん、これ何・・・・?」


「これ?これはね、特殊な炎の魔法、そこにいる人の魔力を炎の大きさであらわしてくれるもの、で、この水色の炎がボク」


「トラシーさんの炎・・・ずいぶんと大きい炎でありんすね」


「おかげで超病弱だけどね」


そうつぶやくと炎を見つめ続けていた

その様子をシュンヤはつまらなさそうに見つめる


「そう、だからこの炎の部分、色がやたらとカラフルでしょ?それに大きい」


「うん・・・・」


「だから一体何人ぐらいの・・・・どんな魔力の魔法使いがここにいるんだろうって思うと色々と不可解なことが多くて・・・・」


「同じ魔法使いとしては気にせずにはいられないかもね」


「それもあるんだけど何か・・・何か気がかりなんだよな・・・」


「何が・・・?」


「いや、この大会そのものが」


「え?」


「この間、殺さず生かした相手がどういうわけかバトラーに引かれてどこかに連れて行かれちまったんだよな・・・」


「でもそれって新たな対戦相手の下へ行ったんじゃ・・・?」


「・・・本当にそうだろうか・・・?」


「と・・・とにかくその場所に行ってみようよ!」


「あそこにいくためにはまず川を越えなければなりません・・・けれど川を越えるためには汽車以外方法はありませんよ」


「ボクは飛べる」


トラシーウィザードは箒を握り言った


「でもそれ三人乗れないでしょ?」


「それに二人追加!」


「わ・・・わっちは行く気無いでありんす」


「ワタシも・・・・」


「いや、全員行こう、何があるかわから無いし・・・・」


「絶対にあなた達を守る、だから、ね、お願い」


クロが必死にお願いした

Dr.バルチャーが少し迷う

耳に手を当て目を閉じていたトラシーウィザードが告げる


「ちょっと、空気を操る魔法を使って中の音を聞いたんだけど・・・実は機械音が滅茶苦茶多く聞こえたんだよね・・・そう、そこの君・・・エリクシルだっけ?みたいな音」


「エリ、あそこにいったらあなたのことが何か分かるかもしれないんすね」


「ソウ・・・・だネ・・・ワタシ行くよ!!」


「では、汽車の時間まであと30分です」


「・・・・・」


シュンヤの声と一瞬の沈黙


「それを早く言ってよおおおおお!!!!」


全員は全力疾走したおかげで何とか汽車の時間には間に合った


「はぁはぁはぁはぁ・・・・・」


「すいません皆様・・・そして病み上がりのトラシー・・・・」


「気にすんな、箒で飛んだから体力的にはそんなに削ってねえよ」


「ふ・・・・・?あー!!!!!」


クロが大声を上げすでに発射した汽車から窓から身を乗り出した


「なっ!!バカ!!!棗!!!お前自殺するつもりか!?」


それを抱え込むようにトラシーウィザードがクロを列車の中に引き寄せる

体格差のせいで二人そろって落ちかけたがなんとか持ちこたえた


「違うよ絵筆!!」


「絵筆?」


クロがポケットやカバンや帽子まであさりながら言う


「私の絵筆が無いの!!」


「でもあれそんなに重要なものなの?」


「重要も重要!!私あれが無いと戦えないよ!!」


「えぇ!?」


「どんな画材でも私の実体化能力はあの絵筆にしか宿らなかったの、だから本当に・・・・」


「分かったよ」


トラシーウィザードがドアを開けた

箒にまたがるとクロを後ろに乗せた


「じゃあボクと棗は絵筆拾ってから行く」


「本当ごめんね」


「いえ・・・・お気になさらず」


シュンヤがそう告げドアを閉めた



シュンヤが目的地に着くと大きなビルを見つめシュンヤが軽く微笑んだ

Dr.バルチャーはそれを見逃さなかったがそれ以上何も言わなかった


「それで・・・どこから入ればいいんでしょう?」


「ドアを壊せば・・・・」


「ア、ジャあ簡単デす」


エリクシルが大量の武器を取り出すといっせいにそれで壁を攻撃し始めた

あっさり壁に穴が開く


「開きマシた」


「そう・・・でござんす・・・・」


シュンヤが目を閉じ指を鳴らすと少し微笑んだ


「・・・・まぁ行くしかありませんよね」


「・・・・・・」


「エリ?何かあったのでござんす?」


「エ?あ・・・ナンでもないヨ!」


エリクシルがぎこちない笑顔でいった

シュンヤがまた微笑む


「あの・・・・シュンヤさん」


「え?あ、なんでしょうか?」


「先ほどから何を笑ってありんすか?」


「いえ、笑ってませんけど」


「そう・・・・でござんすか」