P-F 02

凪斗が病院に来て1ヶ月、凪斗は暇を持て余していた
学園であればせめて授業に参加は出来ていたしイベントごとにも参加出来ていた、今はそれが全くない
ただ週に一度血を抜かれ、結果を告げられる

『前よりも良くなっている』

と・・・
今日も今日とて談話室で凪佐と話し込んでいるが、凪佐が立ち上がった

「俺もう今日は帰らなきゃ、バイトの予定があるから」

「うん、分かった、バイバイ・・・」

凪佐が立ち去り、それと入れ替わるように現れた少年
手首に包帯を巻き、痛そうにそこを眺めている、凪斗はその少年を見た瞬間驚いていすから転げ落ちた
それに驚いたように少年が近づく

「え!?何!?君大丈夫?」

「君こそ大丈夫なの!?羽がないじゃん!!手首に怪我だってしてるし、何か大きな事故にでもあったの?」

「・・・へ?ううん・・・手首は確かにバイト中にひねっちゃったけど羽は生まれつき生えてないよ・・・だってボク死神族だから」

「しにがみ・・・ぞく・・・?」

「そう、死神族、地上に行ってさまよえる魂を回収してここに連れてくるのが仕事、まぁ・・・バイトの内容は人の誘導だったんだけど、突き飛ばされてそのままね・・・」

「へ・・・へー・・・死神族なんて初めて見たからびっくりした」

「え?何で?道を歩けば天使族も死神族も悪魔族も歩いてるのに」

「ボク生まれてからずっと天使学園に監禁されてて、そこから出られたと思ったらこの病院に連れてこられて・・・」

「天使学園って確か幼稚園から高校まで面倒見てくれる場所だよね?君そんなに頭が良いかお金持ちなの?」

「・・・知らない、聞いてもずっと王様の命令だって言われて・・・」

「・・・それってさ、君もしかしたら次の王様何じゃないの?だからそんな風に閉じ込められたんじゃ」

「面白い事言うね君・・・でも違うと思う、だって弟は一人家事をしない稼いだお金は全部自分に費やす母親背負って生きなきゃいけない、王様の子供なら弟だって同じように扱うべきでしょ?それに・・・」

「それに?」

「首にスタンガンなんかつけて監禁しないでしょ?」

「あっ・・・ごめん、色々聞いちゃって・・・」

「いいよ、どうせ暇だったし・・・あ、ボクは松葉凪斗、君は?」

「霧斗・・・皇霧斗だよ」

「ねぇ、もし罪悪感があるのなら、弟が来ない日にボクの話し相手になってよ、死神族の友達なんて初めてなんだ」

「それで良ければ、ぜひ行かせてもらうよ、あ、悪魔族に興味ない?先輩が悪魔族なんだ!」

「わぁ~!ぜひ会って話してみたい!!」

「じゃあ今度つれてくるよ」

「約束だよ!!」

その日から霧斗は凪斗のためにたびたび病院に顔を出すようになった
いつしか2人は何でも話せる間がらへと変化していった
それに比例するかのように凪佐が顔を出す頻度は減っていった

「凪佐・・・どうしたんだろう?」

「あぁ、弟くんだっけ?ボクくる頻度下げようか?」

「ううん、霧斗が来ない日も来ない日あるから多分関係ない・・・」

「ボクも一度話してみたいんだけどなぁ・・・弟くんと」

「うん、めっちゃ良い子だから話してみてよ!」

「楽しみにしてる」

その翌日、霧斗は病院の廊下で凪佐と鉢合わせた

「あ、もしかして君凪斗の弟くん?」

「そうだけど・・・誰?死神族が何の用?」

「ううん、ボク凪斗と仲良くさせてもらってるから君とも話してみたくてね・・・」

「はぁ・・・別にいいけど」

2人はカフェスペースに立ち寄ると、話し出す

「最近行く頻度が減ったみたいで、凪斗心配してたけど何で行かないの?」

「・・・何でそんな事あんたに話さなきゃいけないの?」

「まーまー、凪斗が好きな者同士ちゃんと話そうよ」

「別に凪斗が好きなわけじゃない、ただボクにとっての凪斗は世界のすべてだったって話」

「世界の全て?」

「だってあいつ超頭良いんだよ、全教科オール5は当たり前、それでいてスポーツ出来てよく分かんない事態に巻き込まれてる、そんな物語の主人公みたいなお兄ちゃん特別じゃないわけないじゃん」

「え?じゃあ何で」

「別の世界を知ったんだよ、凪斗だけに依存するわけじゃない、ほかに楽しい事もあるしわくわくする事もあるってそれでなんかこの脱走失敗して疲れちゃったのもあって・・・」

「なるほどね、でも寂しがってるみたいだしたまには顔出してあげてね」

「言われなくても、じゃあねー」

そういい残す凪佐だったが、凪佐が顔を出しにくる頻度が徐々に下がっていった



「霧斗くん、最近やけに帰るの早いけどどうしたの?私とのデートより大切な事なの?」

霧斗のバイト終わり、入れ違いで入ってきた長い茶髪の少女が問いかける

「イブ・・・いや、そういうわけじゃな・・・って言うかデートの約束してないよね?」

「うん、してないけど言うだけタダでしょ?」

「まぁ・・・この間行った病院で友達出来て、そのせいで兄弟と距離が出来て寂しそうにしてたから通うようになったって言うか・・・学園に監禁されててまた病院に監禁ってなると不憫だなぁって・・・」

「なるほど、そういう理由なら許す!」

「いや、許すも何もほったらかしにしてないよね?学校は同じだし・・・」

「ま、私だって友達と遊びに行っちゃったりするししょうがないよね、たまには私とも遊ぼうね」

「それはもちろん」

帰宅しようとする霧斗を呼び止める、少女のような可愛らしい容姿を持った少年

「あ、待って皇霧斗」

「どうしたの?紫苑・・・」

紫苑と呼ばれた少年は問いかける

「その子なんだけど、青髪に青目の天使族じゃなかった?14歳の・・・」

「年は分からないけど確かに青髪に青目の天使族だったよ・・・紫苑なんでそれ知ってるの?」

「まー、ちょっと調べてる事があってね・・・」

「ふーん・・・まぁ聞いても答えてくれなさそうだし、お先失礼しまーす」

「バイバーイ」

「・・・情報が向こうから来るなんて、ありがたい限りだね・・・」

紫苑が不敵な笑みを浮かべ呟いた