【20】
納得できるもんならしてみろ

「ほら見てよ。もうこの世界のほとんど、壊れちゃったよ」

「……そうだね」

「それで、お前は本気でここに来たら世界崩壊止められるとでも思ったの? 本気で勇者になれると思ったの?」

「うん」

「ばっかじゃねーの!! お前一人が来たところで俺が本気でやめるわけないじゃん!! って言うか、お前の事殺さないとその力俺の所に帰ってこないんだしさ!! そもそもここの参加者全員死んだって俺に支障ないんだしそりゃ殺すだろ」

「良いよ」

「はぁ!?」

クロがなんてことないように、淡々と言う。

「コハネさんが言ってた、『君の家族はもういないけど、君を思う人はいる』って。コハネさん、ユキちゃん……そして私もその一人。だから、殺して良いし、壊していいよ」

「はぁ!? お前何言って」

「分かるよ、辛いよね。世界から迫害されるのって、認めてくれる人がいなくなるのって。私もその辛さ……、全部じゃないけど知ってるから。シュンヤにこれ以上、『頑張れ』とも言いたくないし。現実の辛さも分かってる、だから壊したくなる気持ちもわかるよ……。だから、壊していいよ。私の事も殺して能力得て、それで納得できるなら、殺していいよ」

「……はぁー…………」

シュンヤは天井を見上げ大きなため息をついた。そして開き直ったような、気分が晴れたような顔で言った。

「そこまで言われちゃ、殺したいもんも壊したいもんも全部やる気失せるわ……。……分かったよ、クロ」

シュンヤはスイッチのついた、レトロな電子パーツを寄せ集めたガラクタのような機械をクロに投げ渡す。

「それ押したら全部元に戻るからさ、お前の手で終わらせてよ。このくだらない大会と世界をさ」

「……うん」

クロが躊躇いなくスイッチを押した。するとあたりが光に包まれ、徐々に世界が元に戻っていく。影たちも攻撃をやめ、敗北し殺害された参加者や、実験体にされた参加者たちも元に戻っていく。施設の扉が開き、収容されていた人物たちが歓喜の声を上げた。

「元に……戻れたの!?」

「ジャクリーン、すっかり元通りの綺麗な姿だよ」

「本当に!? ありがとう!!」

ジャクリーンがブレーズに抱きつきながら言う。その様子をキンバリーがほほ笑みながら見つめていた。

「はぁ……うまくいったんだな、あいつら」

戦い疲れあおむけに寝転がりながら、トラシーウィザードが煙草に火をつけ呟いた。トリックスターがそんな彼に手を伸ばし言う。

「お疲れ様」

トラシーウィザードがその手を取り起き上がる。

「ありがとな、それにしても……」

「ん?」

「空って、こんなきれいな色してたんだな」

「……うん、そうだね」

どこまでも広がる青空を二人はしばらく見つめていた。