04

シュンヤがクロに置いていかれてボーゼンとしているとシュンヤに声をかける人間がいた


「おいお前」


「え?はい・・・」


「お前、Mine Funeral参加者か?」


「だったら・・・?」


「ぶっ潰す!!」


「っ!!」


シュンヤが柄の悪い男に絡まれとっさに逃げ出した

曲がり角に差し掛かった際青い帽子を被った少年とすれ違う

少年は走り去るシュンヤを見つめながら


「・・・・見つけた」


とつぶやくないなやシュンヤの方を振り向いた


「痛い!!」


「へ?」


そしてシュンヤがずっこける瞬間を目撃した

少年が呆然と転んだシュンヤを見つめていると

そこにたどり着くガラの悪い男


「やっと追いつめたぜ・・・変な目の坊主」


「変な目?何のことですか?」


「ま、何でもいいけどお前弱そうだし俺たちのために負けてくれよな」


「っ!?」


シュンヤがガードの態勢に入ろうとした瞬間、男は手にしていたハンマーを振り下ろす

カァン・・・・・

何か硬い物にハンマーが当たる音がし、シュンヤがゆっくりを目を開くとそこには箒で攻撃を受け止める少年がいた

暗い青色の短い髪、薄い水色の瞳、病的に白い肌を持ちやたらと背が低い

少年がハンマーをはじくと男に強烈に人を見下した目を向けながら箒の先端を突きつけた


「名を名乗らずに人を襲うのはルール違反だぞ、このゲロ犬」


その外見からは想像もつかないような低いハスキーボイスが響き渡る


「なっ・・・なんだとこのガキッ!!」


男のこぶしは早かった

それこそ、普通の人間には避けられないようなスピードだ

けれどその少年はまるでゆっくり飛ぶ虫を避けるようにすんなりとこぶしをかわした


「なっ!」


「なんだ、所詮こんなもんか、まぁ、所詮ゲロ犬なんざそんなもんだな」


そうつぶやくと少年は男の方を向き冷たい視線のまま名乗る


「ボクの名前はトラシーウィザードだ、氷の魔法が主な攻撃手段だ」


そういうと手に握る箒の先端で地面を軽く叩いた

するとあたりに氷が広がり男の足を凍らせた

トラシーウィザードがシュンヤのほうへ振り向くと走りだしシュンヤの手をとった


「こっち」


「え?え?え?」


シュンヤは手を引かれるままに走った

ある程度走ると少年は足を止めた


「助けてくれてありがとうございます、俺」


「ゲホッ!!ゲホッゲホゲホゴホッ!!」


「え?だ・・・大丈夫ですか!?」


盛大に咳き込む少年の背中をシュンヤは優しくさすった

数秒その状態が続き、咳が治まると少年は顔を上げた


「で、お前大丈夫だったか?」


「はい、おかげさまで、あなたこそ大丈夫ですか?」


「いつものこと、慣れっこだって」


少年がそういうとタバコを取り出し咥えた

火をつけるものを探しているのかポケットというポケットを探る

シュンヤが驚いたようにタバコを取り上げる


「なっ!!何しやがるんだ返せ!!」


「子供がタバコ吸っちゃダメじゃないですか!!」


「良いんだよボクは見た目若いけど本当は23歳なんだからさ!!」


「それでも先ほどあれだけ咳き込んでいる以上は渡せません!!」


「チッ」


少年が舌打ちをすると箒を握り軽くシュンヤに当てた

するとシュンヤの身体が凍る

不思議と冷たくはなかったが身動きは取れない


「わぁっ!!何するんですか!!」


「人に指図すんな、これだって体に悪いからやってんだしな」


少年がそういうとタバコを奪い取りおもむろに吸いだした


「はー・・・・で、お前名前は?」


「シュンヤ・・・・」


「シュンヤか、日本人?」


「はい、えっと・・・あなたは?」


「え?あー・・・そうだな・・・ゆ・・・いや、ア・・・・あぁもう!!トラシーウィザードってことにしてくれ」


「長いですね・・・あ、トラシーって呼んでいいですか?」


「・・・・まぁ・・・好きに呼んでくれ、反応はするから」


トラシーウィザードがタバコを吸い終わりシュンヤの氷魔法を解除した


「そこまでしてタバコ吸いたいんですか・・・」


「そりゃな、ニコチン中毒なんざ簡単には抜けねえし、ましてやボクはヘビースモーカーだ」


「ヘビー・・・そうですか、もう止めません」


「あぁ、止めないのか、じゃあ実年齢言うけどボクは13歳だ」


「やっぱり引き止めて良いですか?」


「殺すぞ」


「ごめんなさい」


トラシーウィザードがため息をつく


「で、お前を助けた本題なんだけどさ」


「はい」


「秘密に差し掛かるから詳しくは言えねえ、でもなるべく少ない犠牲者でこのゲームを終わらせるにはお前が必要なんだ」


「え?俺が・・・ですか?でも何でそれが俺って確信を持てるんですか?って言うか秘密って・・・?」


「秘密ってのは、事前に配られるルールブックには載っていない、この大会を終わらせるための方法の事だ」


「え?そんな方法があるんですか!?ってよく見たらルールブック3に書いてありますね、それ関連の事・・・」


「あぁ、まぁお前が教わってないのは当然と言えば当然らしいけどな・・・それと、お前の判断基準は目、だ」


「目・・・?そういえばさっきの男も変な目だって・・・」


「なんだ、お前自分の顔見てないのか?」


「はい」


「んー・・・そっか、じゃあ顔見てみろよ」


トラシーウィザードがこぶしを握り開きながら手首をスナップさせ軽く振る

するとそこに小さな楕円形の氷が出現する、それを手に取るとシュンヤに側面を向けた


「ほら、即席だけど氷の鏡だ、そこまではっきり色は映らねぇけどまぁお前の色合いは何とかわかるんじゃね?」


「は・・・はぁ・・・」


ひんやりと冷たい小さな鏡を受け取るとシュンヤが自分の顔を見つめ、すぐに絶叫した


「なっ!なんですかこれ!?」


「うわっ!!!ってそれが普通の反応か・・・」


「俺の目どうなってるんですか!?なんでこうなってるんですか!?知ってることがあるなら教えてくださいよ!!」


シュンヤがトラシーウィザードの両肩をつかみ激しく前後に振る

途中で帽子が飛びメガネがずれたがお構いなしに質問をぶつけながらひたすら降る


「ちょっ!シュンヤ!やめっ!やめっ!・・・・やめろって言ってんだろうが!!!」


トラシーウィザードが思い切りシュンヤをぶん殴り荒い息を整える

小さなこぶしが鼻にクリティカルヒットしシュンヤが鼻血を出しながら顔を下げる


「あ・・・悪い」


「いえ、こちらこそ」


「・・・回復魔法かけてやるからこっち向け」


「はい」


トラシーウィザードがシュンヤの鼻を軽くつまみ、呪文を唱える


「血液、停止、回復・・・どうだ?落ち着いたか?」


「はい・・・でもこんなでテンパらないわけないでしょう!!だって目が!!」


騒ぐシュンヤに聞こえないよう小声でトラシーウィザードは言う


「・・・見えてりゃ色なんてどうでもいいだろ・・・体さえなんともなけりゃさ・・・こちとらあと1か月生きられるか生きられないかなんだぞ・・・」


「え?何か言いました?」


「とにかく、お前がゲームの鍵なんだ、だから出来るだけお前と行動したいんだよ」


「あぁ、それで俺に依頼を?」


「あぁ、だから手を貸して欲しい、嫌なら、無理強いはしない」


「えっと・・・」


「その代わりお前を殺してその力ボクが受け継ぐ」


「え?」


トラシーウィザードが真剣な顔でシュンヤに話した

シュンヤは少し迷ったがすぐに決断をした


「一緒に行動しているクロって女の子がいるんだけどその子も一緒なら良いよ」


「かまわない、お前が協力してくれるなら他は誰だってかまわない」


トラシーウィザードはそう言った

シュンヤは安心したように微笑む


「シュンヤ!!大丈夫だった・・・ってユキちゃん?」


「え?棗?」


「二人とも知り合いなんですか?」


「うん、大会開始前にちょっとね」


「へぇ・・・・」


シュンヤが軽く返事をした


「クロってこいつのことだったのか?」


「はい」


「なんだ、棗なら大歓迎だよ」


「え?何?ユキちゃん手組むの?」


「あぁ、ボクが探してたのってシュンヤだったからな」


「ふーん」


クロが興味なさそうに言う


「ただユキちゃんが他人に興味持つなんて珍しいよね」


「まぁな、棗こそ誰かと手を組むなんて思わなかったぞ」


「だよねー・・・」


「え?何?お二人とも一人好き?」


「んーまぁね」


「当たり前だろ」


「あー・・・」


シュンヤがやや困った表情を浮かべた


「つまりチームワークなんてしらないと?」


「うん」


「そうだよ」


「嫌なハモり方止めてください」


「あ、そういえば私は秘密1個知ってるけど、ユキちゃん秘密何個知ってる?」


「4つ」


トラシーウィザードが指を四本立てて言う

クロが驚く


「えええええ!?ユキちゃん4人も殺しちゃったの!?」


「バカ!!3人だ!!1つは最初から知ってた!!」


「え?え?え?」


「とにかく、ボクは正直無駄な争いは避けたい、殺した数は数え切れないけど・・・・それは殺されそうになったから殺しただけだし」


「トラシー・・・」


「・・・って棗怪我してるじゃん」


「え?あぁ、こんなのたいしたことないよつばつけといたら治るって!」


「ダメだ、傷のこったらどうする気だ?、治してたるから見せてみろ」


「・・・うん・・・」


「・・・・ケガ、擦り傷、回復」


トラシーウィザードがそうつぶやきながらクロの怪我に触れると、傷は跡形もなく消えた


「・・・さっきも思ったんですが、その3つの単語をつぶやくのが呪文なんですか?」


「あぁ、そうだよ、無くても良いんだけどこの方が魔力消費抑えられるからな、ただ言葉選びを慎重にやらないとうまくいかないこともあるんだ」


「へー・・・」


「じゃ、今日はもう寝床を探して寝よう」


「そうだね」


トラシーウィザードとクロが話を進めた

シュンヤはやや不機嫌そうにそれを見つめた