07

「やぁ、こんにちは」


絵筆を探すトラシーウィザードとクロに1人の男が声をかけた

二人はその声に振り向く

そこには銀色の髪をした赤いスーツ姿の青年が立っていた

神で顔半分と眼帯でもう片方の目が隠れているため顔がよく分からない


「えっと・・・こんにちは」


「君たちも参加者なんだよね?はじめまして、俺はトリックスター」


「トリックスター?神話におけるいたずら好きの二面性を持つ人物のことをさす?」


「そうだよ、それが何?」


「ずいぶんと変な名前だな」


「ふふっ、芸名だからね・・・・君たちの名前は?」


「えっと、私はクロ、でこっちがトラシーウィザード」


「毒を吐いた割には、君もつまらない魔法使いなんて変な名前じゃないか」


「良いんだよ、ボクは本当につまらない人間だから」


「ふーん・・・まぁいいけど」


「で、トリックスター・・・だっけ?何か用?」


「あぁ!そうだった!!クラウンヘッドっていう子を探してるんだ」


「クラウンヘッド?」


「あぁ!こんな子だよ!!」


トリックスターが取り出した絵は個性的過ぎる絵で到底それで人探しが出来るようなものではなかった


「うわー・・・」


「えーっと、特徴を言ってもらえる?私が似顔絵書いてみるから」


クロが苦笑いで言う

トリックスターが特徴を話し始めた

トラシーウィザードが耳に手を当て目を閉じたポーズでその会話を聞き流す


「テンションが高くて背は低めでジャグリングが得意で」


「えーっと、外見的な特徴を」


「あ、そっか、あのね水色の長い髪を二つ結びにしてて黄色とオレンジの服を着てるよ、帽子もそうかな?前髪で目が隠れてて」


「こんな感じ?」


クロが描いた似顔絵はそっくりだったらしくトリックスターがテンション高く絵を見る


「そうそうこんな子だよこんな子!」


「ごめん、見てない・・・・あれ?ユキちゃん?」


「ただいま、この子でしょ?」


トラシーウィザードが箒の後ろに乗せていたのはクラウンヘッドだった


「クラウンヘッド!!」


「トリックスター!!」


二人は再会を喜んだ


「ユキちゃん?どうやって・・・」


「風の魔法、音をここまで運んでもらった、ずっとトリックスターのこと呼んでたみたいだったからな、しかもその似顔絵そっくりだったし」


「魔法ってすごいね」


「万能じゃねえけどな」


そうつぶやくとため息をついた


「で、絵筆探し行くよ」


「あ、うん」


「絵筆?これのこと?」


クラウンヘッドが筆を差し出した


「あぁ!これこれ!!ありがとう!!」


「お礼を言うのはみーの方だよ」


クラウンヘッドが前歯を見せて笑った


「それに、対戦相手として良い人見つかったしね」


クラウンヘッドがクラブを取り出すとそれを構えた


「え?」


「?だってここはそーゆー場所でしょ?誰か一人になるまで戦いは終わらないんだよ!何仲良しごっこなんてやってんの?」


「あー・・・そういう展開か」


「うん!そぉいう展開だよ!!」


「今すぐダッシュで逃げ出して逃がしてくれる相手・・・」


「なわけないじゃん!!」


「だよなー・・・あのさ、棗って攻撃型?防御型?」


「どちらかというと防御」


「奇遇だな・・・ボクもだ」


箒を構えながらトラシーウィザードが言う


「わぁ、箒だぁ!しかも結構上質だね!ってことはゆー、結構魔力の高い魔法使いなんだね!んー・・・もしかして氷の王子様?」


「なっ・・・なんでそれを?」


「え?本当にそうだったの?じゃあゆーはアイスミストさんかぁ」


「鎌かけられたね」


「どういう意味?」


「相手に上手くしゃべらせて必要な情報を聞き出すってこと」


「え?じゃあだまされた!?」


「そういうこと、って言うかユキちゃん王子だったんだ、道理で世間知らずなわけだ」


「なっ・・・!!王子全員が世間知らずって思うなよ!!たまたまボクが」


「はいはい分かりました」


「ゆーを殺すのはもったいないから敗北ぐらいにして置いてあげる!」


「くっ・・・・」


トラシーウィザードがトリックスターを気にしながら言う


「棗、殺すまで行かないにしろ何とかして勝つぞ!」


「ユキちゃん!それより工場だよ工場!!シュンヤ達がまってる!!」


「わっ!!バカ!!」


「工場ね・・・・あそこか・・・・じゃあこっちは任せて言ってくれる?クラウンヘッド」


「うん、分かった」


「とにかくあっちはシュンヤたちに任せて何とかしねえと・・・あいつなら大丈夫だと思うけど・・・」


「え?」


「棗・・・・」


「な・・・何?」


「最悪ボク殺して逃げろ、そうすりゃまだ勝ち目はある」


「え!?そんなの無理!!」


「まぁ待て、それは最悪の決断だ、ボクも生き残る努力はする・・・」


「・・・・うん」


「よし、行くぞ・・・・」


トラシーウィザードが氷で作った槍を放つとトリックスターはそれをよけることなく

腹部に刺さった

トリックスターが軽く口から血を吐くと、トラシーウィザードが青い顔でトリックスターを見つめる


「ウソだろ・・・?なんで・・・またボクは・・・・」


「・・・どうしたんだい?トラシー君」


「え?」


トリックスターが腹部から槍を抜き地面に捨てる

先ほどまで槍の刺さっていたその腹部には傷跡1つ残っていなかった

トラシーウィザードが一つの可能性を気づき息をのむ


「・・・・やばい・・・こいつは殺せない・・・」