P-F 06

「あ、みーつけた」

凪斗がそういうと病院の中庭の茂みから灰色の子猫が出てくる

「ニーコ!今日はご飯がお魚だったんだよ、はいどうぞ」

凪斗がその猫をニーコと呼び食事として出された魚をほぐしたものを与える
みゃうみゃうと声を出しながら魚を食べる様子を凪斗は笑顔で見守った

「ボクさー、殺されちゃうかもしれないんだって、友達が助けてくれるって言ってたけど、別種族なんだよ、それで本当に助けてくれるかな?」

「みゃー?」

「そうだよね、分からないよね、だったら最後まであがいてみるのもいいよね、さっすがニーコ!天才!!」

そういいながら背中をなでるとニーコはごろごろとのどを鳴らし凪斗の手に擦り寄るように体を擦り付ける

「はぁ~~~~かわいいなぁ、ふわふわのもふもふで、ここじゃ雨も風もしのげないから出来れば病室で飼いたいけどそれは無理だしなぁ・・・」

凪斗がニーコから手を離すと

「そろそろ友達が来る時間だから行くね、バイバイ」

とニーコに告げ去っていった

「へー!そんなかわいい猫がいるんだ」

「うん、あんな場所にいたら寒さで死んじゃうかもしれないから誰かに保護して欲しいんだけど・・・」

「そうだね・・・ボクの友達にも当たってみるけど一人はペット禁止のところに住んでるしもう一人は動物飼うのリスク高いって言ってたし・・・」

「あ、うん、もしいたらでいいから」

「うん」

霧斗と凪斗が他愛もない会話を交わし、時よりタブレットでゲームをしながら時を過ごした

「あ、今日バイトだからそろそろ帰らなきゃ」

「じゃあ送っていくよ、外に出なければ平気だし、ついでだからニーコも見に行きたい」

「あ、ボクも見に行ってもいい?」

「もちろん」

2人が中庭に出るといつもの場所にニーコがいた
凪斗が駆け寄るとニーコも凪斗に近づく

「ほら、この子だよ!」

「へー、かわいいね、父さんの猫アレルギーがなければ飼いたいんだけど・・・」

「ちょっとあなた達何見てるの!!!」

怒鳴り声を上げて看護師が近づく

「野良猫じゃない!どんな病気持っているか分からないしアレルギーの患者さんだっているのよ!」

「ごめんなさいでも」

「あの!これからボク動物病院に連れて行くので見逃して」

「そういう問題じゃないのよ!」

看護師がニーコを抱える凪斗の腕をたたくとその衝撃でニーコは地面に落ちる
パニックを起こしたニーコは一目散に門から車道方面へ走る

「ニーコだめ!!」

それを追いかけ走る凪斗、一歩門の外へ出た瞬間首から走る衝撃
凪斗はその場に倒れる

「凪斗!!」

薄れ行く意識の中で見た光景は、地面に広がる赤い模様だった

「・・・君も可哀想にね・・・こんなに未練を残して死んでしまうなんて・・・仕方がない、特別に体を用意してあげる、それからあの子と対等に接するための体と権利も、その代わりあの子を誕生日まで生かしておいてね・・・」

ニーコの亡骸に、少年が話しかけていた


凪斗が目を覚ますと、そこに広がるのは見慣れた白い天井だった
その横に霧斗が座っている

「・・・ボク」

「その首輪で失神してたよ、ニーコちゃんは・・・ごめん・・・」

「・・・そっか・・・」

霧斗が凪斗の手を握りいう

「友達が君の脱出計画に参加してくれるって・・・近いうちに決行するから動画とってもいいかな?」

「うん・・・ありがとう・・・」

霧斗がバイト先で動画を柳に見せる
首輪を重点的に、念のために病室全てを撮影したものだ

「どうですか?柳先輩」

「はっ、セキュリティがばがばすぎ、こんなんすぐ解除プログラムかけるって」

「・・・!じゃあ」

「あぁ、妨害電波で発信機を妨害しながらハッキング可能そうだ」

「ごめんな・・・うち出来る事なくて」

「白夜先輩車乗れるじゃないですか、送迎してよ」

「あ・・・あぁ・・・喜んで!」

「じゃ、近日決行だって凪斗くんに」

「いや、奇襲しよう、敵を動揺させるならまず味方にも想定外の動きをしなきゃ」

「じゃあ結構日いつにするの?」

「転送するためのゲートを作るのは大変なんだよ、体調のこととかもあるし何より明日と明後日検査入院があるから・・・」

「あー、そっか、紫苑くん毎月そんな日あったね、3日後は無理なの?」

「検査結果次第では入院伸びるからな・・・とりあえず戻ってきたらすぐ決めるよ」

「了解・・・っていうか、私じゃゲートは空けられないの?」

「って言うか、いまさらなんだけどそもそも王族じゃなきゃゲート空けられないんじゃないの?」

「あ、いや、正攻法で行かなきゃ開ける方法もあるけどそれもほとんど都市伝説だし・・・」

「じゃあボクは王様ってことで」

「王様ならアルバイトなんてしないんじゃ・・・」

「ま、細かいことは気にしない、重要なのはボクはゲートを開けられるってこと」

「そっか・・・そうだね・・・」

「・・・父さんごめん、後処理すさまじいことになるかもしれない・・・」