P-F 17

「・・・痛い・・・」


香澄が左羽の付け根だった部分を押さえながら言う
そこは傷口が露出しており、周りから「違う色」といわれた羽は現在彼女のそばに置かれているため作り物の羽であったことは一目瞭然だ

「ボクじゃ役割を果たせない・・・凪斗・・・帰ってきて・・・」


そういうと傷口に薬を塗り痛み止めを飲む
新子の前に顔をだすと笑顔を作り話しかける


「おはよう、新子」


「おはよう!香澄姉ちゃん!!」


「朝ごはん食べたらすぐ学校まで送っていくからね」


「うん!!」


新子が姿を消すと香澄はすぐに冷たい表情を浮かべる


「・・・はぁ・・・天使王も気まぐれだなぁ・・・あの子を生かして正体明かせば凪斗は言うこと聞いてくれるって本気かな?、でもまぁ、役割さえ果たしてくれればボクもこの痛みとおさらばだし、ボクが役割を果たすことになっても天使族のためになる、どっちに転んでも正解だしね」


香澄が微笑んでいう
朝食を終え新子を学校へ送ると自分も学校へ急ぐ
曲がり角でのハプニングというものは必ずしもうれしい物というわけではなく、その日香澄は誰かと曲がり角で盛大にぶつかり転倒してしまう
不運なことに羽が外れ、衝撃が大きかった影響で、蝋で出来た作り物の羽は砕けてしまった


「え!?嘘でしょ・・・もう何するのよ!!」


「・・・それ、色が違うと思ったら偽物の羽だったんだ」


「え?あんた・・・」


顔を上げると凪佐の顔があった


「このこと人に話したら殺すからね!!」


「話さないよ、それより大丈夫?付け根、ずいぶん痛そうだけど・・・」


「大丈夫!!そんなことよりどうしてくれるのよ今日の学校・・・」


「えーっと・・・羽を怪我したから安静にするよう医者に言われてるから身分証で隠して固定してるって言い訳は?」


「もういいよそれで!!」


香澄が怒りながら言う


「ねぇ、ごめんね、こんなこと話せるわけ無いよね・・・デリカシーが無かったよ」


「はぁ・・・もういいよ、慣れてるし」


香澄が学校へと向かう
凪佐がスマホを取り出し紫苑に電話をかける


『もしもし?どうしたの?』


「いや、松原香澄に接触したからどう出ようかと思って・・・」


『あー・・・うん・・・そうだね・・・ボクみたいにそれとなく天使のみの世界の事を聞いてそれからからかな?』


「了解、あ、あと報告なんだけど、あの子、翼の片方が無くてその付け根がすごく痛そうなんだ」


『もしかしたら毒の影響かも・・・分かった、こっちでも調べてみる』


紫苑がそういい残すと通話が切れる


「あ、ねぇ、香澄さん」


「何?あんたと歩きたくないんだけど」


「もしも天使だけが幸せで、ほかは天使に服従する世界が出来るならどうする?」


「え?何その質問・・・、そりゃあボクは命がけでその計画に参加するよ」


「え?」


「だってそうじゃん、ボク達が世界を支配するなんて、最高以外の何でもないよ、ほかの種族なんて知ったこっちゃ無い、ボクはボク達が幸せであればそれで良い」


「あー・・・そっか、じゃあ」


「ねぇ、何でそんなこと聞くの?もしかして・・・あんたは知ってるの?「絶対天使プロジェクト」を・・・」


「何そのダサい名前の計画・・・、違う違う、単にほか種族との交流が増えて彼らを見下すのもなんか違うんじゃないかって思うようになっただけだよ」


「ふーん・・・そう、それならいいけど」


香澄がそういい残し立ち去る
凪佐が大急ぎでスマホで紫苑に再度電話をかける


『ねぇ、今度は何?もうこっちは学校始まるんだけど』


「ごめんー!!!ばれたかもしんない!!」


『あぁ、計画を知ってるって事がね、って言うか本当にもう電話切らないとやばいから、良い?』


「って言うか香澄めっちゃ怖かった!!!あーーーー!!!!」


『分かった分かった、ちょっと待ってて』


少し篭った声でだるそうな「体調悪いので保健室に行きます」という声が聞こえしばらくすると電話が聞こえてくる


『はい、移動完了、いくらでも話していいよ』


「あ、ごめん、松原香澄に接触したけどあの子「絶対天使プロジェクト」の事知った上で計画成功目指してると思う・・・どうしよう・・・」


『なるほどね、それで警戒されて威圧されたのが怖くてパニックね』


「情けないことにその通りです・・・なんかごめんね、授業欠席させて」


『いいよ、世界史は得意だし、学校も社会勉強で行ってるような物だからね、それよりも香澄がこちら側に回ってこないことが分かったことのほうが収穫としては大きいよ』


「うんありが・・・あ!!!」


『今度は何?』


「やばい、俺もめっちゃ遅刻した・・・」


『あー・・・ドンマイ』


電話が切られた