P-F 15

その日凪斗はミカの手助けをしながらケーキを焼いていた
百合子の購入したテキストで勉強はしていたものの、気分転換が必要だ!というミカの発言で百合子がレシピを渡しやることになったのだ

「ミカちゃん、砂糖入れすぎ、小麦粉少なすぎ、これじゃあケーキじゃないよ・・・」

「えー・・・計るの面倒くさいし良いじゃん」

「でも最終的に食べるのボクらだよ・・・材料計るからハンドミキサーで・・・あ、やっぱいいや、じゃあフルーツ・・・もいいや、テレビ見てて」

「え?でも」

「いや、いいから、デコレーションになったら呼ぶから」

「分かった・・・」

凪斗がミカを追いやると手際よくケーキのスポンジの生地を作る
それをオーブンに入れると荒いものを済ませミカの隣でテレビを見始める

「もういいの?」

「うん、焼けるまで暇だから」

「ねぇ、凪斗がここに来てもう2ヶ月くらい経つじゃん、でも俺お前のこと何にも知らないしお前も俺のこと何も知らない!」

「うん・・・そうだね」

「だからさ、お互いのこともっと知るためにババ抜きしようよ、カードを出すたびにお互いの知らない事言うの!!」

「良いけど・・・信じられるかな?」

「じゃあ最初に嘘偽りなしって約束しよう、ね?」

「・・・うん」



凪斗とミカがゆびきりをするとトランプを配り始める
始めは誕生日や血液型、好きな食べ物や趣味などを話していたが、終盤になると話すことが無くなり困り始める
するとミカが

「・・・ボクは、親からの虐待から逃げだしたけど後先考えなかったから百合子さんに保護された」

という爆弾発言をする

「え?」

「だってもうこれ以外話すこと無いんだもん!!ほら、凪斗の番」

「あ・・・うん」

運悪くカードが揃ってしまった凪斗は深呼吸をして言う

「・・・実は生まれたときから政府管理の学校に監禁されててそのあと病院で監禁されてそこから逃げてきた」

「わぉ!なんかすごい話だね!!」

「え?信じるのこの話?」

「信じるよ!でもその話続きがあるよね?そうだなー・・・君はきっと、監禁されてた理由を知ってるね?」

「・・・その通り、でもそこから先はカードを引いてから」

「はいはい・・・」

ミカがカードを引く外れたようでカードをシャッフルすると凪斗に向ける
凪斗がカードを引くと運の悪いことにカードがそろってしまう

「うわっ・・・はぁ・・・実はボク・・・創造世界って言う世界の命を管理する世界から来た天使族なんだ・・・」

「知りたいのはそっちじゃなかったけど・・・まぁいいか、次は」

ピーッピーッ・・・
響くオーブンの音、凪斗が助かったといわんばかりに立ち上がる

「ケーキ焼けたから覚ましてくる、すぐしないとしぼんじゃうし」

「ちぇー・・・分かったよ」

凪斗がケーキを取りに行くとミカが微笑む

「良かったよ、君がここに来てくれて」

「何か言った?」

「ううん!」

凪斗がクリームをあわ立てるとフルーツをカットする
程よくスポンジがさめるとそれを半分に切りミカを呼ぶ

「じゃあデコレーションしよう」

「うん!!」

ミカの大雑把なデコレーションをハラハラしながら見守ると何とか形を成したケーキが完成した

「よし、じゃあ切ろうか」

バンッ!!!
凪斗がケーキを切ろうとした瞬間庭の窓から聞こえる大きな音
灰色の髪の少女が窓をたたく

「凪斗ー!!!」

「え?誰??」

「入れてもいいのかな?」

「良いわよ」

「百合子さんが言うなら・・・」

凪斗が窓を開けると少女が飛びつく

「わぁっ!!」

「会いたかった!!凪斗!!!・・・あれ?羽は?」

「あ・・・君は誰?羽はあとで見せてあげるけど・・・」

「おれっちだよ!新子!!」

「新子・・・?いや、そんな知り合いいないけど・・・」

「何でー!?」

「えっと、新子ちゃんだっけ?ケーキ食べる?」

「食べる!!」

新子が切り分けられたケーキを口の周りをべたべたにしながら食べる
凪斗も自分の分のケーキを食べながら記憶をフル回転させる

「誰だ誰だ誰だ?本当に誰だ?こんな知り合いいないよ・・・そもそも同級生の友人しかいないのにこんな小さい子マジで」

「おいしー!!ケーキ食べられるしこの体最高ー!!」

「ねぇ凪斗、本当にこの子知らないの?」


「知らない・・・」


「新子って心当たりは?」


「ニーコならあるんだけどそもそもあの子は猫だし人間は・・・」


ピンポーン
呼び鈴が鳴る


「はーい」


百合子が玄関に出る
そこには香澄の姿があった


「あのー・・・これぐらいの灰色の髪の女の子来てませんか?」


「あ、香澄ねーちゃん!!」


「お騒がせしました、それでは」


「ケーキありがと、凪斗また会おうね」


そういい残すと2人は施設を後にした


「・・・あの子凪斗に似てたけど」


「まったく存じ上げません!!!」