聞きなれた声がした
「凪斗、来るだけ来なよ」
「そうですよ先輩」
「ちなみに、断ったらどうなるか分かってるのね?」
双子の弟と後輩の桜が立っていた
3対1!?
あぁ、これもう無理だよ
「・・・帰ればいいんだね・・・・」
「うん」
ボクは、天界に一度戻って全てに決着をつける覚悟を決めた
「の前に、お前これ着ろよ」
凪佐が何か投げつけてきた
前に着ていた服だった
「分かってんだろ?大天使様が猫アレルギーだって、猫大嫌いだって」
仕方が泣く前の服に袖を通す
ついでに桜にメイクでクマを隠され、髪型も整えられた
鏡を見るとどう見ても天界にいた「松葉凪斗」だった
天界に着くと真っ先に大天使様に顔を合わせられた
一応礼儀としてお辞儀はしておく
「松葉凪斗、お前の罪を全て許す代わり」
「許さなくて結構です、処刑にするか、永久追放なら大歓迎です」
大天使様が言い終わる前にボクは言い放つ
大天使様は困ったように言う
「しかし、お前を失うのも惜しいのだよ」
「勝手なこと言わないでください、ボクは」
「反論など、私は求めていない」
ボクは引き下がる
どうしよう・・・この人何を言っても無駄だ
反論するのも面倒になりとりあえず脱ぐ
傷さえ見てくれれば多少たりともあきらめてくれると思って
「へぇ・・・ずいぶんボロボロだね・・・・自分でやったんだ、ルール、分かってるよねぇ!?」
そういうと大天使様はボクに向けて矢を放った
間一髪でそれを受け流す
「あっ・・・・ぶない」
「ルールを破るクズなんていらないんだよね~・・・・ボクが処分してあげるよ」
さっきまでの態度じゃない
明らかに目が殺意に満ちている
脱いだ服を着るとクロスを噛み銃を出す
これは「決闘」だ
「へぇ・・・遠距離武器は互い様かぁ・・・じゃあこっちはこれで行くよ」
大天使様が剣を握ってこっちへ向かってくる
初めのうちは上手く受け流したり弾を当てて回避できたけどもう無理
消耗し続けた体力と睡眠不足が体を襲う
あっという間にボクは大の字で床に付した
ボクの喉に剣が引っかかる
もう終わりなんだな・・・・
「いいよ、最後に言いたい事があるなら言っても」
「・・・たい・・・」
「え?なんだって聞えないよ」
弱音を見せない
今まで隠してきた本当に言いたいこと
「こんな世界のことなんて全部忘れて人間として生きたい!!!」
あぁ、なんかもうどうでもいいや
ピッ・・・・ピッ・・・・
無視質な音が聞える
ここはどこだろう?
ぼんやりとした視界が徐々に鮮明になっていく
真っ白な天井が見えた
「あっ!!目が覚めた!?」
「ミ・・・カちゃん・・・?っ!!」
「まだ動いちゃダメだよ!ナギ!!」
体が痛くて動けない
何でこんな大怪我してるんだろう?
記憶も曖昧で思い出せない
大天使様に何か叫んだのを最後に記憶が途切れてる・・・?
「あぁ、そうだ」
ミカちゃんが何かを差し出してくる
金色に光る、ボクのクロスだ
「これ、君と一緒に落ちてきたんだ」
「落ちて・・・?」
この期に及んでまだボクが戻ってくると思ってるのかあいつは・・・・
でも、このクロスがあればとりあえず怪我はすぐに治る
「ミカちゃん、それボクの首に掛けてくれない?」
「え・・・いいけど・・・・」
ミカちゃんが優しくボクの首にクロスをかけた
一度深呼吸をするとクロスの力に身をゆだねた
傷はあっという間に治り動けるようになった
一応ボクは病院にいたらしい
聞くと血まみれの状態でカウンセリングルームの前に落ちてきたんだとか
どういうことなんだろう?
とにかく、病院の先生に診てもらったら「何で治ったのか分からない」といわれた
まぁ・・・・そうですよね
病室でぼんやり夜景を眺めていると目の前に黒い影が振ってきた
それは天子だった
「よぉ、凪斗」
「やぁ、天子」
「お前よく生きてたな・・・・大天使様に拷問を受けた挙句反省するまで下界で生きろってさ」
「反省するまでね・・・・」
ボクはクロスを見つめた
そしてひとつの決意をする
「ねぇ、何で大天使様はボクにクロスを預けたのかなぁ?これ没収したら怪我の回復遅いのに・・・」
「生まれた時に与えられる天使の象徴は、たとえ大天使様でも奪えないのさ」
「そうか・・・・」
「じゃあな、また会いに来る」
「もう来なくていいよ、天子」
そういいボクは窓を閉じた
久しぶりに、じっくり眠れた気がした
カウンセリングルームに戻ってぼんやり外を眺めながらボクはミカちゃんに聞く
「うん・・・ねぇ、ミカちゃん」
「え?何?」
「この近くに海はある?」
「海?うん、この道をひたすらまっすぐ行けばあるよ」
「・・・ありがとう、ちょっと行って来る」
そう告げダッシュで道を走った
かなりの距離があったけど、走りきって海にたどり着いた
息を整えると美しい景色にびっくりした
真っ赤に燃える夕日って。こういうのを言うのかなぁ?
ボクはもう一度クロスを見つめ軽くクロスを服
まばゆい金色は、夕日の赤色でかき消されている
ボクは少し助走をつけてからクロスを海へ投げた
一瞬だけ光ると、海のそこへとその光は消えていった
あいつ等のことだから、これを探したあとに、ボクを探して無理やりでも戻そうとするかもしれない
でも、今はそんな事を考える気はない
少しでも精神状態の改善をするために、カウンセリングルームに甘えよう
回復できたら、ちゃんと働いてお礼をするんだ
それがボクの今後の目標であり、やるべきことだと思いたい
これがボク、松葉凪斗